第40話 夜吹はコピー機か?
「一通りお互いの力も確認できたし、賢一、十六夜の兵士たちに銃の使い方を教えてやってくれ」
「分かったよ、月治」
月治の言葉に俺は頷く。
戦況がいつ動くか分からない以上、時間を無駄にするわけにはいかない。
「それならまずは俺に教えてくれよ、賢一」
夜吹が俺に声をかけてきた。
「いいぜ。まずは夜吹からだな」
俺は小銃の入った箱の中から夜吹のための小銃を一丁取り出す。
だがそこで俺は思った。
こうやって一人一人に銃の撃ち方を教えるのはいいがそれだと十六夜の全部の兵士に教えるのに相当な時間がかかる。
銃という物が存在しないからしっかりと教えないと身に着かないだろう。
何とかして簡単に早く兵士たちに銃や武器の扱いを教えることはできないだろうか。
しかし銃の取扱説明書を書いたとしてもこの世界の文字とは違うだろうから兵士たちに読んで理解はできないだろう。
仕方ない。とりあえず地道に教えるしかないか。
「この先端の所にあるのが照星、そして後ろのこれが照門。照門を覗き込んで照星を合わせて狙うんだ」
まず簡単に小銃の照星と照門を説明する。
「夜吹。俺と同じように銃を構えてみろ」
「了解」
俺が銃を構えると夜吹も同じく銃を構える。
元々夜吹は他の者の動きや技をコピーできる特殊能力があるので完璧に俺と同じように銃を構えることができているようだ。
「まずは単発の撃ち方だ」
俺は銃の切替軸を単発の「タ」にして撃ち方を教えながら先ほどと同じく的にした石を撃つ。
夜吹も俺の真似をして続けて的の石を狙って撃った。すると見事に命中する。
さすが俺の技を完全にコピーできる夜吹は一度で覚えたようだな。
「へえ、なかなかこの銃ってやつは威力もあるしいい武器だな。これなら遠くから楽に敵を倒せるし」
「そうだろ? 夜吹は俺の技を真似できる特殊能力があるから簡単にできるだろうが他の十六夜の兵士には一人一人教えなければそう簡単には覚えられないぞ」
「あ? そんなことしてたら時間がかかるじゃないか」
「それはそうだが、他の兵士は夜吹のような特殊能力が無いから仕方ないだろ?」
当然のごとく俺がそう言うと夜吹は少し考えていたが一人の兵士を呼び銃を持たせる。
何をする気だ?
俺が不審に思うと夜吹は俺に向かって手を差し出す。
そしてもう片方の手は銃を持った兵士の頭に触れる。
「賢一。俺の手を掴んで銃の撃ち方を頭に思い描いてくれ」
「え? 何をするんだ?」
「いいからやってみろ」
「あ、ああ」
夜吹に言われた通りに俺は夜吹の手を握り89式小銃の撃ち方を頭に思い描いた。
その瞬間僅かに夜吹の身体が温かくなる。
「分かったか?」
「はい! 夜吹小隊長!」
「やってみろ」
「はい!」
何が分かったんだ? この兵士は。
するとその兵士は89式小銃を構えて単発で銃弾を発射した。それだけじゃない。
「単発」の後に「三連射」と「連射」も完璧に銃を操作して銃弾を放った。
なんだ!? いったい何で小銃の扱いが完璧にできるんだ!?
「おい! 夜吹! 何でこの兵士は小銃の撃ち方を完璧に理解してるんだ?」
「俺の能力の応用さ」
「能力の応用? それって一度見た技を真似できるってやつか?」
「そうだ。賢一が頭で考えたモノを俺の特殊能力で自分の頭に写し俺の知識として覚える。それを霊力でこの兵士の頭の中に同じものを写したのさ。俺の人の技を真似できる特殊能力と霊力の合わせ技だ」
マジか! それならイチイチ手取り足取り武器の操作方法を教えなくても夜吹の協力があれば短時間で十六夜たちに武器の操作方法を理解させることができるぞ。
「それなら十六夜たち全員にその方法が使えるのか?」
「ああ。これはたいした霊力は使わないから十六夜の兵士たちぐらいの人数ならこの方法ですぐに教えられる。同じことを教えるだけなら賢一がいなくても俺だけで今の知識を十六夜たちに教えることが可能だ」
それってまさに「コピー機」じゃないか。
なんて便利な能力なんだ。それならこれから十六夜に教える時は夜吹に教えるだけでいいから俺は他の作業ができるし。
「それは助かる! 夜吹、ぜひ協力してくれ!」
「かまわんさ。隊長に従うのは小隊長として当然だからな。賢一を隊長と認めたのは俺自身だし」
夜吹はどこか渋々ではあるが俺の頼みを聞いてくれるようだ。
この夜吹は性格に少し難はあるが頼もしい仲間になりそうだ。
よし!これなら小銃の使い方については今日中に十六夜に教えられるな、助かったぜ!




