山盛りポテト食べたいな
「あっつー」
女子三人組みは早々とカラオケをあとにした。
グズグスと鼻をならす若菜あかり。
うつむきながら考えことをする白川結奈。
天を仰いでご満悦な花小町遊。
「ちょっとまって」
場の異常を察知した白川結奈は、信号手間で脚をとめた。「あかりが泣いてるのも意味わからんけど、花小町さんが機嫌いいのなんで?おかしくない?親友に報告するのに心傷んだりしないの?」
普通ならそうである。親友の古傷を慰めるためにカラオケにきたようなものだ。手ぶらではないとはいえ、しょうもない荷物をもたされて、これから親友に伝えなければならない。
「もしかして言わないつもり?」
「結奈っちは、意外と頭の回転いいよね」
クスッと笑った花小町遊は、白川結奈の耳元へ「親友ってウソなの」と、囁いた。「ひとから聞いた話しなんだよ。裏付けほしくて。ほら、片方の意見だと正確なデータは、とれないじゃない。———まあ、あの様子じゃ黒確。あかりっちにフラれて、ざまあだね」
「データ?」
「そう、データ。好きなの。ちなみに二人のデータもとらせてもらっているよ」
「花小町さんこわっ」
白川結奈は、花小町遊の袖をクイと掴んで「結奈のデータってなに?気になる」
と、小声で聞いてみたが
「いまは、彼氏募集中のギャルとしか言えないかな」
と、かわされてしまった。
「でも、あかりっちのデータは、大きいのとれたかな」
花小町遊はまだグズグスしていたあかりを後ろから抱きしめて言った。「あかりっち処女でしょ」
「え?そうなの?うそ!えーーー」
なぜか盛り上がる白川結奈に花小町遊は、糸目を下げて呟く。「セックスって言えないのかわいいよね」
「あ、そういう———あかり、ちゃんと反論しないと花小町さんの餌になるよ」
あーこわいと身体を小さくする白川結奈へあかりは、ようやく口を開いた。
「しょじょだもん!わーん」
「処女なんかい。そして言うんかい」
「びっちじゃないもん!わーん」
あかりは、影でいろいろ言われているようだった。
「二人とも見た目派手だから臆測をよぶよね。大丈夫!私は、ちゃんとデータとる派だから」
「まって!結奈も言われてるの?その……ビッチとか」
「むしろ結奈っちのほうが言われてるよ。違うの?」
「違うよ!結奈そんなんじゃないもん」
泣いているあかりを他所において、白川結奈は、食い気味に聞いた。「し、処女とかは、言われてないよね?」
「言われたかった?処女」
「イヤ!絶対にイヤ!ビッチも処女もイヤ」
「結奈っちは、わがままだなー。で、どうなんだいそこのところ」
「花小町さんには、絶対に言わない」
やれやれと言いながら花小町遊は、あかりと白川結奈の頭をなでた。
「二人ともかわいいねー」
「花小町さんは、どうなのよ」
「んーデータ程度にはね」
「大人!」
ようやく泣き止んだあかりが白川結奈につげる。
「花ちゃんは、中学から大人だよ」
「余計なことは、言わないのが礼儀だよ。あかりっち」
花小町遊は、人差し指を唇にあて、ひょいと後ろを振り返った。「ほら、男子に聞かれてる」
「!!!!!!」
後ろには見知った男子高校生がいた。
というか高橋くんだった。
高橋は、バツが悪そうな顔をみせたが、すぐに俯いて三人を追い越そうとした。
それをさせないのが白川結奈である。
「いつからいたの?」
と、シャツの襟を掴んで睨む。
「いつからって言うか……オレ本読んでたし……」
災難である。
読み途中のラノベだと高橋は、スマホの画面を見せたが
「どこから聞いてたの?」
白川結奈に聞く耳なし。
「だいぶ前から後ろを歩いていたのは、知っているよ。白状したまえ」
と、花小町遊にまで遊ばれる始末。
「本当に聞いてないから。やめてくれよな」
しかし高橋には、弱点があった。
毎日毎日見られて、意識しないほうがどうかしている。しかも自分を推しとか騒いで、パンツを見せてくる女。
そう、若菜あかりである。
「ホントに?」
いまだ瞳がウルウルのあかりである。
「処女だもん。から聞いてました!すんません」
そウカそうかーと、花小町遊に肩を組まれ
「山盛りポテト食べたいな」
と、道向かいのファミレスに強制連行される高橋だった。
災難である。
続く