第8話 異世界人って意外といるのか
「ああ、まあ、そうなるかな」
俺は風花の瞳から目を逸らしながら答える。
美少女に見られるのは慣れていない。ってか、この世界に来てから美少女に見られ過ぎだろ!朱里にしても望海にしても志乃舞にしても風花にしても。
異世界人の俺が目立つのは仕方ないけど。
「今度ぜひ異世界のお話を聞かせてください!父様が昔一度だけ異世界人に会ったと話してくれてから自分も異世界人に会って話をしてみたかったのですっ!」
興奮したような風花の言葉に俺は自分の耳を疑った。
は?異世界人に会った?
この世界では異世界トリップしてきた俺みたいな奴が時々いるのか?
「なるほどな。風花が言った以上、その武器はこの世界の物ではないようだ。賢一が異世界人である可能性は高まったな」
「しかし兄上。異世界人なんて本当に存在するのでしょうか?」
甲夜は半信半疑のようだ。
まあ、甲夜の反応の方が普通だよな。
「甲夜様。私の父様は異世界人に若い頃会ったことがあると申しておりました。父様は嘘をつく人間ではありません」
風花はすっかり俺のことを異世界人と信じたようだ。
「確かに風花の言う通りだ。風花の父親には会ったことがあるが嘘を吐くような人物ではない。着ている服もこの世界では見かけない物のようだし賢一は異世界から来たということを信じよう」
月治は俺を見ながら最終判断を下した。
ふう、第一関門は突破だ。
しかし過去にもこの世界に異世界トリップしてきた奴がいたとは驚いたな。
まあ、そのおかげで俺が異世界人だと認識してもらえたからありがたかったけどさ。
そうだ!それよりも中本先生のことも月治に聞かないと。
「月治。聞きたいことがあるんだが俺が倒れていた辺りにもう一人男の人が倒れていなかったか?」
月治は望海と顔を見合わせるが望海は首を横に振る。
「いや。俺と望海が気付いたのはお前だけだ。近くに他に人はいなかった。まさか他にも異世界人がいるのか?」
「実は俺の忍法の師匠にあたる中本真治という人物と俺は酒を飲んでいてこの世界にいつの間にか来ていたんだ。もしかしたら中本先生もこの世界に来たんじゃないかと思って」
中本先生の特徴を月治に話す。
「忍法の師匠?忍法というのはなんだ?」
「俺の国に古くから伝わる戦いとか生き残る術だ。中本先生はその継承者の高弟なんだ」
俺は簡単に説明をしておく。
詳しく説明したところで理解されないし。
「ふむ。近くの村に保護されていないか確認をとってみよう。だが賢一。もしその中本という人物がローラン帝国の軍人に見つかっていたら厄介だぞ」
「ローラン帝国?それが今この国と争っている国なのか?」
「そうだ。まあ、異世界から来たのであればこの世界のことを話す必要があるな。まずはこの世界の基本的なことから説明しよう」
月治は俺の前の椅子に座り望海たちも椅子に座って俺はこの世界の話を聞くことになった。