認めるということ。
生きていることは幸せなこと。
あなたの隣で生きていけるということは、幸せなこと。
私が、私と違うなら、それは変わるのだろうか。
ずっと、ずっと、あなたに会ってからずっと。
私は私を無視してる。
私の中に潜んでいたモノを無視している。
私のモノもあなたは愛してくれるのかしら。
***
随分前から違和感はあった。
ロベルトと会った時のあの感情。
魔力を合わせた時のあの感じ。
何かが嵌った音がした。
かちり、って。
ロベルトがいないと、どうしても不安になる。
さっきみたいに。
わかってる。
私はロベルトに依存してる。
でも、なぜか馴染む。
もう、解けてしまう。
『ロベルト。』
名を呼ぶ。
愛しい彼の名前を。
二つ並んだ椅子で、毛布にくるまりながら名を呼ぶ。
暖かな春の日差しが二人を照らした。
柔らかな黒髪が日光で光り輝く。
キラキラと、青い瞳が揺れた。
どうか、嫌わないで。
「なあに?」
優しいあなたに嫌われたくない。
ずっとそばにいて欲しい。
「『私を、嫌わないで。』」
私は、これまでの私じゃない。
何か、変わった。
あなたに出会ってから。
あの森で、あの場所で、あなたを見た時から。
ずっと、ずっと、気持ちが昂っている。
それは寝ても覚めても治らない。
例えば、ロベルトの魔力が暴走した時。
例えば、パーティーで毒が盛られた時。
例えば、ロベルトと出会ってから、本を読んだだけで魔法が使えるようになったこと。
思えば、おかしなことだらけだった。
でも、私は見て見ぬ振りをしていた。
認めたくなかった。
だって、認めてしまったら、私は変わってしまう。
その時、ロベルトは私を愛してくれるだろうか?
それが、その事実だけが怖かったから。
「なぜ、そんなことをいうの?」
ロベルトの体温がさっきよりも暖かい。
握った手に、大きな手が重なった。
「私、今までと少し違うの。きっと、私はこれまでよりも貴方に執着してしまう。あなたが傷つけられたら己を制御できなくなってしまう。それでも、そんな私でも、ロベルトは、私を、愛してくれる…?」
お願い。
「カナリア。」
聞こえたのは、罵声でも拒絶の言葉でもなかった。
優しい声。
私の名を呼ぶ、私の好きな声。
「僕はね、君が何者だろうと、カナリアという存在が愛おしい。君が今までと違っても、それは君自身だ。
僕は、君という美しい鳥が好きなんだ。たとえ僕は、君の外見が変わっても、性格が変わっても、君を愛している。この世界の何よりも、君が愛おしい。だから、大丈夫。君は、君を認めていい。」
ゆっくりと語る声が心地いい。
身体を包む温かな体温が、何よりも大切で。
背中に回された腕も、肩にある頭も、抱き締め返した時に触れた大きな背中も。
全てが、愛おしい。
私を、認める。
そうか。
私はずっと怖かった。
ロベルトの愛が、どこまでかわからないから。
人の心は計り知れないから。
でも、ロベルトは、"私"を愛おしく思ってくれている。
だから、この私も、私。
この違和感も、違和感じゃなくて、もともと眠っていた私が起きただけ。
もしかしたら、お母様が記憶と共に封印していたのかもしれない。
でも、私は思い出した。
誰かを愛しく思う気持ちも、記憶も、大切な人も見つけた。
だから、解けたのかもしれない。
「ありがとう、ありがとう、ロベルト。私も、貴方が世界で一番愛おしい。」
貴方が息をして、貴方が笑って、貴方が泣いて、貴方がこうやって抱き締めてくれて。
それはなんて幸せなんだろう。
私を受け入れてくれる人がいることは、何て幸せなんだろう。
認めるということ。
それは、受け入れることとにているのかもしれない。
だから。
もう迷わない。
もう躊躇わない。
これが、私。
これが、カナリア・リベ・アーレンスなのだ。
ロベルトだけの美しい鳥。
ロベルトだけが触れられる。
だって私は、カナリアだから。
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もう許さない。
貴方も、その歪んだ欲望も、その手段も。
全てが嫌い。
綺麗じゃない。
十分に時間は与えた。
断罪の時は来たのだ。




