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第4話 間接キスごときで動揺するなよ、俺

「待たせたな。賢一。薬を持ってきたぞ」


 その声で俺は目が覚める。

 ベッドの脇にはさっきの朱里って少女が手にカップを持って立っていた。


「薬?」


「頭の傷に効く『朱里様特製薬草茶』だ」


 俺は朱里からカップを受け取った。が、カップの中身を見て思わず背筋がゾクリとする。


 カップには紫色の液体が入っていた。

 よく悪い魔女が鍋で煮込んでいるような液体に似ている。


 これは毒か?


「早く飲め。体の疲労回復にもなる」


 朱里は俺に勧めてくるがハッキリ言って飲みたくない。


 こんなの飲んだら腹壊すだけじゃすまないんじゃ……。


 すると朱里は何を思ったのか俺のカップを一度自分の手に取り返すとカップに口をつけて一口飲んだ。


「ほら、毒じゃないだろう?分かったら飲め」


 再び俺にカップを渡す。

 俺がなかなか飲まなかったから朱里は俺が毒が混ざっているのではないかと疑っていると思ったようだ。


 ここまでされたら飲まないわけにはいかない。

 覚悟を決めろ、俺。


 俺はグッとカップの中身の紫の液体を飲む。

 すごい味を覚悟していたが液体の味はプロテインをグレープジュースで割ったような味だ。


 うん、これなら飲める。


 俺はごくごくと飲み干した。


 その様子を見ていた朱里がニッコリと笑う。

 その笑顔に俺は思わず見惚れてしまった。


 なんて可愛いんだ。


 そして俺はカップを見て気付いた。


 こ、これは間接キスじゃないか!

 いやいや間接キスごときで動揺してどうする、俺。しっかりしろ!


 俺は朱里にカップを返す。

 そして俺が朱里にこの世界のことを聞いてみようと思った時に入り口の布が開きもう一人女性が入って来た。


 俺はその人物を見てまたしてもポカンと見惚れてしまう。


 黒い髪は肩より少し下くらいで瞳は黒い。

 体には鎧を着ている。鎧と言っても体が動きやすいような軽装なものだ。

 腰には剣を提げている。


 そして豊満な胸が目に飛び込んで来た。

 顔立ちは目はちょっと鋭いが朱里に負けないくらいの美少女だ。


「私は望海のぞみだ。お前が賢一だな?体調はどうだ?」


 俺は望海という名前を聞いて先ほど朱里が言っていた言葉を思い出す。


 確か俺をここに運んだのは月治という人物と望海という人物じゃなかったか?


「俺が藤枝賢一だ。賢一でかまわないよ。あなたが俺を助けてくれたのか?」


「ああ。月治様と偵察に出ていた帰りに倒れている賢一を見つけてな。月治様が連れて帰るというので連れて来たんだ。しかし、運が良かったな。通りかかったのがローラン帝国軍の者だったら殺されていたぞ」


 望海はフフッと微笑んだ。

 俺は「殺されていた」という言葉に反応する。


 やはりここは戦場なのかもしれない。

 余計なことは話さないほうがいいかもしれないが、この世界のことを知らなければ日本に帰る手段も分からない。


 俺は慎重に答える。


「助けてくれて感謝する。体調はもう大丈夫だ。それと俺を助けてくれた月治様という方にお会いしたいんだが、会わせてもらえないか?」


「ああ。それはかまわない。朱里、彼を動かしても問題ないか?」


「頭の傷だけだから大丈夫だ。ただ頭を打ったのか言動に怪しい部分があってな。一時的な記憶障害かもしれない」


「そうか」


 いやいや記憶障害なんかじゃないから。

 異世界に来て混乱してるだけだからさ。


 心の中で俺は朱里に反論する。


「ん?賢一。いつの間に服を着たんだ?しかも変わった服だな」


 朱里は俺が迷彩服を着ているのを今になって気付いたようだ。


「これは……そうだな、俺の地元の民族衣装なんだ」


 俺はなんとか誤魔化す。

 自衛隊の迷彩服だなんて言っても通用しないし、話がややこしくなるだけだ。


「そうなのか。森の中ではその服は目立たなそうだな。軍服に採用してもいいくらいだ」


 軍服と聞いて思わず心臓がドキリとする。


 もしかしてスパイと疑われた?


「なんにせよ。動いて大丈夫なら月治様の空いている時間に案内してやろう。もう少し待っていてくれ」


 そう言うと望海と朱里は部屋を出ていった。


 俺も月治という人物に会うために準備する。

 さっき取り出したレッグホルスターを取り出して身に着けた。


 最悪自分の身を守らないとな。

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