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カナリアさんの秘密のお部屋  作者: クロ
第一章 出会い
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手を差し伸べて初めて

「君は…」

むく、と上半身を起こした彼は片手で顔を覆ってこちらをチラ、と見た。

碧い碧い瞳に警戒の色が帯びている。

ああ、警戒されてしまっている。

当たり前だろう。

私だって倒れたら知らない部屋にいて、知らない誰かに看病されたら怖いし、警戒する。


今思えば、彼は上等な身なりをしている。

顔だって整っているし、髪にも艶があって枝毛の一本ですらない。来ている服には金の刺繍が入れられていて、白い袖は絹が使われているのか光沢がある。

外の世界のことは詳しく知らないけど、身分の差があることは本で読んだことがあるので知っている。

一番下の位は"奴隷"というらしい。その次に低いのは"平民"。世の中の大半は平民というものらしい。

その平民の中からなにか成功した人、能力や才能を王に認められたものが"貴族"というらしい。

貴族は王に能力を認められたこともあり、経済力を持っているため、平民と比べて裕福な生活を送ることが出来るという。

そして、最も位の高いのが"王族"。

王族は国の頂点であり、貴族のまとめ役のようなものと書いてあった。

なので滅多に外には出ないし、姿を見せるとすれば重要な式典のみ。

そこから考えると彼は王族ではない。

しかし、上等な身なりからしてそれを買うことの出来るお金を持っている。つまり、かなりの経済力を持っているということだ。

「貴方様は、貴族の方ですか…?」

「…ああ。」

やはりそうだった。ならば失礼のないようにしないと。

………おかしい。もちろん身分の差があるから、言葉遣いは気をつけないといけない。でも、何だろう、心の底で恐怖を感じている。

なんだろう…これは…

(気にしすぎかしら…)


「失礼しました。お加減は大丈夫でしょうか?動けるのであれば湯浴みを。お湯を用意してありますので、ゆっくりと浸かって頂いて大丈夫です。湯浴みが終わりましたら、お食事を。体に優しいものを用意させていただきましたので、もしよければ食べていってください。」


「ああ。どうもありがとう。ところで君、名前は?」


瞳が柔らかくなる。

これで、外の世界を…教えてもらえるかな…


「申し遅れました。私はカナリアと申します。」

「カナリア。カナリア嬢。本当にありがとう。おかげでとても調子がいい。」


良かった。さっきまで雪のように白かった顔に血色が戻っている。


「お風呂、どうされますか?」


「せっかくだ。入らせていただこう。」


「わかりました。こちらへ。」

そっと手を差し伸べる。

彼は驚いた顔をしていたけれど、手を優しく取ってくれた。

ドアを開けて風呂場への道を開く。

この方に出会ってからずっとワクワクしている。

慣れない感情に戸惑いながら、こんな日も悪くないとも思った。


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― 新着の感想 ―
[良かったところ] 状況説明がわざとらしくなく、かつ細かくて様子が想像しやすかった [気になるところ] 貴族は相続性じゃなくて一代限りなのかな…?あと爵位はどうやって決まるんだろう。 [一言] この作…
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