過去は語る
「貴方達にかけられていた呪いは、成長を妨げる呪いよ。」
「そうですか。」
薄々、そんなような気はしていた。
周りの仲間たちが成長していく中、自分たちだけが成長しなかったこと。
周りの仲間たちがやけに大きく見えたこと。
全ては、母親。
僕は、知っている。
あの日の記憶を。
忘れもしない、あの冬のことを。
***
生まれて2年。
聖都の先端に位置する貧民街で僕たちは生まれた。
母親の顔は覚えていない。
父親は知らない。
けれど、母の顔がひどく美しかったことは覚えている。
そのせいか、僕たちも容姿は美しく生まれた。
この先成長すれば、誰もが見惚れる容姿になると母親は自慢気にそう話していた。
幼かった僕にその言葉を理解することは不可能に近く、その頃はただ母親が喜んでくれていたことが嬉しかった。
変わったのは、5歳ほどになった頃だった。
母親は、異常だった。
己が一番美しいと思い込んでいた。
これまで自分が欲しいと思ったものは、男であればなんでも手に入った。
しかし、僕たちが生まれたことで自分よりも美しい存在が生まれてしまった。
僕たちが5歳になる頃はもはや美人というよりは神が作りだした美貌の持ち主だったらしい。
母親は、僕たちを憎んだ。
訳がわからなかった。
最初は誇らしげにしていた僕たちを、忌み嫌う存在として扱うようになった。
母親の命令で、人をたくさん殺した。
実行しなければ、お前たちを殺すと、そう言われたから。
人を初めて殺めた記憶は今でも鮮明に思い出せる。
温かい血液と、硬くなっていく体。
決してもう動きはしないこちらを見る空虚な瞳が恐ろしかった。
歪んだ顔と、赤く染まった人の体を。
地獄とは、このことだと知った。
それから、ドブネズミのような生活を何度繰り返しただろうか。
母親も、この手で殺した。
雪の降る、冬のことだった。
真っ赤に染まる新雪を、眺めていた。
だって、妹が殺されそうになったから。
同じ女として、妹は僕よりひどく当たられていた。
呪いがかけられていると知った時は、母親を殺して間も無くのことだった。
変な心地がすると思いだしてから、僕たちは成長が止まった。
5歳ほどの見た目で外見の成長は止まった。
母親はよく言っていた。
『お前たちが大きくなったら、きっと美しくなるんだろうね。』
これ以上僕たちが美しくならないように、母親は命に変えても僕たちを美しくしたくなかったらしい。
人間とは言えない生活に少し灯りが見えたのは、それから10年ちょっと経った頃だった。
それが、目の前の方が訪れた時。
端っこでうずくまっていたら、声をかけられた。
もらったのは、四つのパンだった。
聞けば、旅をしているのだと。
それが終わったら、迎えに来てもいいかと。
嬉しかった。
初めて、優しさというものに触れた。
それから、しばらく経って。
僕は、人を二十人ほど殺した。




