白馬に乗ったお姫様 1
新章開幕!
無事に事件は解決し、そろそろ夏の空気になって来る頃。
日は長くなって、木は葉を生い茂らせている。
濃い緑が風景になじみ出すのもそろそろだろうか。
そして、私も周りを固めなければ。
「ロベルト。そろそろ従者を決めてくるね。」
朝。
小鳥たちが目を覚さない時間帯に、私はロベルトにそう声をかけた。
彼は眠っている。
私は随分と前に準備を済ませ、ロベルトの部屋へと忍び込んでいた。
流石に一緒に行くのはあの子達が怯えてしまうので、今回は私一人で行く。
夏に入ろうとしていても冷える朝方。
静かなうちに連れ出してあげたい。
ロベルトに書き置きを残して私は窓から飛び降りた。
ロベルトの暴走を止めた時みたいに、白い馬みたいなのに乗っていく。
空高く上り、空を駆ける馬は流星群にひどく似ていた。
***
北領から少し離れたところ。
東西南北に分かれる領地の真ん中に位置する聖都。
ここは東西南北の研究場のような使用目的で開拓された場所だが、研究は非常に安全に行われているため、とても発展している。
だがしかし、その発展が行き届かなかった村は、貧民街と呼ばれ、小さな子供や貧しい人々の暮らしの場になっている。
「…起きて。」
道端でボロボロの布に包まって眠る少年少女に声をかける。
小さく上下する肩が、ぴくりと動いて黒曜石の瞳が私を映した。
それは二人とも共通していて、まるで小さな宝石箱のよう。
微睡の中で目を擦っていた彼らは私を見ると目を瞬かせた。
次の瞬間には、大きな瞳が見開かれる。
「ぉねぇ、ちゃん。」
ポツリとつぶやかれた言葉に私は頬が緩んだ。
「遅くなってごめんなさい。迎えにきたわ。」
小さな手を握る。
少しでも力を入れたら潰れてしまいそうなか弱い手で、彼らは命を繋ぎ、こうして私にもう一度顔を合わせてくれた。
「お姉ちゃん!」
二人が突進してくる。
ぎゅっと腰に回された腕はひどく細くて、それでもこうやって息をしている。
二人の体をすっぽりと包んで抱きしめた。
「遅くなってしまって、ごめんなさい。一度、私のお家に帰りましょう。」
「「うんっ!」」
遠くの森から、朝日が顔を出した。
温かい日の光が貧民街を照らす。
同時に、薄暗くてはっきり見えなかった彼らの顔も鮮明に見えるようになる。
「!」
朝日に照らされた瞳はキラキラと煌めき、長い髪は漆黒。
どちらも右目の下に黒子があって、すっきりとした顔立ちをしている。
それと同時に。
「これは、呪い…?」
彼らの体の周りにはドス黒い空気が漂っていた。




