いちごだな
この前と同じファミレス。同じ席。なのに、同席者が違うだけで別世界だ。
心地よいBGMに心地よい空調。テーブルには、山盛りポテトとマルゲリータ。
「高橋ってコーラ飲むんだな」
意外だと、森山健治はいった。
「ジャンクにコーラはテッパンだろ。森山こそブラックコーヒーとは、大人だな」
「甘い飲み物が苦手なだけだよ」
そうなのか。かっこいい。
中学生のころカッコつけで飲んだことはあるが、飲めたものではなかった。と、高橋匠は、苦い思い出をふりかえる。
それにしても。
高橋匠は、正面にすわる森山健治をしみじみみた。
イケメンだ。
スッと高い鼻。整えられた眉毛。切れ長の黒い瞳。長いまつ毛。キレイな顔を男性とさせる頬骨、骨格。笑みで固定された薄い唇。
「森山ってピアスしていないんだな」
「え、だって怖いじゃん。痛そうだし」
「陽の人間は、みんな穴をあけているんだと思っていた。若菜さんたちもあけているし」
「女の子はオシャレだからね。とくにあの3人は意識高いかな。結奈ちゃんなんてバイト代のほとんどをオシャレにつかってるみたいだよ」
いわれてみれば、白川結奈の茶髪は、途中で色がピンクにかわっていたきがする。女子相手で緊張していたのか、顔もあまり思い出せない。ただ、ピアスやらネックレスやらがキラキラ光っていた記憶だ。
だからといって、森山に緊張していないわけでもないがな。
森山健治は、制服をかるく着崩すくらいで、コレといった個性がみえない。なのに、記憶に残る。イケメンとして。
そんなイケメン森山健治が片恋する幼馴染の市川詩織は、地味でメガネで暗い。
彼女が卑屈な物言いを癖とするのが、高橋匠にはわかるきがした。
———そうだ。市川詩織。
和やかな空気で忘れていたが、その話をするがために、午後の授業をばっくれたのだ。
「それで、森山が話したいことはなんだ」
「急だな」
森山健治は、つまんでいたポテトを飲みこんで、「まあ、なんというか、その」と、ごもる。
「市川さんのことだろう。なにか問題でもあったのか?若菜さんとか若菜さんとか」
「いや、あかりちゃんは関係ないよ。あかりちゃんじゃなくて高橋」
「オレ?」
「そう高橋。おまえも気づいているだろう?その、噂をさ」
なんのことだろう。
「昨日の女子トイレの件が問題にでもなったのか?」
「ちがくて。え、おまえ気づいてないの?」
マジかーと、森山健治は、深い溜め息をこぼした。
「俺はてっきり、学校での居心地がわるいから、高橋は、ばっくれに賛同したのかと」
「居心地?なんの話だ」
「だから!その……」
そして、森山健治は、目線をそらし、陰った表情でいった。
「詩織との土下座プレイだよ」
ばかやろう!
「誤解だ。というかなんでしってる。そもそもプレイって、噂って。なんでそんなことになっている」
驚く高橋匠をよそに、哀愁をまじえて森山健治は、なおもつづける。
「いいんだ。高橋と詩織が仲良くなれると思っていたのは事実だし。たしかに展開は早いけど、彼氏彼女のなかになったのも悪くはないと思う。ただ、朝からそういったプレイは、さすがにな。特に詩織は女の子だし、もっと大事にしてあげてほしい」
「まてって。だから誤解だ。昨日失礼な態度をとったからって市川さんが勝手に詫びの土下座をしただけだ。それ以外なにもない」
「でも、噂が流れ出したころ、花小町遊ちゃんが俺のところにきて、これを高橋へ渡してほしいと」
そして、森山健治は、見たことのあるポチ袋をテーブルにだした。
嫌な予感がする。まさかまさか。
「悪いが中身をみせてもらった」
と、ポチ袋の中身を取り出す森山健治。
案の定それは、コンドームだった。
「いちご味だそうだ」
そうか、いちごか。いちごだな。
ガチでクソだな!あの糸目エロ女!
続く




