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まひろのオムライスしか食べない主義だ

 翌朝。またも市川詩織に連行された高橋匠。

 例によって非常階段である。

「先にいっておく。土下座はナシだ。オマエのせいで昨日は散々だ」

「高橋さんは、朝からなにをいってるんですか。暑さで頭がわきましたか。あとオマエ呼びは、失礼です」

「失礼なのはオマエだ。そもそも改心したんじゃないのか」

「しましたよ改心。なので、ズボンのポケットが出ているのをどう指摘したものかと、心優しく思考をめぐらせています。ファスナーが開いていたなら引き出しもあるんですがね」

 これは恥ずかしい。

 高橋匠は、そっと尻ポケットをあるべきところへ直した。

「で、用件は?」

「そうです!相談がありまして。これをみてください」

 市川詩織は、カバンの中から雑誌を取りだした。

「ファッション誌?」

「はい。明日、あかりさんと買い物へいくじゃないですか。土曜の学校帰りだから制服でいいと思っていたんですが、明日の土曜って普通に休みだったんですよ。それで、待ち合わせすることになったんです。つまり、買い物へ着ていく服を今日中に用立てる必要があります。そこでご意見をいただきたく。朝から校門で待機させていただきました」

 ん?うん。いわゆる服を買いにいく服がないと。

 言いたいことはわかるが。

「なんでオレ?白川さんとかに相談すべきだろう。連絡先の交換もしたんだよな」

「そ、それはそうなんですが」

 さっきまでの威勢はどこへやら、市川詩織は、モジモジとファッション詩を握りしめていう。「だって、ダサいとか思われたくないじゃないですか。みなさんオシャレで気後れしてしまいます。それに比べて高橋さんは、見るからにパッとしないから相談しやすくて」

 なるほど。なるほど?

 いい方は失礼だが、頼られるのは、嫌いじゃない。なにより恥じらいながらの上目遣いは、嫌いじゃない。ああ、嫌いじゃない。

 しかし問題があった。

「女性ものの服とかよくわからないんだが」

「そこで、このファッション誌です。この中からいい感じのものを選んでください」

 いい感じって言われても。

 手渡されたファッション誌を開いてみたが、よくわからない。雑誌に掲載されているのだから流行はおさえてあるのだろうが、市川詩織に似合うかと言われれば甚だ疑問だ。

「どれも派手すぎやしないか?」

「そうなんですよね。でも、あかりさんの横に並ぶとなると、それなりの服装でないと」

 それなりの服装ねえ。

「ちなみに高橋さんは、普段どうやって私服を選んでますか?もしやわたしと一緒で休日は、中学ジャージですか」

「オレは基本、妹に選んでもらっている」

「うんわ!シスコン。ドン引きです」

 中学ジャージにいわれたくない。

「オレの妹は、扇風機を内臓しているレベルに外面は、完璧な妹だぞ。ファンクラブまであるらしいからな。服のコーディネートくらい朝メシ前だ」

 市川詩織は、腹の底からため息をついた。

「でしたら、妹さんが好きそうな服をこの中から選んでください」

 そうはいわれてもなー。

「コレなんかどうだ?派手すぎず夏らしい」

 と、高橋匠は、白いふんわりとしたワンピースを指した。

 しかし。

「ギャルゲ目線でリアルの服を選ばないでください。キモい」

 心が折れそうだ。

「オマエは、ないのか。こんなの着てみたいとか」

「あかりさんの隣にいても恥ずかしくない服装です」

 最初に戻ってしまった。

「なあ、知識のないオレたちがいくら悩もうと意味をなさないと思わないか?」

「でも、他に相談できる相手もいませんし」

「森山は?あいつなら流行りも知っているだろうし、女子との交流もある」

「あーけんくんですかー」

 市川詩織は、またため息をついて、「昨日の帰りに軽く相談したんですが、『詩織ならなんでも似合う』と、思考を放棄されました」と、苦々しくいった。

 どうやら幼馴染二人は、多少でも会話をして共に帰路についたようだ。計画は、順調といって差し支えないだろう。

 高橋匠は、胸を撫で下ろした。

 それにしても『詩織ならなんでも似合う』なんてキザなセリフをいえる森山健治も大概だが、全く響かない市川詩織も大概である。

 こうなったら仕方ない。

「一番手っ取り早くて、無難な方法がある。聞きたいか?」

 コクンと大きく頷く市川詩織に高橋匠は告げる。

「ショッピングモールの服屋で店員に見繕ってもらえ」

「ですから、服屋にいく服がないんです」

「学校帰りなんだから制服でいいだろ」

 なるほど!と、市川詩織は瞳を輝かせた。

「目から鱗です。高橋さんに相談してよかった。放課後付き合ってもらえますか?」

「断る。それこそ白川さんと一緒にいけばいい」

「なんでですか。乗り掛かった船でしょう。もちろんただでとはいいません。なんでもご馳走します。オムライスとかどうですか?前にあかりさんが美味しいっていってました」

「オレは、まひろのオムライスしか食べない主義だ」

「まひろとは?」

「妹だ」

「ガチでキモいですね。シスコン」

 ほっといてくれ。


続く



 

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