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カナリアさんの秘密のお部屋  作者: クロ
第三章 過去と贖罪
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認めるということ。

生きていることは幸せなこと。

あなたの隣で生きていけるということは、幸せなこと。

私が、私と違うなら、それは変わるのだろうか。

ずっと、ずっと、あなたに会ってからずっと。

私は私を無視してる。

私の中に潜んでいたモノを無視している。


私のモノもあなたは愛してくれるのかしら。


***



随分前から違和感はあった。

ロベルトと会った時のあの感情。

魔力を合わせた時のあの感じ。

何かが嵌った音がした。

かちり、って。


ロベルトがいないと、どうしても不安になる。

さっきみたいに。

わかってる。

私はロベルトに依存してる。

でも、なぜか馴染む。

もう、解けてしまう。


『ロベルト。』


名を呼ぶ。

愛しい彼の名前を。

二つ並んだ椅子で、毛布にくるまりながら名を呼ぶ。

暖かな春の日差しが二人を照らした。

柔らかな黒髪が日光で光り輝く。

キラキラと、青い瞳が揺れた。

どうか、嫌わないで。

「なあに?」

優しいあなたに嫌われたくない。

ずっとそばにいて欲しい。


「『私を、嫌わないで。』」


私は、これまでの私じゃない。

何か、変わった。

あなたに出会ってから。

あの森で、あの場所で、あなたを見た時から。

ずっと、ずっと、気持ちが昂っている。

それは寝ても覚めても治らない。


例えば、ロベルトの魔力が暴走した時。

例えば、パーティーで毒が盛られた時。

例えば、ロベルトと出会ってから、本を読んだだけで魔法が使えるようになったこと。


思えば、おかしなことだらけだった。


でも、私は見て見ぬ振りをしていた。


認めたくなかった。

だって、認めてしまったら、私は変わってしまう。

その時、ロベルトは私を愛してくれるだろうか?

それが、その事実だけが怖かったから。


「なぜ、そんなことをいうの?」


ロベルトの体温がさっきよりも暖かい。

握った手に、大きな手が重なった。


「私、今までと少し違うの。きっと、私はこれまでよりも貴方に執着してしまう。あなたが傷つけられたら己を制御できなくなってしまう。それでも、そんな私でも、ロベルトは、私を、愛してくれる…?」


お願い。


「カナリア。」


聞こえたのは、罵声でも拒絶の言葉でもなかった。

優しい声。

私の名を呼ぶ、私の好きな声。


「僕はね、君が何者だろうと、カナリアという存在が愛おしい。君が今までと違っても、それは君自身だ。

僕は、君という美しい鳥が好きなんだ。たとえ僕は、君の外見が変わっても、性格が変わっても、君を愛している。この世界の何よりも、君が愛おしい。だから、大丈夫。君は、君を認めていい。」


ゆっくりと語る声が心地いい。

身体を包む温かな体温が、何よりも大切で。

背中に回された腕も、肩にある頭も、抱き締め返した時に触れた大きな背中も。

全てが、愛おしい。


私を、認める。


そうか。

私はずっと怖かった。

ロベルトの愛が、どこまでかわからないから。

人の心は計り知れないから。

でも、ロベルトは、"私"を愛おしく思ってくれている。


だから、この私も、私。

この違和感も、違和感じゃなくて、もともと眠っていた私が起きただけ。

もしかしたら、お母様が記憶と共に封印していたのかもしれない。

でも、私は思い出した。

誰かを愛しく思う気持ちも、記憶も、大切な人も見つけた。

だから、解けたのかもしれない。


「ありがとう、ありがとう、ロベルト。私も、貴方が世界で一番愛おしい。」


貴方が息をして、貴方が笑って、貴方が泣いて、貴方がこうやって抱き締めてくれて。

それはなんて幸せなんだろう。

私を受け入れてくれる人がいることは、何て幸せなんだろう。


認めるということ。

それは、受け入れることとにているのかもしれない。


だから。

もう迷わない。

もう躊躇わない。


これが、私。


これが、カナリア・リベ・アーレンスなのだ。


ロベルトだけの美しい鳥。

ロベルトだけが触れられる。

だって私は、カナリアだから。


///


もう許さない。

貴方も、その歪んだ欲望も、その手段も。

全てが嫌い。

綺麗じゃない。

十分に時間は与えた。


断罪の時は来たのだ。

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