うまい棒のチーズ味なみにうまい
夏の太陽を背にした若菜あかりは、今日も教室の推しを見ていた。
ガン見である。
あかりが脚を組み替えるたび、制服のスカートからチラりとのぞく赤色のレース。男子生徒が戸惑おうと我関せずに、今日も今日とて、にへら、にへら。
「あかり、キモい」
状況をとめに入った白川結奈も慣れたもので「なにみてるの?」と、赤いレースの前に立った。
「だって良くない?やばいって。黒ってのがいいの。確かに銀もクールで良きだけど、アタシ的には黒がマスト。昨日までのウェリントンも良きだったけど、やはりスクエアは格別にうまい。うまい棒のチーズ味なみにうまい」
「ごめん、なにを言っているのかわからん。結奈にもわかるように説明して」
「だからーあのメガネが大好きって話し」
あかりの指が示した方向をみて白川結奈は大きくため息をこぼした。
「結奈にはわからんよ。言い方アレかもだけど、高橋ってただの隠の人じゃん。いつも本読んでいて、声すらまともに聞いたことない」
「たかはし?だれ。アタシはメガネの話をしているんだよ。いつまで寝ているんだユナさんよ。もう午後だぜ」
「あかりがなにを言っているんだ。どうせ男をみるなら前林くんにしなさい」
と、白川結奈は高橋の二つ隣の席を指さした。
薄い茶色の毛先を遊ばせた前林は、数人の男女に囲まれて楽しそうにしている。
「あれがイケメンだよ、あかり。ちなみに放課後カラオケ行く約束しているからね。忘れんなよ」
目のあった白川結奈と前林が手をふりあっているのを見てあかりは
「前林はただのクソだ」と、舌打ちをした。
続く