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カナリアさんの秘密のお部屋  作者: クロ
第三章 過去と贖罪
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断罪の時 1

こつ、こつ、とヒールが音を立てる。

普段なら目立たないそれも、今となっては注目の的となっていた。

その理由は、「氷の公爵」が令嬢をエスコートして微笑んでいるからだろうか。

それとも、その女性が"美しい"からだろうか。


「陛下、ご機嫌麗しゅう存じますわ。」


全てを包み込むような優しい声が会場に響いた。

ふわりと、鳥が大きな翼を広げるように青いドレスが広がる。

それに合わせて、ベールがふわ、と舞った。

顔も、髪色も、何もわからない。

それなのに、会場の人間たちの本能が言っている。

あの女性は美しいと。

佇まい、声、仕草。

洗練されたそれは目を見張るほどで、見ているだけで目が癒される。


「ああ。今宵は楽しもう。」


「はい。」



返事をした皇帝に、女性はベールの下で微笑んだ。



***


ガラガラと馬車が揺れる。

満月が空に浮かび、まさに作戦決行日には打って付けの空模様だ。


アイラさんたちに全身を磨かれ、汚れ一つないであろう私は、皇帝陛下の住む宮の近くの会場に向かっていた。

私の髪色と瞳を隠すため、頭から深くベールをかぶり、髪は一つにまとめてある。

ベールは、真っ白の、透けない白だ。

というわけで、私は前が見えない。

なので、馬車の中でもロベルトの手を握っている。

舞踏会の会場でもずっとロベルトの腕を掴むことになるだろう。

嫌ではない。

寧ろ、安心するし、嬉しい。


「カナリア。ついたよ。」


「ありがと…」


ゆっくりと立ち上がり、壁をつたって前へ進む。


「失礼。」


軽く身体を持ち挙げられ、バランスを取るためロベルトの両肩に手を添える。

一瞬の浮遊感はすぐに消え、代わりに足元でこつりと音が鳴った。

どうやら、馬車から降ろしてくれたらしい。


人の気配はわかる。

なんとなく、魔力で。

建物や障害物はわからないから、ロベルトにエスコートしてもらうしかない。


『まっすぐ、前を向いて。歩き始めるよ。』


頭に直接響く声は、ロベルトの声だ。

念話のようなもので、魔力の波動を使った言葉。

多分、わかるのは私とロベルトぐらい。

私が魔力の扱いに長けているのを気づかれてはいけないから、手を添えているロベルトの腕を少し握った。

それを確認したロベルトがゆっくりと歩き出す。


「ブロード家、ご到着です。」


門番の声がして、ゆっくりと扉が開いた気がした。

ブワ、と風が舞う。

中からたくさんの人の気配がして、美味しそうな食事のいい香りがした。

そのままゆっくりと歩いた。

周りに人はたくさんいるけれど、声がしない。

なんだろう。


今回の舞踏会の形式は特別で、来場した順番に皇帝陛下に挨拶をすることになっている。

ロベルトのエスコートの元、陛下の前にたどり着くことができた。


「陛下、ご機嫌麗しゅう存じますわ。」

なるべく綺麗に礼をする。

ロベルトも隣で礼をとった気配がした。


「ああ。今宵は楽しもう。」


「はい。」


そうだ。

今日は、人が絶望し、救われる日。


***


舞踏会は順調に進んでいった。

皇帝陛下の挨拶も終わり、次はダンスだ。


美しき鳥よ、(カナリア)私と踊ってくださいませんか?」


ロベルトが膝をつき、ロベルトの執務室で見た光景と重なる。

周りはざわつき、こちらに視線が集まっているのがわかる。

けれど、そんなの些細なことだ。


「喜んで。」


だって、私は美しい鳥だから。

あなたの、あなただけの美しい鳥だから。



ヴァイオリン、ハープ、ピアノ。

たくさんの楽器が一つに重なり、優雅な曲が会場に広がる。

リズムに合わせて踊り始める彼らは、とても美しい。

「氷の公爵」と言われる彼も、今まで人間には見せなかった優しい顔をし、その瞳は愛しいものを映していた。

「謎の少女」は、驚くほど「氷の公爵」と息のあったダンスを見せ、会場のものを魅了した。


ふわりふわりと「氷の公爵(ロベルト)」の色である青いドレスが舞う。

謎の少女(カナリア)」と「氷の公爵(ロベルト)」が動くたび、そこは聖なる場所に変化していくようだった。

白いベールがこの際に限っては邪魔にみえる。

彼女(謎の少女)はどんな瞳で(氷の公爵)をみているのだろう?


お互いが、お互いを見合っているのは彼らだけだ。

ダンスが終盤に近づく。

音楽は今日一番の盛り上がりを見せ、それに合わせて会場の人々も今宵最高の踊りをする。


彼らは会場の真ん中でクルクルと回っている。

鳥の羽のような軽い足取りは人々の目を釘付けにした。

そして、彼女はとん、と飛んで、彼へ手を伸ばす。

ブワ、と青い刺繍の施されたドレスが舞う。

細い白い腕が伸びて、それが彼の首に巻き付く。

彼はそれを難なく受け止め、彼女を抱き上げる。


『愛してる。』


そう聞こえたのは、気のせいだろうか。


次はちょっとイチャイチャします。

カナリアの視点で書かれていますので、ぜひ。

ここから事態は大きく動きますので、次回はちょっとこれからの衝撃のメンタル回復剤として、作者のために書きました。

更新がんばります!

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