チョコレート味だって
「なにがはいってたの?」
「なんでもないっす」
「結奈もみたい」
「むりっす」
「みせて」
「むりっす」
白川結奈と高橋匠のあいだにはコンドームがある。
食堂のテーブルのうえ、高橋匠の右手のした。とっさに隠したので、ポチ袋のうえかしたかは、さだかではない。
ズルズルと、ポチ袋ごと手前によせる高橋匠。
あと5cm。
「みせてくれないなら、結奈も高橋くんの話、きいてあげないかも」
それは、ズルい。しかし、ひと前にだすモノでもない。
いや、まて。
高橋匠は、ひらめいた。
この物騒なモノを白川結奈へわたせばいい。
べ、べつに、オレは、いらないし?
「では、オレの手のうえに白川さんの手を重ねてください。そのままわたします」
「いいの?」
「はい。そのかわり、だれにもみせないように」
「り」と、白川結奈が手をのせたタイミングで、高橋匠は、自分の手を素早くぬいた。
「えーなんだろなんだろ」
ワクワクしながら白川結奈は、ソレを高橋匠がそうしたように手前に引き寄せ、構えておいた左手におとした。
両掌でおさえたソレを目線までもっていき、そっとのぞきこむ白川結奈。
「え!」
驚いた顔で両掌をとじた白川結奈は、もう一度ゆっくりと隙間をあけてのぞく。
「チョコレート味だって。味なんてあるの?え、ま?」
興奮する女子高生。
うつむく男子高生。
二人とも顔が真っ赤だ。
「え、ちょっとまって。土下座させてたって、そうゆープレイ……」
「ちがルます」
なんてこといいやがる!噛んだじゃねえか!
「だって極薄って」
「しりません。早くソレをしまってください」
「え、やだ。だってこーゆーのは、男の人がもつものでしょ」
偏見です。
「偏見です」
「あ!でもお財布にいれるとお金たまるってゆーよね」
初めてきいた。
「とにかく、ソレは、白川さんにあげます」
「使わないの?」
残念ながらそんな予定はございません。
「はやくしまってください」
まあ、いいけど。と、白川結奈は、スカートのポケットにしまって、
「高橋くんて、テンパると敬語つかうよね。ウケる」
と、パックのミルクティーのストローに口をつけた。「エロいの苦手?」
苦手ではない。普通に一般男子高生なみに興味もあるし、大好物だ。ただ、馴染みのないソレは、無機質なぶん余計にリアルというか、くるものがある。
敬語が云々は自覚していないから知らない。
「と、とにかく。約束通り、話をさせてもらうからな」
と、口調に気をつけて高橋匠はいった。
「いいよ。それで、なんの話だっけ」
「えっと……」
なんの話だっけ。
続く




