作戦準備 <1日目>
まず、現時点の状況を整理しよう。
私は、第二皇女。
でも、それはまだ民達に知らされていない。
お姉様にも会っていないし、貴族の中でも知っているのはお父様、皇帝陛下の側にいる忠臣だけだ。
協力してもらっていた友好国にはその国の王にだけ伝わっているそうだ。
これから、他国へのお披露目、貴族へのお披露目、民達へのお披露目があるらしい。
そして、もう一つ。
舞踏会で起こった毒殺事件。
それを解決する。
作戦はある。
あとは、その準備だけ。
今私がやるべきことは作戦準備とお披露目会の準備。
さあ、忙しくなる。
***
お父様に作戦の内容を伝えることになった。
皇帝であるお父様は忙しい身で、予定が空いているのは夜になるとのことだった。
なので一度、ロベルトの宮に帰って、アイラさん達に全身ほぐしてもらって、着替えて、十分な睡眠を取った。そのおかげか体は絶好調だ。
夜になるまでに作戦の埋め合わせと計画と、手続きを済ませた。
手続きに関しては、主催者をロベルトの家名で出そうということになりそうだ。
主催者として皇族が出ると私の正体がバレてしまうかもしれないということと、残り半分はロベルトの私情だそう。主催者に関してはロベルトに任せているので、まあ、私は従うだけだ。
ということで、舞踏会の主催者はブロード家。
そこから、招待客に招待状を書く作業が始まった。
名簿を書いて、その家にあった招待状を書き、騎士の配置、料理人、料理の種類。
色々と決めることはあったけれど、なんとか夜までに済ませることができた。
招待客に関しては、あの日、あの場所にいた人間と、私の好奇心を刺激した人たちを数名招待した。
そして、夜。
暗闇に浮かび、こちらを見下ろす月は何だか大きい。
馬車の窓を開ければ、春の夜風が頬に当たる。
私とロベルトの前に聳え立つのは、「帝国の心臓」とも呼ばれる皇帝陛下の住む宮。
私が、こんなところに来るなんて、あの頃は想像もできないことなのに。
現実で起こっていることは、私にとって現実味のないことだった。
陛下の側近と思われる貴族の男性に案内され、私たちは謁見の間へと案内された。
長い長い廊下は、緊張を強くさせる原因のようなものだ。
鼓動が早い。
大きな白い扉の前に来た。
騎士達によってその扉が開かれる。
真っ赤な絨毯は、なんだか怖い。
「ご機嫌麗しゅう、陛下。カナリア・リベ・アーレンス、ここに。」
「我が帝国の一等星にご挨拶申し上げます。ロベルト・ブロード、ここに。」
玉座に腰をおろし、こちらを見下ろす陛下に臣下の礼をとって挨拶をする。
純白のドレスが視界に映った。
「…顔をあげよ。場所を変えよう。案内する。」
陛下の許可が降りたので、顔を上げる。
そして、陛下は奥へ消えていった。
二人で顔を見合わせ、奥に行くべきなのか、それとも他の道を通ればいいのかと混乱した。
「陛下の元へご案内いたします。どうぞこちらへ。」
先ほどの案内してくれた男性が誘導してくれる。
それにホッとしながら、私たちは陛下の元へと向かった。
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<新章予告>
from.×××
…なんだか今日は、向こうが騒がしいみたいだ。
ー少年は、それが魔力の波動だと知らない。
なんだか今日は、この人の機嫌が悪いみたいだ。
ー少年は、殴られることを知っている。
なんだか今日は、疲れた。
ー少年は、少女を腕の中に抱いている。
ああ、僕が大人だったら。
ー少年は、無力だった。
ねえ、お姉ちゃん。
ー少年は、×××…
……………………………………………。
暗闇に浮かぶのものは、何もない。
少年は失ってしまった。
けれど少年は知らない。
世界の美しさを。
人の温かさを。
それを教えるのは、与えるのは、誰なのか。




