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カナリアさんの秘密のお部屋  作者: クロ
閑話 その後の罪人
44/65

後始末 1

こちらは本編と関係ありません。

ここから続く少しの物語はグロスティックな感じですので、苦手な方はとばしてお読みください!

いつも読んでくださってありがとうございます!

どうして、どうしてこんなことに!

私はただ、幸せに生きていただけなのに!

なぜこんなところに!?


ボロボロの淡いピンクの髪に、所々破れた服を纏った少女は思った。


どこから間違えていたのだろう?

お父様もお母様もお兄様達もいて、みんな優しくて。

私には、あそこだけが優しい世界だったのに。


西の修道院。

彼女達はそこに送られた。


少女は虚ろな目でこれまでのことを思い返す。

蘇ってきたのは、絶望的な過去だった。


***


「早く歩け。」


そう騎士に促され、反抗する態度も起きない。

なんでこんなことに。

頭でずっと繰り返される疑問の答えは見つからない。

何も間違ってなんていなかった。

ただ幸せに暮らしていた。


いや、待て。

お兄様はなんと言っていた?


『ジェシカが生まれてから、僕は愛されなくなった。』


少女の…ジェシカの視界が真っ暗になる。


うそ……


それは深い深い闇の溝にずぶずぶと沈んでいくようで。

これが『絶望』だと、ジェシカは思い知る。

彼女は『幸せ』しか知らない。


私が生まれたから、お兄様達は愛されなくなったの?

どうしよう。私の所為で。


「お兄様、ごめんなさいっ…」


両手で顔を覆い、ジェシカは涙を溢す。

どうしよう、私のせいでお兄様があんな事を…


彼女はただただ嘆き悲しむのだった。



***



異常だ。

西の修道院に向かいながら騎士はそう感じた。


兄が殺人未遂を行った原因が自分だと気づいたご令嬢……ジェシカと言ったか。

そのジェシカは自分のせいでこんなことになったと泣いている。

俺にはそれが気持ち悪くてしょうがなかった。


まるで物語の悲劇のヒロイン。

だが彼女はヒロインではなく、罪人。


彼女が領民から巻き上げた金で贅沢をしていたのは調査で明らかになっている。

しかも、いい歳をしておいて両親がしていることに興味も示さず、自由に生きていたそうだ。

それは幸せなのかもしれないが、人間としては最悪である。

この少女は苦痛を知らない。

きっと、兄達がどんな思い出あの会場で裁かれたのか、どんな気持ちで実の妹ではなくとも愛している少女を殺そうとしたのか、想像もできていない。

今この少女が泣いているのは、ただただ自分のせいでこうなったと悲しんでいるだけ。

つまり、自分はなんの罪も犯していないと言っているようなことだ。

その事をこの少女に伝えても彼女はさらに悲しみ、なぜそんな事を言うの?とでも聞いてきそうなので黙っている。

まあ、彼女自身何か罪を犯したわけではないと言われればそうなのだが、領民に必要以上に税を納めさせていた一家をまたあの領地に返すわけにもいかない。

西の修道院にしたのは、陛下……皇家がこの事実に気づけなかったので、その点に対する謝罪と貴族達に向ける誠意のようなものであろう。

この帝国の皇族は平等である。

現皇帝カイン陛下の御息女である第一皇女も贅沢をせず、民にも友好的で付き合いやすいと評判である。

そのせいか、他の国々とは違って皇家は何かの責任をちゃんと背負って、謝罪はなくとも誠意を示している。

簡単に謝罪しては他国からも舐められてしまうので、流石にそれは民も理解しているのだが、誠意を示してくれない国もあるので、アーレンス帝国はいい国だとされている。

この帝国を守る騎士からしたらとても嬉しい事である。

第一皇女様など、最近騎士達の訓練を見にきた時にドアの立て付けが悪く壊れてしまった時に、完璧にこちらの非なのに、翌日になって軽食を持って訓練場に訪れ、こう言ってくださった。

『謝れるなら謝りたいわ!でも、立場上難しいから、せめてもの気持ちよ。』

そう申し訳なく言われて、騎士達はどんなに感動したか。

ちなみに、この一件があってから第一皇女様の好感度は騎士団の中でも爆上がり中である。


「ごめんなさいっ…」


ジェシカの呟きで思考が現実に戻される。

ああ、本当に。

こう言う愚か者を見ていると、自分たちはこんなもの達のために剣を振るっているのかと時々虚しくなることがある。

けれど、それこそ皇女様のようにこちらの意を汲んで話してくださる人のために剣を振るっていると思うと、とても誇らしく思えるのだ。

まあ、つまり、剣を振るうための人物はしっかり見極めろと言うことなのだが。


この嘆き悲しむ少女は、いつ自分がおかしな勘違いをしていることに気づくのだろうか。

一生気づかないのかもしれない。


全く、本当に馬鹿なことをしたものだ。


背後から聞こえる少女の鼻を啜る音を聞き流しながら、騎士は馬を撫でるのだった。


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