2/2
side Girl
招き入れられたその部屋は明るく広い。
男の穏やかな様子は少女の知る彼女の母とは異なる。
不遜で傲慢で自由な女は少女の人生にも、目の前の男の人生にも影響を与えた。
そんな女はすでにこの世にいない。
だが少女は家族である男を探しに訪ねてきたのだ。
「さぁ、ここに座って。姉から君のことは生前頼まれていてね」
「母が……」
「あぁ、亡くなる前に病院から僕の元に連絡が入ってね、最後に君のことを頼まれたんだよ」
その言葉に少女の目から大粒の涙がこぼれる。
母が言ったというのは嘘だろう。
両親の離婚後、父方の祖父母に少女は育てられた。
そこで母がどんな人物かを聞いていたのだ。
そんな少女がここにきたのは誰かに愛されているという証を欲してだ。
今、目の前の男は拙い嘘を少女のために吐いてくれる。
それは紛れもない優しさだ。
母が最期に残したものが悲しみだと少女は知りたくはなかった。
時として悲しい真実よりも優しい嘘が救いとなる。
今、男の吐いた優しい嘘は少女の心の中で揺れている。
少女の胸に灯った温かな火は少女の未来を明るく照らすだろう。