焼きそばを食べたいですね
市川詩織は、瞳を百万ドルに輝かせて、今日の出来事を高橋匠へ懇切丁寧につたえる。
あかりさんが、あかりさんで、あかりさん、あかりさん♡
このときの高橋匠の気持ちをつたえるのは難しい。なので、彼の当初の計画をここに記そう。
当初の計画。ご破産になった計画。
第一手として、森山健治と高橋匠の二人で市川詩織を海に誘う。
当然、断られるであろう。
なので、一週間から十日をめやすに少しづつ少しづつ、彼女の警戒心をといていく。この間、幼馴染二人がなるべく接点をとれるようにする必要があるだろう。
高橋匠の推測では、イケメン森山健治をめぐって、幼馴染の市川詩織が女子からの迫害にあっていたであろう、ということ。時をへて、仲直りをするきっかけをうかがっているであろう、ということ。
よって、海は、市川詩織にとっても森山健治と仲直りできるうってつけの場である。と、念を押せば、最終的に合意するはずだ。
あくまでも、仲直り。残りの高橋匠とギャル三人はおまけであることをアピールする。
ここまできたら、第二手。ギャル三人への協力要請だ。
三人の中では一番、常識がありそうな白川結奈へ事情を説明する。白川結奈は、ワンチャン森山健治を恋愛対象におく可能性もあるので、ついでにその芽もつんでおく。
ここで、参加者一同が、幼馴染二人を仲直りさせる。という目的で動きだす。
若菜あかりの暴走は白川結奈に一任して抑えてもらえばいい。
最終手は、海で幼馴染たちを二人きりにさせる。
森山健治が市川詩織に愛の告白でもすれば、ハッピーエンドだ。
シナリオはまずまずといったところだろう。
ところが、だ。
現実は、若菜あかりが突っ走って、その勢いに市川詩織が、なぜか、心をうばわれる。
森山健治のあつかいは、顔がいいだけの男だが、あかりが良しとするなら、自分が馬として撃たれても悔いはない。
というありさま。
ここ二日の疲れが高橋匠へいっきに襲いかかった。
それでも念の為、高橋匠は、市川詩織に聞く。
「白川さんと花小町さんも海にいくけれど、そこは大丈夫なのか?」
「もちろんです。あかりさんの友達ですよ。きっとステキなひとたちでしょう。みんなで焼きそばを食べたいですね」
ぐうのねもでない高橋。
「そんなことより、あかりさんです。けんくんのこと好きだと思いますか?」
「どうだろ。少なくとも森山は、若菜さんを恋愛対象としてみては、いないよ」
「はんっ!けんくんごときが選ぶ立場にあるとでも?そのへんの雑草でもいやがりますよ」
きみが、その雑草なのだ。と、いいたい。
「でも、若菜さんは、メガネにしか興味なさそうだよ」
きみのことも、オレのことも。
「高橋さんはバカですか」
市川詩織はいう。
「メガネ相手に恋する人間が、いるわけないです。あかりさんをそんな変態と一緒にしないでください」
好きにしてくれ。
続く




