四角いシュークリーム
「結奈は、白浜いきたい」
高橋匠の隣に座るやいなや、白川結奈は颯爽と手をあげた。
若菜あかりと市川詩織は、隣の2人席へ座る。
「花小町さんは?」
彼女に一言いってやるつもりだった高橋匠は、その不在に疑問をあげた。
「コマちゃんは、遅れるって。なんだか忙しそうだったよ」
嫌な予感がする。
「とにかく、結奈は、白浜がいい」
「白浜って遠いよ、結奈ちゃん。電車とバスで何時間かかるか」
調べてみる。と、スマホをだす森山健治。
とりあえずドリンクバー。と、注文をする3人。
忙しなくなった空間に高橋匠は、早速疲れてきた。
海水浴なんて子供の頃に家族と行ったきりで、地名を出されてもよくわからない。まあいい。オレはついていくだけだ。
「最寄りの駅まで2時間半そこからバス。最低3時間はかかるかな」
「始発でいけばよくない?」
「荷物もって乗り継ぐのはダルくないかな」
「そのための健治くんと高橋くんでしょ」
「荷物もちで呼ばれたの?俺らかわいそくない?それより熱海は?42分で乗り換えなし」
「熱海もいいけど、白浜のほうがイケメンいそう」
「熱海駅前にかわいいスイーツあるよ」
「どんなの?」
「四角いシュークリーム」
「なにそれ!バエル!」
賑やかだな。と、森山健治と白川結奈の会話を聞きながら高橋匠は、最後のポテトをつまんだ。
始発で海か、ダルいな。しかも3時間。拷問かよ。ここは森山に頑張ってもらって熱海で手を打ってもらいたい。
若菜あかりと市川詩織は———スマホを見ながらなにやら楽しそうにしている。
どうせメガネだろ。
幼馴染2人に仲直りしてほしい。は、変わらずそこにあるけれど、森山健治のやらかしを考えるとみちは遠そうだし、海にたいするモチベーションが下がる一方の高橋匠だ。
近場で軽く済ませたい。
「あかりと詩織ちゃんは、白浜と熱海どっちがいい?」
「どっちでもいいよ。海とメガネがあれば文句はない」
「わ、わたしもどちらでも」
「結奈ちゃん、熱海プリンだって。こっちのクレープもかわいいよ」
「近いし、バエも多いし、熱海がいいかな」
コレは熱海に落ち着きそうだな。よしよし。と、高橋匠がほくそ笑んでいると、
「白浜1択」
花小町遊のご登場である。
「コマちゃんおつー」
おつー。と、花小町遊は、森山健治の隣へ座り、
「1泊2日白浜の旅だよ」
と、スマホを提示した。
「親戚がペンションやってて、平日ならタダで泊まれるよー」
おいやめろ。1泊2日だと?嫌だ。
高橋匠とは反対に、
「なにそれ!サイコーサスコマ」
「泊まりなら遠くてもいいかな」
「花ちゃんしごでき」
と、テンションの上がる一堂。
いや、まて。と、高橋匠は、市川詩織へ視線をむけた。白浜がどこでどんなところか知らないが、遠いということはわかる。彼女なら自分と同様に近場で軽く済ませたいはず。
しかし、
「あ、あかりさんと1泊。いいんですか?嬉しい」
そうだった。信者だった。
たまらずに高橋は発言する。
「オレは、熱海がいいな。ほら!四角いシュークリーム?食べてみたい」
「結奈も食べたい四角いシュークリーム。でも泊まりで白浜もいきたい」
よし、流れをすこし変えることができた。他に熱海のいいところは……。近いしか出てこない!あとは、あとは……。
こめかみをトントンする高橋匠に花小町遊は、悪魔の提案をした。
「帰りに寄ればいいじゃん。どうせ熱海で乗り換えだし」
え?どういうことだ?
白川結奈も
「どゆこと?」と、はてなを顔にだす。
「結奈っち知らないで言ってたの?白浜は、熱海から南下するんだよ。どのみち乗り換えで熱海いくし、帰りに寄ろうよ」
なんだと!うかつ!
花小町遊は、糸目を高橋匠へ向けて微笑んだ。
「はっしーよかったね。1泊旅行に四角いシュークリームも追加されたよ。それとこれ、みんなに配ってるのに、はっしー受け取らなかったって聞いたから」
そういって、花小町遊は、見知ったポチ袋を高橋匠へ差し出した。「今度はフレーバーついてないのだよ」
「いらない!へ?みんな?」
「夏だからね。間違いで大事にならないようにみんなに配ったのだよ。それで遅くなった」
余計なお世話だ!
続く




