第37話 俺の部隊名を決めたぞ
「夜吹。俺はお前たちが持つような霊力は持たないから夜吹も霊力は使わず純粋に体術だけで勝負してくれないか?」
「いいぜ。お互いに身体一つでの勝負だ。それで文句はないな?」
「ああ」
ここは「波動」をメインに忍法体術でいくか。
俺は肩甲骨を回し始めた。
対する夜吹は構えという構えをとっていない。
刃隠流忍法の体術に構えはあるのだが、稽古の一つの乱取りでは基本的に構えない。
どことなく中本先生の雰囲気に似ている。隙がなかなか見えない。
こいつ、かなりできるな。油断できない。
だが、先生ほどじゃない。
次の瞬間夜吹が踏み込んで俺の顔に拳をぶつけてくる。
その夜吹の腕を掴み俺は波動の力を使って夜吹を投げ倒す。
すかさず腕を極めようとする。
だが、倒れたと思ったのに夜吹は足を跳ね上げてきた。
一瞬焦ったが、俺はしっかりとかわす。その夜吹の身のこなしは見事だった。
夜吹はそのまま転がり、素早く立ち上がる。その動きは忍法体術の体変術に似ていた。
「へえ、面白い技を使うんだな。賢一は」
夜吹はニヤリと笑い今度は夜吹自身が自分の肩甲骨を俺と同じく回し始めた。
しかもいい感じに肩甲骨が回っている。
こいつ、俺の技を一目見て盗みやがった!
その動きはしっかりと波動の動きだった。
「賢一。さっき月治が言ってたろ? これが俺の特技さ。俺は一度見た技や技術は全て再現できる」
なるほど、そういうことか。
だが、甘いぜ。波動はただ動きをコピーしただけじゃ本当の力は出せないことを教えてやる!
今度は俺から攻撃する。体術の突きだ。
体術の突きは最小の動きで突いてかわしにくいのだが、夜吹はかわすと同時に俺の腕を掴んだ。
さらに波動の力で俺を倒そうとする。
けれど俺は踏み止まって倒れない。
夜吹の波動ではまだ十分に波動の力を全部出し切れていないのだ。
その隙を見て今度は俺が夜吹の腕を掴み波動の動きで引き倒そうとするが、今度は夜吹が堪える。
俺はそれでも放さずに夜吹の腕を別方向に曲げていき、抵抗する夜吹の力を流しながら次々と技を変化させていく。
その動きについて行けずに夜吹は地面に倒された。
同時に逃げられないように夜吹の腕に関節技をかける。
「ぐっ!」
夜吹は苦しそうに呻く。
「夜吹。お前の波動を再現する能力は凄いが本物の波動を覚えるにはたとえ夜吹と言えども時間がかかると思うぜ。降参するか?」
「くっ!」
俺はさらに関節技で締め付ける。
「わ、分かった! 降参する!」
夜吹の声で俺は関節技を解いた。
腕を擦りながら夜吹は俺を見た。
「負けは認めるさ。だが、この波動という技は面白い技だな。まだ賢一のようにはいかないが僅かな力で相手を倒せることが分かったぜ」
「それが分かるだけでも夜吹は優秀な男だよ。さすが小隊長だけのことはある」
本来なら波動の動きは真似するだけでも難しいが夜吹が本当に波動を身に着けたら俺でも敵うか分からないほどの実力を俺も夜吹から感じた。
「約束通りに俺の部隊は今から賢一の部隊だ。そして隊長は賢一。俺は側近の小隊長になる。どうせなら自分の部隊に名前を付けたらどうだ?」
「部隊の名前をか?」
「そうだ。華天国第二部隊の賢一の部隊と呼ぶのはなんか面倒だろう? 一言で部隊名を言えた方が楽だと思うぜ」
それもそうだな。何がいいかな。この国は日本的な名前を使うから……そうだ! 十六夜というのはどうだろうか。
「それなら「十六夜」って部隊名にしたいな」
「いいじゃないか。月治、それでいいだろ?」
気付くと月治が俺と夜吹の側にいた。
「ああ、かまわない。これからは賢一の部隊は「十六夜」と呼ぼう」
よし! これで自分の部隊を手に入れることはできたな。
「それなら次は俺たちの技を披露するか」
「夜吹たちの技を? だが今、夜吹は自分は相手の技や技術を再現できるのが特技って言ってなかったか?」
まだ他にも夜吹の特技があるのか?
「それは俺の特技だろ。俺の弟の分隊長たちの特技も見ていた方がこれから一緒に戦うんだからいいだろ?」
それもそうだな。自分たちの戦力がどのくらいかを知るのは大切なことだよな。
戦力によって戦い方は変わるだろうし少なくとも分隊長の三つ子たちの特技は知っておいた方がいいだろう。
「分かった。それじゃあ、見せてくれるか?」
「ああ。おい、天狼、銀狼、玄狼。お前たちの実力を賢一に見せてやれ!」
『はい!』
三つ子はいつものごとく揃って返事をする。
え~と、こいつらを見分けるのは装備している武器を見るのが有効的なんだよな。
「では、俺からやります」
短剣を手にした男が前に出てきた。
こいつは短剣を武器にしてるから天狼だな。




