サンセットライト
近くの宝石店は「サンセットライト」と言った。
30代の社長が1人で切盛りしていて職人の仕事を修行して今の店を持ったからオーダーはプロだ。
ただ、宝石の目利きは期待出来ない。
涙は、パライバトルマリンは祥子さんかフリマサイトでトッピンを買うが、フルオーダーはサンセットライトに頼んでいた。
CADが出来れば御徒町でオートクチュールが出来るが、あいにくCADの技術が無い。
サンセットライトの社長は、オーダーを頼んで完成何月とは一応言うが、何しろ田舎の宝石店なので完成して受取るのは初めの予定の3ヶ月後だ。
とてもルーズだ。
それでも腕はいいので、完成は遅れても最高の物が出来上がるので涙は忍耐の気持ちで我慢して待つ。
宝石の職人さんは、一般に気難しく変わっているから下手に怒らせてはいけない。
「忍耐」そのひと文字しか無い。
大粒のパライバのペンダントトップ作るのに予定は5月だったが受取りは8月24日だった。
凄まじくルーズだが田舎の変わった社長だから仕方ないのである。
でもこの店は良心的で都会のお店みたいに暴利にオーダー料金を高くしない。
誰が見ても良心的と言うお値段が常である。
ウィンデックスブルーのマーキスを2つ使いストレートブルーのペアシェイプのメインを映えさせ下に青いストレートブルーのオーバルを持って来てピンクダイヤのラウンドとビビットイエローのトリリアントを飾るデザインで、社長がデザインしてくれた。
まだ出来ていないが社長に任せている。
デザイン画は素晴らしく北海道にこんなプロが居たか?と思う程素敵なアンシンメトリーなデザインだ。
パライバトルマリンとイエローダイヤは色彩的な感覚でちょうどしっくり相性がいい。
祥子さんがよく言う点である。
涙が持合せのfancy pinkのピンクダイヤのラウンドをオーダーに持って行ったら祥子さんは気に入らないようだったが、社長がイエローよりピンクの方が価値があると主張するので涙は異議を挟めなかった。
祥子さんは、イエローダイヤでもビビットがパライバと合うと言う。
ホントにハッキリしたビビットイエローとパライバの青は合うのだ。
いつ出来上がりかわからないが、完成する頃は自分の体調も心配だ。
サンセットライトは歩いて10分のところにあり、ホントに手の届く場所だがそんな短距離でも歩くと胸が苦しくなる。
自分の体力に限界を感じていた。
遠い空の上に居る母には、いつも感謝の気持ちでいっぱいだった。
人は亡くなると神になると涙は思う。
母も神に変わって自分を守ってくれてると感じる。
オーダーに賭けるお金も母からの物だった。
愛ちゃんは、母が亡くなり私の介護を熱心にしてくれるが、ふと見ると私を見ながら涙を拭いてる時もあった。
愛ちゃんは献身的だ。
愛情があって優しく、性格から来るのかとても細やかだ。
私が料理は作るが洗い物や片付けは愛ちゃんがそそくさとやる。
2人でいろいろな意見を言い、満足する。
2人の話題は、パライバトルマリンというかウィンデックスブルーだった。
もう2人はオーダーの話に熱中した。
愛ちゃんの奇想天外なアドバイスは涙には役に立った。
涙にとって最後のオーダーは人生における卒論みたいなものだった。
全て愛ちゃんに心を込めて譲るものだ。
私は仕事に本気で男性をこころから愛すると言う機会は無かったが、女同士の語らいにはよく熱中した。
女だからわかる気持ちというものがある。
愛ちゃんへの妹への愛情みたいなものがあり、愛ちゃんの優しさに甘えていた。
愛ちゃんはホントに尽くしてくれた。
北海道はまだ寒い2月❣️
その頃から愛ちゃんは身の踊るような恋が始まった。




