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カナリアさんの秘密のお部屋  作者: クロ
第四章 開拓
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解呪 2

ふっと、先程まで何もなかったかのように光が収まる。

一つ違ったことは、子どもの姿がなかったことだ。

代わりにその場にいたのは、美しい女性だった。

日の光を浴びたことのなような白い肌はいっそ病弱に見えるものの、鮮やかに彩られた唇がそれを否定していた。

ほっそりとした手足に、美しい顔立ち。

先程の少女にはなかった妖艶な雰囲気には目を奪われてしまう。


「………」


少女…いや、女性は自らの身体を眺める。

私が着せた黒色のドレスは最初こそ大きかったものの、今ではちょうどいいくらいだ。

右目の下にある黒子は彼女の美しさをより強調させ、一種のアクセサリーのようでもあった。

数秒見つめ合う。


 女性が、薄紅色の唇を開いた。


「……ぁ…」


漏らされた声と共に、瞳からポロリと涙が溢れている。

ドレスを握りしめる手に、雫が落ちた。

彼女はそれに気づくと目を拭うが、涙は一向に止まらない。

とめどなく溢れ出る涙はこれまでの分と言っても過言ではないと思う。

泣き続ける彼女に私はそっと腕を回す。


「大丈夫。大丈夫よ。」


小さな子に言い聞かせるように、優しく話す。

さほど変わらない身長の彼女の頭をゆっくりと撫でる。


「ようこそ。この世界へ。」


 この子達の行先が、明るい出来事で溢れていますように。


 ***


「お腹が空いているでしょう?ご飯を食べに行きましょう。」


成長した二人を連れて、朝食の場へと向かう。

ロベルトは、厨房と執事、メイドの人たちに説明をしに行っている。

だから、長い廊下を歩いているのは私達三人。

朝の寒さを和らげる陽の光を浴びながら、私達は歩く。

ああ、ご飯のいい香りがする。


「ロベルト。」


部屋に入ると、厨房長に指示を出しているロベルトを見つけた。

席は四つ用意されていた。

そのうちの二つに二人に座ってもらう。

私たちも席に座ると、給仕の人がご飯置いてくれた。

温かいスープと、バターのいい香りのするパンだ。

そこからあまり重くないものが運ばれてくる。

あの子たちも完食できるであろう丁度良い量だ。

さすが、ロベルトの指示もあってかこの子達を知った上で料理を出してくれている。

二人は何も喋らない。

私たちも何も喋らない。


誰も何も喋らないけれど、それが居心地が悪いとは思わない。

静かな食卓に鳴る食器の音は穏やかな時間の証拠だ。


二人のペースに合わせていつもよりゆっくり食べる。

そうすれば、私たちが先に食べ終わって二人が焦ることもない。

ロベルトもそう思ったのか、いつもよりもゆっくりと食べている。


食後の紅茶は温かく、体の芯から温められるようだ。

そっとカップを置いて二人を見据える。

真っ直ぐと見つめ返す黒曜石は美しかった。

給仕の人たちは既に姿を消している。

魔力の動きからして、この場所には私たち以外誰もいない。

ロベルトが防音魔法を展開する。

 さあ、お話の時間の始まり。


 ***


すっと、お姉さんの目が細まる。

少し前に、何かに包まれた気がしたのは気のせいだろう。

太陽が雲に隠れたのだろうか。

今までこの部屋を照らしていた光が途絶え、薄暗くなる。


「…今から、あなたたちの未来の話をしましょう。」


お姉さんは少し言葉を選ぶように少し間を空けてそう言った。

その言葉に返すように小さく頷く。

これから、きっと、僕たちの未来の話をこの方はする。

それも、運命を決めるような。


「率直にいうと、貴方達には二つの選択肢があるわ。

 一つ、私の従者となり、私の隣で生きていくこと。二つ、自分たちで道を切り拓いてくこと。」


この方が話している内容はわかった。

ただ、そうなった自分たちの姿が想像できない。

それを見越してか、彼女は続けた。


「大雑把でわかりにくいわよね。少し、具体的に話しましょう。

まず、私の従者になるにはそれなりの知識、技能、体術が必要不可欠だわ。もちろん、全て自分たちでやれなんて無茶は言わないわ。あなたたちが自分がやりたいと思うことを私は尊重しようと思っているから、それは忘れないで欲しいの。そして、もう一つの選択肢。これは、ある程度生きていける技術を身につけたら、独り立ちできるということ。私の従者という肩書きに縛り付けられることなく、自由に生きていくことができるわ。

どうするかは、貴方達自身が決めて欲しいの。二人で違う選択をしたって構わないわ。

ただ、さっきも言ったけれど、私は、いいえ、私たちは、貴方達二人ともの意見を、意思を尊重するわ。

これだけは、忘れないで欲しいの。」


僕たちに選択肢があって、お二方がそれを尊重してくださることもわかった。

そして、ひとつ、聞いておきたいことがある。


「一つ、よろしいでしょうか。」


「なあに?」


優しい声に後押しされるよう、僕はその言葉を口にする。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


部屋が、沈黙に包まれる。

目の前の銀髪の方は、悲しそうにしていた。

きゅっと結ばれた薄く色づいた唇が、ゆっくりと開かれる。


「貴方達にかけられていた呪いはー


事実は、なんと残酷なのだろうか。



メリークリスマス!

イエスさん、誕生日おめでとうございます!

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