第41話 鷹使いは偵察に使えるな
「では夜吹はこのまま十六夜に小銃の撃ち方を教えてくれ。それと賢一は夕方になったら俺のテントに来て欲しい。これからのことで話があるんだ」
月治が俺と夜吹に指示をする。
「分かった。夕方になったら月治のテントに行くよ」
俺が返事をすると月治は自分のテントの方に戻って行った。
望海や志乃舞や甲夜たちもその月治の後について行く。
「それじゃ、賢一。俺は十六夜の奴らに武器の使い方を教えておくからな」
「ああ、よろしく。夜吹」
十六夜への小銃の使い方については夜吹に任せておけばいいだろう。
俺は少しテントで休むかな。武器の召喚には体力使うから休める時に休んでおかないとだし。
自分の小銃を肩にかけて俺は自分のテントに戻ろうとした。
すると残っていた風花が俺に声をかけてくる。
「賢一! 時間があるなら私のテントに来ませんか? 賢一の世界のことも教えて欲しいし」
風花は瞳をキラキラと輝かせて俺を見る。
そういえば風花は俺が異世界人であることに一番興味を持ってたよな。
異世界の話を聞きたい気持ちは分かるし風花とおしゃべりするのもいいか。
俺だってここが戦場なのは分かっているが女の子とおしゃべりして楽しい時間を過ごしたい。
その女の子が自分に好意を持っている相手なら尚更だ。
「いいぜ、風花。俺も休憩したいと思ってたし」
「やったあ! じゃあ、行きましょう!」
子供のように無邪気に喜ぶ風花は年相応の少女にしか見えずとても軍隊の武器調達部隊長とは思えない。
そのことが俺の心に強い誓いを刻ませる。
必ずこの戦いに勝って風花のような少女が戦場で戦わない世界を取り戻したい。
そして彼女たちとムフフなことしたい。い、いや、これは今は余計な欲望だな…まだ誰を嫁さんに選ぶか決まってないし。
俺の頭に邪念が浮かんでいることなど知らずに風花は俺の手を取り引っ張って行く。
その繋いだ風花の手が予想よりも柔らかくて俺は年甲斐もなく胸がドキドキする。
落ち着け、俺。
たかが手を繋いでいるだけだろ!
そこへ上の方から「ピーッ」という甲高い鳴き声のようなモノが聞こえた。
ん? 何だ?
空を見上げると一羽の鷹のような鳥が飛んでいる。
「あっ! レイが戻って来たわ」
風花は空を飛んでいる鳥を見てそう呟いた。
そして俺の手を離し腰につけていた袋から長い手袋を取り出し自分の手に装着する。
さらに小さな笛のようなモノを取り出しその笛を吹いた。
『ピー! ピッピッ!』
笛が音を出すと空を飛んでいた鳥が俺たちの所に急降下してくる。
「危ない!」
思わず自分の頭を腕で庇って目を瞑ると「バササッ」と大きな羽音が聞こえた。
そして風花の笑い声がする。
「フフフ、大丈夫ですよ、賢一」
「え?」
俺が目を開けると風花の手袋をした腕に一羽の鷹がとまっていた。
鷹の鋭い視線が俺に突き刺さる。
こんな間近で鷹を見たことがない俺は内心ビビッていた。
しかし風花の手前鷹を怖がっているなんて姿は見せられない。
俺はグッと腹に力を入れて動揺を隠して風花に尋ねる。
「こ、この、鷹は?」
「この鷹は私が飼っている鷹のレイです。私は風族の『鷹使い』なんです」
鷹使い? 何だそれ?
「た、鷹使い? 鷹使いって何のことだ?」
意味が分からず風花に聞くと風花は「あ!」っという表情になった。
「賢一はまだ華天国の部族のことはあまり知らないんですよね。説明が足りなくてすみませんでした。『鷹使い』というのは風族の特殊能力なんです」
「特殊能力って鷹を飼うことがか?」
確かに鷹を飼うのは普通の鳥を飼うより難しいかもしれないが特殊能力と呼ぶほどのものなのかな。
「いえ、鷹を飼うだけでなくその鷹と意識を繋げて鷹の見ているモノを自分も見れる能力を持つ者を風族では『鷹使い』って言うんです。他の部族にはない風族の特殊能力なんですよ」
鷹の見ているモノを自分が見れるだと?ってことは上空からの景色を風花は見れるってことか?
「それって風花は空から見た地上の様子をこの鷹を使って見えるってことか?」
「はい。そうです。だからレイを使って敵軍の動きを見張る仕事もしています。でもレイもずっと飛べる訳じゃないので敵の様子を見張るのにも限界はありますけど」
「短い時間なら上空から敵軍の動きを見れるってことか?」
「そうですね。ただ敵軍の弓でレイを狙われても困るから弓の届かないかなりの高さからの偵察になるので全体的な軍の動きしか分かりませんが」
「いや、それだけでも戦いをする時にはとても役立つよ!」
敵の部隊がどのような配置になっているか分かるだけでも戦場では優位に立てる。
この『鷹使い』の能力も使い方次第でとても助かる能力だ。
あ、そういえば昔の格闘ゲームのキャラに鷹を使うやつがいたな。
風花は鷹を使った技とかあるのかな?
「賢一に役に立つって言われると嬉しいです!」
嬉しそうに風花の瞳がキラキラと輝く。
う! 抱き締めてキスしたい!
俺が風花を抱き締めたい衝動に駆られて近付こうとすると鷹のレイが「ピーッ」っと警告のように鳴いた。
その声で俺は我に返る。
いかんいかん! 戦いが終わるまで風花たちに手を出すなよ、俺!
悶々とした気持ちになった俺だったが軽く頭を振って邪念を振り払う。
そんな俺の様子を風花は不思議そうに見ていた。




