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弾力のある豆腐

 高橋匠は、空気に溶ける練習を始めた。

 拒否権はないし、水着は買ってしまったし、諦めるしかないのなら仕方がない。せめて、この賑やかな空間から1ミリでも心を離したい。

 けれど、そうもさせてくれない人がいた。彼女は、白川結奈がドリンクバーへ席をたったすきに高橋匠の隣へすわる。

 花小町遊だ。

「はっしー元気?」と、上半身をひねり顔を近くにもってくると同時に、花小町遊の柔らかい胸の感触が高橋匠の右腕へ与えられる。

 弾力のある豆腐!

 どうでもいいけど、ボタンを開けすぎではなかろうか。ブラジャーの紫色がこんにちわしている。

 高橋匠は、赤い顔をそむけるように、目線を天井へむけてこたえた。

「げ、元気じゃないです。誰かが土下座プレイとか言い回ってくれたので訂正に疲労困憊です」

 誤解だよ。と、花小町遊は、糸目を垂らして笑う。

「私は、結奈っちに『はっしーが朝、非常階段でしおりっちを土下座させてたよ』って、いっただけ」

「じゃあなんで、土下座プレイなんて噂がたってるんですか」

「それは君たちが食堂で騒いだからでしょ」

 言われてみれば、あの時の白川結奈の声のボリュームは、大きかったかもしれない。拡散するに充分な人数もいた。それにしても、森山健治に噂が流れるまで早すぎやしないか。

「噂なんて秒だよ」と、花小町遊は、高橋匠の右手に自身の左手をのせる。

「はっしーの手好きかも」

 やめてくれ!と、手を振り払えばいい。高橋匠とてわかっている。けれどできない。なぜなら彼も健全な男子高校生だからだ。

 柔らかい!きもちいい!最高!

 花小町遊にかかわるとロクなことがない。理も論も性の前では絶対服従だ。

 これだから大人は!

 でも幸せ。

 この間も花小町遊は、高橋匠の指を甲を掌をその指で弄ぶ。

 いかん……これ以上はいかん。

「お、オレもコーラとってきます」

 立ち上がった先で高橋匠は、市川詩織と目があった。

 不機嫌そうに市川詩織はつぶやく。

「えろ橋 キモ」

 まってくれ!オレのせいじゃないだろう!


続く

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