パライバトルマリン
税理士の卵として働く私がみる先輩の宝石店にふらりと入った時のこと、、、。
このRという店の顧客になるとは夢にも思わなかった。
若い頃は、資格を取りがむしゃらに働いた。
税理士事務所の税理士先生の下で、税理士先生は名ばかりで客の接待も事務手続きも確定申告の難しい計算も全部私たち下っ端がやる。
税理士先生は、名前を貸すだけだ。
客には税理士の卵などと言われているが、客も甘く見て何でも言って来る。
客は、どうでもいい世間話を電話でして来て私たちの激務を邪魔する。
その中で客に笑顔で優しく話すことは習慣になり身についた。
そんなこんなで仕事してるうちに信用がつき顧客もたくさん出来、私の給料も上がって行く。
得意のふるさと納税も自分用に頼むようになった。
当然、金もでき背伸びして贅沢もしてみたくなる。
先輩が言っていた宝石店Rにふらっと入ってみた。
きらきら輝く大粒のダイヤやルビーのリングがショーケースに飾ってある。
普通に店に入りふらっと見てるだけだから店員が寄って来てかしこまっているのは何かなぁと振り返りびっくりした。
営業用の笑みを振りまき男性店員が寄って来た。
「何かお探しですか?」
とっさに先輩の名前を思い付き
「みるさんがよくこのお店のこと話すから来てみたの」
と言ってみた。
店員の顔がパッと輝き
「みるさんですか?あの方はよくお買上げ頂きお世話になっています。
この前はいつものパライバトルマリンのとっておきのリングをお作り致しました。」
と話した。
「またルースをお見せするお約束です。トッピンのパライバトルマリンでございます。」
先輩からこの店には思い入れのあるリングをオーダーして作ってもらっていると聞いているからその宝石がパライバトルマリンというのも知っている。
この店員、みるさんの名を出したら話過ぎな程話す。いいのかなぁ?みるさんがそんなに有名なのかぁ…。
「みるさんとは、この後お茶します。指輪の話を聞いてみます。」
「さようでございますか?
またどうかお越し下さいませ」
とこの店員揉み手。
店員を振り解きRと言う店を出た。
この店のお得意様に自分がなるとは、この時はひとかけらも思わなかった。
みるさんは、どんな指輪をこの店で作ったんだろう⁉️
凄く気になる。