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ネタののっていない寿司なんか食えるか!

 カラオケという場は、否応なくそれぞれに役割を与える。盛り上げ上手、歌上手、話し上手、聞き上手、幹事。

 本来の若菜あかりは、歌上手の部類にはいるが今日の彼女は、少し違った。歌うどころかスマホの操作に夢中でろくに会話へすら入らない。

 参加メンバーにメガネ男子がいるにも関わらずに、だ。

「どしたん?あかりっちーいつものアレうたってよ」

 女子チームの聞き上手、花小町遊が糸目を垂らしてあかりの隣に座りなおした。「男子たちもあかりっちと歌うの楽しみにしてたんだよー?」

「んー気分じゃない」

「柳くんのメガネ姿もレアだよー?」

「……伊達は論外」

 あかりに好んで欲しかった柳くんは、メガネをそっと外して、恋愛ソングでかわいいアピールをしている白川結奈に潤んだ視力1.5を向かわせた。

「あかりっちひどー!草なんだが」

 花小町遊はケラケラとひとしきり笑ったあと

「元カレいたら、そりゃのれないか。ね、前林くん」

 と、あかりと前林を交互にみた。

 他の三人が一斉に動きをとめ、白川結奈の手からマイクがドゴンと落ちる。

「え?どうゆうこと?二人付き合ってた?」

 三人は口々に騒ぎたてた。

「ありゃー?オフレコでしたか?同中はみんな知ってるからいいかと思って。ねーお二人さん」

 花小町遊は、笑いがとまらないまま言う。

「前林くんて中学のときメガネ男子だったんだよ。銀縁で頭良さそうな。いまみたいにイケメンキャラではないけれど面白いから人気もあってさ。あかりっちは当時から変だけどかわいいからモテモテだったし。お似合いの二人だったんだよ。だから別れた理由が知りたくて、今日、来たくもない、カラオケに、来たんだよ」

「まあまあ、むかしの話しだし。もういいだろ。うん!俺うたおうかな」

 いたたまれないのか前林は落ちていたマイクを拾い上げた。

 しかし

「むかし……そうだね。でも君にふられて泣いた女の子たちは、みんなそうやって前を向けているのかな?前林くん」

 花小町遊の目はもう笑っていなかった。

「すくなくとも私の親友は男性不審になったよ。初めてキスした相手が次の日カースト上位のあかりっちと付き合ったんだもん。不審にもなる。———べつに責めてはいない。そいゆうこともあるんでしょ、知らないけれど。ただ、別れた理由くらいは、教えてくれてもいいんじゃないのかな?そこは本当に誰も知らないからさ」

 と、花小町遊は、あかりを見てにっこり笑った。

 あかりにとっては初めて聞く話で、寝耳に水で、頭がぐらぐらして。

「だって……したの……」と、思わずこぼした。

 目に涙をためて震える声であかりは言った。

「だって、前林。エッチするときメガネはずしたんだもん!」

「なんだってー?」

 当人たち以外が口を揃えて叫んだ。同情でもなく、単純に言葉が出たのだ。

 ここまでモテを演じていた白川結奈が反射で追尾弾を発射する。

「それで、したの?」

「するわけない!ネタののっていない寿司なんか食えるか!」

「シャリ好きに謝れ!」


続く

 



 




 

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