第34話 それって報告事項なのか?
夜吹たちとはまた明日改めて合流することにして俺は自分のテントに戻った。
寝る準備をしてベッドに横になるが小銃をすぐに使えるようにベッドの脇に置き、拳銃は枕元に置いておく。
春香が襲われて、ここが華天国軍の野営地であっても完全な安全地帯という訳ではないことを実感した。
そして朱里に連れられて行った春香のことを思う。
今夜は朱里が一緒に寝てくれるはずだから大丈夫だとは思うが戦場にいる限りまた危険な目に合う可能性はある。
戦場にいる者は常にその恐怖と戦っているのかもしれない。
俺は自分の手を見た。
初めて敵を撃った時のことが頭に蘇り俺はギュッと拳を握った。
人を撃った事を後悔はしていない。俺は大切な者を守ったんだから。
これから戦が激しくなればより多くの敵を倒すことになるだろう。
だが敵を撃つことを躊躇ってはいけない。その一瞬の躊躇いが命取りになるんだ。
本物の戦は自衛隊の訓練とは全然違う。
訓練は事故以外では人は死なないしいずれ終わりが来る。だが本物の戦は簡単に人が死ぬしいつ終わりなのか誰にも分からない。
その間ずっと緊張状態が続いたら心身共に持たない。
そういえば俺の友人の米軍の特殊部隊の奴らは戦場でのベースキャンプにいても息抜きにゲームとかやってたと話していたことがある。
戦争を題材にしたゲームなどもやっていて、そんなのやっていて嫌にならないかと聞いたら戦場とゲームは別と言っていた。
他にも某有名な魔法少女アニメを観ていたとかというのも聞いた。
その気持ちが今の俺にも分かるがこの世界にはゲームもアニメも無いから俺は自分の頭の中で少しでも楽しいことを考えようと目を閉じた。
すると頭に浮かんできたのは俺のことを好きだと言ってくれた少女たちの姿だ。
望海の一番の特徴は大きな胸だよな。あれだけの巨乳をしていると鎧を着ていても分かるぐらいだしな。
いつかあの巨乳を直に拝みたいもんだ。
俺は元々女好きなので妄想はどんどん膨らんでいく。
スレンダーな身体だが志乃舞も悪くないよな。スラリとした手足は魅力的だしなによりあの銀髪が美しい。
水族は銀髪のようだが志乃舞の髪はサラサラで他の水族とは全然輝きが違うんだよな。
それに春香のあの明るい笑顔も可愛いよな。飯をみんなに配っている時に見せる笑顔見るだけでなんか元気が出るというか。
身体だって出るところは出てるし女としての魅力も十分にあるしな。
朱里のいきなり子作り宣言には驚いたが朱里も美人だよな。あの眼鏡の奥の赤い瞳を見ると肉食獣を思わせるが積極的な女も俺は嫌いじゃないしな。
ああ、本当に子作りしていいならしたいぐらいだぜ。
風花は可愛いの一言だよなあ。小柄な身体が動く感じが小動物みたいだし。
身体はまだ成長途中かもしれないがそれはそれでグッとくるしな。
俺の頭の中は少女たちとのあんなことやこんなことが妄想として広がっていく。
あれ?でも可愛いといえば俺に告白はしてきてないけど琴音も見た目はお人形みたいに可愛いんだよな。
あの「ちわー」っていう言葉使いにはちょっと驚いたが黙っていればめっちゃ可愛いよなあ。
「う~ん、琴音もなあ……」
知らずに俺は琴音の名前を呼んでいた。
「なんすか? 賢一」
「っ!?」
自分のすぐ近くで声が聞こえて俺は驚いて飛び起きる。同時に枕元の拳銃を手に取っていた。
するとベッドの横に琴音が立っている。
「琴音!? どうしてここに!?」
テントの入り口が開く気配なんてしなかったぞ! どうやって入って来たんだ!?
「いえ、賢一に報告したいことがあったので会いに来ました」
「どうやって中に入ったんだ? 気配なんてしなかったのに!」
「そりゃあ、私は乱波ですから気配を消して侵入するぐらいは朝飯前っす!」
「俺のテントに入るのにイチイチ気配消すなよ! 敵かと思っただろ!」
ああ、びっくりしたぜ。頭で少女たちのこと妄想していたとはいえ、こんな近距離にいても気付かないなんて俺も不覚だな。
敵だったらあっさり殺されてたかも。
「すいやせんでした。これからはちゃんと声をかけて入ることにしやっす!」
悪びれた様子もなく琴音は答える。
「でも私に気付かなかったのは賢一も何かに気を取られていたのでは?」
うっ! 鋭いとこ突いてくるな。だけど少女たちとのムフフを想像してたなんて言えないしな。
「いや、ちょっとこれからのことで考えてただけだ……」
「なるほど。彼女たちのことを妄想してたからここが反応してたんですね」
「へ?」
琴音は俺の股間を指差す。
少女たちのことを妄想してた俺は気付かないうちに股間が反応して大きくなってたようだ。
ズボンは穿いていたが股間の部分が大きくなっているのが分かる。
「い、いや! これはだな! 単なる男の生理現象で…」
慌てて俺は自分の下半身を毛布で隠した。
うわあ、恥ずかしいとこ見せちまったな。
琴音の奴、引いたかな。
恐る恐る俺が琴音を見ると琴音は涼しい顔をしている。
「大丈夫っす。誰にも言いませんから。乱波は口が堅いんっす」
「はあ。まあ、それなら他の奴には言わないでいてくれ。琴音」
「了解しやした。賢一のこと好きな彼女たちには言いやせん」
へ?琴音って今、「賢一のこと好きな彼女たち」って言ったのか?
俺が複数の少女たちから告白されていることは誰にも言ってないのに。
「あの、すまんが、俺のこと好きな彼女たちって……」
「望海、志乃舞、風花、春香、朱里っす。この五人から賢一は告白されてますよね?」
「な、なぜ、それを!?」
驚愕に目を見開く俺に琴音は得意そうな笑顔でニコリと笑みを浮かべた。
「乱波の情報収集能力を舐めてもらっては困りやす。賢一が中本先生と話し合ってる間に部隊の中を調査して情報収集しやした」
マジか! そうだった。琴音は諜報関係の仕事をしてたんだった。
琴音って優秀な奴なんだな。
なぜか俺は驚きを通り越してその能力の凄さに感心してしまった。
まあ、バレてしまったのは仕方ない。この件は琴音が黙っていてくれれば問題ないはずだ。
それよりさっき俺に報告があるって琴音が言ってたよな。
「琴音が優秀な乱波だってことは認めるよ。それで俺に何か報告する話があったんじゃないのか?」
「はい! 私も賢一が好きなことを報告に来やした!」
「へえ、俺が好きなことを報告にねえ……はあ!? 俺が好きだと!?」
「はい! 先ほど春香を労わっていた賢一の優しさに惚れやした! あの状況では的確な状況報告が何よりも求められるのですが、それよりもその人物の受けた心の傷を心配する優しさは素晴らしいです! なので私も賢一に癒されたく思い結婚相手に立候補します! 以上が今夜の報告です! ではおやすみなさい、賢一」
言いたいことだけ言って颯爽と琴音はテントを出て行った。
「嘘だろ……琴音も?……っていうかそれって報告事項なのか?……」
俺はしばらく呆然としていた。




