表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

そんな日常

作者: しおん

初投稿

深夜にふとPCで言葉を殴り書きしたくてアカウントを作りました。


創作、元ネタ無、短編 に該当いたします。


私には記憶力がない。


そんな言葉から始まる小説があったらどんな内容になるのだろうか。同じ内容を何度も書き続けるのだろうか。途中で終わってしまうのだろうか。はたまた認知症のおばあちゃんの日記のようなものになるのだろうか。この一文だけでは到底内容まではわからない。まぁそれが小説だとか物語だとかのいいところだ。読者の想像力に訴えかけてくるようなそんな感覚、それがたまらなく好きだ。僕には物事を考える前に口を開く癖があるから、今回もそれだって思ってほしい。ここでの記憶力がないとはどのような状態のことを指すのだろうか。僕が今日学校への提出物を忘れたことも記憶がないと表現していいのだろうか。電車の時刻を間違えたことも、時間割を間違えたことも、お弁当を母に出し忘れたことも、この言葉で表現していいのだろうか。


「それはさすがに言い訳じゃない?」


そうかな。でも僕はこんなにも物忘れがひどいんだ。普通の子供だとしても忘れた次の日には提出物を持ってくるし、時刻表も確認するし、時間割を見て前日に準備を始める。家に帰って真っ先にお弁当箱を母親に差し出すだろう。ただ僕は何度も同じことを繰り返し、何度も周りの人を巻き込んでしまう。君も例外ではないだろう?


「でもそこが面白いんだよ」


そうやって言ってくるのは君だけだ。君だけが僕の忘れっぽい、いや記憶力がないことを面白いと表現する。君も不思議な人だよね。片親で他とは違う僕と何も変わらずに接してくれたり、忘れた教科書を見せてくれたり、お弁当を少し分けてくれたり。あれはメロンパンだったっけ。君が好きだと言っていたパン。屋上で僕が本を読んでいたら後ろから肩を叩かれた。一口分けてくれたメロンパン。あの日はご飯を買うお金を忘れていたから助かったよ。あれ以来あんなにも美味しいパンは食べたことがないかもしれない。お世辞でもなく本気で。お昼時の屋上は普段とても人気なのにその日は君と僕だけの世界に一つだけの二人きりの世界だった。蝉の音を聞きながら、日射角度55度の世界に二人きり。まるで映画に出てくる二人みたいだったなんて今では思う。


「そうかな」


まぁ映画みたいなんて言葉使ってしまったら映画研究同好会の人たちとか、それこそ映画に人生をかけている監督だとかに怒られてしまうかな。でもそれくらい僕はあの時間あの空間あの雰囲気がすきなんだ。だから今でもこうやって屋上が一番学校でお気に入りで、フェンスを背に座るのが一番落ち着く。あの日の僕の座り方。あの日あの瞬間から僕らは、なんて言葉本当に映画みたいになってしまうからやめるけど、ずっとという言葉が比喩ではないくらい一緒にいた。表現の仕方あってるのかな。




やっぱりそうだよね。国語の勉強をもっとしておけばと後悔するよ。でも僕の間違いだとか忘れものだとかを指摘してくれる君が嫌いじゃないんだ。だから僕はこれからも沢山の間違いを犯すだろうし、沢山の忘れ物をすると思うよ。残念ながら僕には記憶力が無いからね。




そんなこと言わないでくれよ。君にまで見放されてしまったらぼくはこれからどうやって生きて行けばいいのかわからなくなってしまう。ただよく小説にある「君が僕のすべてだ」とかいう表現はさすがに過大すぎるとぼくは思うけどね。何か一つの物事が自分のすべてなのだとしたら、その人は生きてはいけないんじゃないかな。その一つが全てなら、他のものが無くなってしまった世界でも生きていけるということになるだろう?ぼくには無理だ。だってもし君と二人きりの世界になって、他のものの何もかもが無くなってしまったら僕はご飯も食べられないし、家にも帰れないし、息だって吸えない。君がぼくのすべてだったとしてもね。だからぼくはこの表現が嫌いなんだ。軽々しくすべてだなんて表現ができるほど人生について軽く思っていて盲目なんだねって思うよ。


だからと言って君がいなくなってもぴんぴんして生きて行けるかと言われたらそれはそうではない。多分体調や精神へのなんらかの異常は現れるんじゃないかな。例えばぼくの記憶力の悪さが進んだり、精神疾患を発症したり、架空の君とお話とかしたり。君だってそんなぼくは見たくないだろ?ぼくだってなりたくない。だから一緒にいるんだ。君の大好きなあんぱんをかばんにいつも詰めるんだ。思い出のあの公園で食べるんだ。あの時みたいな雨が降りそうな夏の夕方に。君と一緒に。


何を言っているんだろうぼくは。また何も考えずに言葉を発している気がするよ。君が言うには、ぼくには物事を考える前に口を開く癖があるらしいけど、本当に当たっていると思う。君はすごくて敵わないな。ぼくが君よりも優れることは無いし、ぼくが完璧になることはできないから、君に見放されたらそれで終わりなのだけれど、それでも君は


ぼくのすべてなんだ

日射角度55度_秋分の日前後の太陽が差し込む角度


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ