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おにぎりのスタンプ

 授業中、高橋匠は、考えていた。

 さて、どうしたものか。

 実は昨晩、カレーを食べながら学校での出来事をぼやいた高橋匠は、まひろから、とっておきのアドバイスをいただいていた。

 お兄ちゃんの最初の計画、つかえそうですね。

 そうなのだ。

 市川詩織を海へさそうための計画のだったので、もういらないと投げ捨てていたが、幼馴染二人を仲直りさせる。という計画に置き換えれば、そのまま流用できるところが多い。

 時間をかけて海へ誘うのではなく、時間をかけて仲直りさせる。

 計画をゆるがす可能性のたかい迷惑な脊髄女としていた若菜あかりは、滑りすぎる潤滑剤くらいにその立ち位置をかえた。

 これがかなり大きい。

 例えば、いまの段階で、森山健治と市川詩織の二人だけで登下校させるというミッションは困難だ。よく見積もって勝率二割といったところだろう。そこに若菜あかりを投入。するとどうだろう。信者の市川詩織は、しっぽをふってくらいついてくる。勝率十割だ。

「帰り、みんなでファミレスいかない?」

「いくいく!」

 みたいな安いノリで、お釣りがくる。

 そんなノリ、本来の高橋匠は、遠くへおきたいところだ。しかし、のるしかない。このビッグウェーブ。なぜなら、幼馴染の帰路は、おなじだからだ。自然と、普通に、一緒にかえるだろう。多少なりとも会話は、あるはずだ。そこを入り口に小さな光は、やがて二人をてらす愛の太陽に。は、いいすぎでも幼馴染の距離感を縮めるあしがかりには、なるだろう。

 きっと森山健治は、よろこぶ。好きな女の子と二人きりでの下校だ。ウェイの極みだろう。

 問題は、市川詩織の気持ちだ。幼馴染と仲直りをしたいのか。疑問である。

 森山健治の恋を手助けしたい。

 けれど、

 今朝、友達になった市川詩織の気持ちをないがしろには、したくない。———そう、友達だ。フレンドではなく友達。

 高橋匠は、LINEの友達欄に一件だけある市川詩織の名前と、よろしく!というかわいらしいおにぎりのスタンプを思い出す。

 どうしたものか。

 市川詩織本人に聞いても無駄だろう。いまは心優しい星人を装っている。全てにたいしてYESでSORRY だ。

 土下座で泣かせた記憶が、高橋匠の胃を重くした。

 まひろからの返信で、今夜のメニューは二日目のカレー一択だといわれてしまったし、癒しがない。

 だれか相談できる相手でもいればいいのだが、Discordのフレンドたちもいまは、学校や会社だ。それらに準じていないフレンドもいるが、内容が内容だけにあてにならない。

 ならばSNSで———そうか!SNS。どこぞのサイトで知恵袋より反応は早いはず。

 高橋匠は、先生の目をぬすみスマホを開けたが、すぐに机へもどした。

 文言が思い浮かばない。文章で説明するとかなり長くなりそうだ。

 なるほど。

 高橋匠は理解した。

 だから女子の会話は、ながいのか。

 となると……。

 窓側中央、あかりの前の席へ高橋匠は目をむけた。

 少し早いが、第二段階へ移行するほかない。

 そう、白川結奈への協力要請ならぬ、ご意見の頂戴だ。

 問題は、第一声。

 生身の女子高生。しかもギャル。

 重い胃がどんどん重くなる。


続く


 


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