第43話 俺の部隊の顔ぶれが決まったな
風花と楽しくおしゃべりをしていると時間もあっという間に過ぎる。
そろそろ月治がテントに来てくれと言われた時間だ。
「風花。俺はそろそろ月治のテントに行かないとだから、また時間があったらおしゃべりしよう」
「はい、分かりました! 賢一とのおしゃべりは楽しいです!」
嬉しそうな風花の笑顔に見送られて俺は月治のテントを目指す。
月治の話って今後のことって言ってたからきっと戦のことだよな。
敵軍に何か動きでもあったのかな。
十六夜が小銃を扱えるようになってもまだ実戦をした訳ではない。
万全を期す為にも前線にでるまで訓練が必要だな。
しかし、実際の戦争は予定通りにはいかないだろう。
敵軍もこの睨み合いの時間を使って作戦を立てているだろうし。
だからこそ少しでも練度を上げておきたい。
俺は月治のテントに着くと中に入る。
「月治いるか? 時間だから来たぞ」
「ああ、賢一か。まあ、そこに座れ」
月治はテーブルの上に紙を広げて何やら考えていた様子だったが俺に気付くと椅子に座るように指示した。
俺が椅子に座ると月治は俺の顔を見る。
「実はな。今、部隊の編成を考えていたんだ」
「部隊の編成?」
「ああ。今、ここには元の部隊である華天国第二部隊と賢一が隊長を務める十六夜が駐留している」
月治の説明に俺は頷く。
「確かにそうだな」
「賢一にはまだ話していなかったが第二部隊も大きく二つの部隊に分かれていてそれぞれに指揮官がいるんだ」
へえ、この第二部隊はひとつの部隊じゃなかったってことか。
「第二部隊の本隊は私が指揮官だ。そしてもうひとつの小隊は葛城副隊長が指揮官を務めていた」
「葛城副隊長って、あの亡くなった葛城副隊長だよな?」
「そうだ。葛城副隊長が指揮官を務めていた小隊の役割は第二部隊の本隊よりも前線に立ち敵をかく乱及び敵軍の情報を本隊に報せる役割がある。それ故に本隊よりも危険が伴う」
なるほど。それは確かに危険な任務だな。
「葛城副隊長が亡くなったから今後はこの小隊の指揮官は甲夜にすることにした」
「え? 甲夜に? 甲夜はまだ若いし危険過ぎないか?」
俺は思わずそう口にしていた。
甲夜は俺より年下だ。自分より若い命が散るのは見たくない。
「賢一。甲夜は若くても成人した族長の息子だ。兵士からの信頼もある。それにこれは誰かがやらなければならない任務なんだ」
月治の言葉に俺は唇を噛む。
戦場では若いからという理由で後方の安全な場所にはいられないということだろう。
それに月治の言った通り、甲夜は族長の息子だ。
戦技の腕もかなりのものだろう。指揮官になるには適任者に違いない。
「そうだな。甲夜は適任者だと思う」
俺は自分の痛む心を我慢して同意した。
「それと十六夜の幹部指揮官についてのことだが…」
「十六夜の隊長は俺だろ?」
「もちろんだ。隊長は賢一に務めてもらう。だが賢一は異世界人でもあるし賢一を補佐する側近は必要だ」
確かに俺はこの世界のことに疎い。
補佐役は必要だろう。
「私が考えたのは隊長は賢一、側近は小隊長の夜吹、それに望海と志乃舞だ」
「え? 望海と志乃舞?」
夜吹が俺の側近になるのは分かるが望海と志乃舞は月治の側近じゃなかったのか?
「望海と志乃舞は月治の側近だろ?」
「今まではそうだったが望海と志乃舞からぜひ賢一の部隊に入りたいと申し出があってな。私もそれには賛成だったから承認することにした」
「なんで月治は二人が俺の部隊に所属するのに賛成なんだ?」
「まず望海は戦闘能力が高く賢一の護衛に向いている。それに望海は闇族の出身で闇族出身者の多い十六夜の幹部になっても反発が少ない」
俺のボディーガードも兼ねてってことか。
俺自身は望海の後ろに隠れて望海に護ってもらうことは考えないが、自分の背中を護ってくれる人物がいて共に戦えるなら確かに戦いやすいかもしれない。
「それなら水族の志乃舞はどうしてだ?」
「志乃舞は逆に闇族以外の十六夜の兵士を従わせる為だ」
「どういうことだ?」
「六部族はけして仲良しこよしという訳じゃない。十六夜にも僅かだが闇族以外の兵士がいる。彼らに闇族が優遇されているという不満を持たれると厄介だ。裏切り者が出ないとも限らない。だから志乃舞にはそういった兵士の不満を解消する役目を与えるんだ」
味方の裏切りを警戒するのはどこの世界の軍隊も一緒なんだな。
「そうか。華天国軍側も不安分子はあるってことか。…分かった。側近は夜吹と望海と志乃舞にする」
「ああ。それに武器のことなら風花に、医療部隊が必要なら朱里に、食糧関係は春香に直接賢一が必要とあれば頼んでいいから」
「分かった。すると第二部隊の本隊は月治が隊長、小隊は甲夜が隊長、そして十六夜は俺が隊長ってことか」
「そういうことだな。そして各部隊との連絡係は琴音にしてもらう予定だ。このことは私から他の者に伝えておく。それと近々野営地を移動するからそのつもりでいてくれ」
「ああ」
月治との話し合いが終わり俺は月治のテントを出た。
さて、俺の部隊の顔ぶれも決まったし明日からは本格的に戦闘準備だな。




