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『祈現の碧』Prevalent Providence Paradigm  作者: 宇喜杉ともこ
第5章 (中) 祈源覚醒
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祈源覚醒 その1


2/

 

 

「アンタが一番最後よ。寝坊でもした?」

 

 幸斗が廃校に到着すると、既にそこには美佳、荒志郎、薫、浄の四人が朝礼台の前で立っていた。

 

「そういうわけではないんだけど……」

 

 適当に誤魔化しながら幸斗は四人の輪に加わる。

 

「先生一人で大丈夫だったかな……」

 

「大丈夫ですよ。先生は強いですから」

 

「オレとしても、まだ河奈のことで頼みたいことがあるからな……こんなところで死なれたら困る」

 

 薫の心配そうな声に荒志郎が応え、それに続いて浄も先生への思いを口にした。

 すると突然、朝礼台から青白い光が天に向かって差し照らされたのである。

 

「……見て。アレ先生からのサインじゃない?」

 

 美佳が指差した先に向かって梁山浄の『牙』が先行する。空間を切り裂き、裂け目から影が二つ飛び出してきた。

 

「先生! 何があったんですか」

 

「なに、問題はない。思いの外うまくいっただけだ」

 

 文化研究部一同のもとに飛び出してきたのは彼らの先生である八敷意であった。

 であればもう一つの影は——。

 

「シャルディーン……」

 

 魔術師の外套が風に靡き、星雲のように煌めく瞳が幸斗たちに向けられた。

 

「なるほど……私を消耗させた上で弟子たちを差し向ければ勝機は見込めると判断したわけか……だがそれは私とて好都合だ。なにせ目的が目の前に居るのだからな……‼︎」

 

 先手を動いたのはシャルディーン。照応天球を複数展開——そして球体の回転が加速し、弧を描いて文研部に襲いかかる——‼︎

 

「その程度っ!」

 

 八敷意の呪符がバリアを形成する。照応天球の特性を使用しない——単純な回転の伴った投擲ならば防ぐに難はない。

 およそ複数人への攻撃のため、あえて詠唱によるオート照準を外したのだろうが無意味に終わった。

 だが弾かれた照応天球は回転を続けて持ち主に帰っていく。そして魔術師を中心に回転が循環した。

 だがそれだけではない。

 

「球体が膨張しているぞ……ッ」

 

 青藍の球体が梁山浄の眼前に迫る。その大きさは直径にして人体の頭部二つ分に相当していた。

 手にした得物で押し返すが、軌道は既に第二波を予期させていた。

 大きさの見え方から距離を測る。遠くのものは小さく見え、近くにあるものは大きく見える。単純な話——だが、そこに違和感があった。

 

「遠くにあるはずなのに大きく見える……目の錯覚か? それとも……」

 

 照応天球は不規則に膨張と収縮を繰り返していた。その結果として対象の目では近くにあるか遠くにあるかを測りにくくしている。

 

「だったらいっそ……『蛇目(かがめ)』ッ!」

 

 味方が後方にいるおかげで巻き込む心配はなかった。視界に入っている対象の魔力の流れを遮断し動きを封じるその目は魔術師と青藍の球体を捉えていた。

 

「よしお前ら今のうちに——ぬっ⁈」

 

 死角からの急襲。照応天球は複数あった。だがその全てを彼は視界に収めることができていない……‼︎

 予想外の攻撃に思わずシャルディーンを視界の中から外してしまう。

 魔術師の拘束が外れる。その隙は致命的だ。再び『蛇目』を発動しようとするがもう遅い——。

 

「チクショウ……ッ!」

 

 振り上げられる拳が浄の下顎骨を砕かんと昇る。

 しかしそのミスをカバーしてこそのチームである。既にシャルディーンと浄の間には荒志郎が割り込んでいた。

 

錬成せよ(インタクト)

 

 手には剣、魔術師の拳を薙いでかち合う。ルーン手袋による硬化であろうか。傷を負わせることは叶わなかった。だがそれでも次の一手に繋ぐ役目を果たしていた。

 

変容せよ(モディフィケート)

 

 刀が融け、変形する。魔術師の手を包み込み、固まった。その重みは思わずもう一方の手で支えてしまうほどであった。

 咄嗟にバックステップするシャルディーン。距離をとって、鉄塊と化した腕を包む刀を魔術で破壊した。

 

「やはり複数人相手は難しい……一体ずつ相手にしようにも邪魔が入るのでな。であればまとめて潰すしかあるまいよ。————『星よ、廻れ』」

 

 照応天球が定位置に並ぶ。その魔術を八敷意は既に見ていた。周囲の魔力を超高変換率で破壊のエネルギーに変え、広範囲高威力のビーム砲を打ち出し其の名は——‼︎

 

「——『生命樹の雫エン・ソフ・アツィルト』!」

 

 シャルディーンの胸部に浮かぶ緑の球体が昂るように震え出す。

 チャージを止めるべく前方へ進むか、それとも攻撃の届かない後方まで下がるか。そのどちらにしても間に合わない。

 それでもと突っ込んだのは幸斗と美佳、そして薫。退く判断で後退りしたのが荒志郎と浄。その瞬時の判断はミスがあったという外ない。幸斗たちが前に向かうことで浄は『蛇目』を使用できなくなってしまったのである。

 だが行動に移してしまった以上やり切るしかなかった。

 突撃する幸斗たち。その眼前で魔力の閃光が迸った。

 

(避けられない……‼︎)

 

 一か八かで手を伸ばして球体を破壊しようと目論む。

 その直前で、前線に立つ三人はある違和感を覚えた。

 

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