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波動~自衛官の俺が異世界の華天国を護るために戦った理由(わけ)~  作者: 脇田朝洋


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第31話 春香が無事で良かったぜ

 中本先生との話が終わると既に夜になってしまった。


 いけね。月治たちに中本先生を紹介しておかないと中本先生が不審者として捕まったら困るよな。


 野営地に見知らぬ者がいたらそれは不審者以外の何者でもない。

 ローラン帝国軍だって華天国軍の情報は欲しいだろうし偵察の兵士がやって来る可能性もある。


「先生。今からこの第二部隊の隊長の月治に会ってくれますか?」


「私はかまわないよ」


 俺は小銃を持って中本先生と月治のいるテントに向かう。

 二人で月治のいるテントに向かっていた時に森の茂みの部分がガサッと動いた。


 何だ? 動物でもいるのか? それともまさか敵か?


 慌てて俺がセレクターを単発の『タ』に切り替えて小銃を構えると同時にさらに茂みが動いて人影が見える。

 月明かりに浮かび上がった人影は三人だ。


「うんん!離して!んぐっ!」


「静かにしろ!」


 あの声は! 春香だ!


 人影の一人は春香だった。

 そして他の二人は男で一人の男が春香の口を手で塞ぎながら春香の首に短剣のような物を押し付けている。


 その男の服装は華天国軍の人間が来ている服装ではない。

 俺は瞬時に状況を理解する。


 春香が何者かに襲われているのだ。

 おそらく男たちはローラン帝国軍の兵士に違いない。


「動くな! 春香を放せ!」


 俺は小銃を向けて春香を襲っている男たちに叫んだ。

 だが男たちは俺に銃を向けられても怯まない。

 おそらくそれは小銃を見たことがないからだろう。


「来るな! 近付いたらこの女を殺すぞ!」


 自分たちが見つかったことに気付いて男の一人が春香の首に短剣を押し付けたまま逃げようとする。

 このままでは春香が敵に連れて行かれてしまう。


 そんなことさせるか!


 だが春香を人質に取っている男と春香の距離が近過ぎて狙いを外したら春香を傷つける可能性がある。


 クソ! どうすればいい? 落ち着くんだ、俺。


 散々自衛隊で銃の訓練は受けた俺でも実際に人を撃つのは初めてだ。

 俺は緊張する身体を落ち着かせるために深呼吸をする。


 そして相手の隙を狙う。

 その時、ヒュッと風を切るような音が聞こえた。 


「ぐわ!」


 春香の首に短剣を突きつけていた男の手から短剣が落ちる。

 中本先生の棒手裏剣が男の手に突き刺さったのだ。


「今だ! 賢一くん!」


 さすが中本先生! 手裏剣扱わせたらプロだ!


「春香! 頭を下げろ!」


 俺が春香に向かって叫ぶと春香が自分の頭を下げた。

 その瞬間、俺は小銃を発砲する。


 ダンッ! ダンッ!


「ぐわああ!」


 俺はダブルタップで発砲した。

 発射された二発の銃弾が男に命中する。

 撃たれた男は胸から血を流し倒れた。

 もう一人の男はそれを見てヒラリと身を翻し茂みに逃げ込む。


 俺はその男に狙いを付けようとしたが男が姿を消す方が早かった。

 敵もそれなりに訓練されている人間のようだ。


「待てコラッ!!」


 つい言葉が荒っぽくなる。

 小銃を持ちながら逃げた男の後を追おうとする俺に中本先生の鋭い言葉が聞こえた。


「賢一くん! 深追いするな! それより今は彼女の保護を!」


 中本先生の言葉で俺も冷静さが戻ってきた。


 そうだ。まだローラン帝国軍の情報がよく分からないのに敵を深追いして自分がピンチに陥ったら大変だ。

 俺には華天国軍を必ず勝利させないといけない使命があるのだから。

 まずは春香の無事を確認しないと。


 そして俺は辺りを警戒しながら春香に近付いた。

 セレクターは安全装置の『ア』にしておく。


「春香! 大丈夫か?」


「賢一! 怖かったですぅ!」


 涙目になりながら春香は俺に抱きついてきた。


 そうだよな。ここが戦場でも殺されそうになって怖くない人間なんていないよな。

 良かった、春香が無事で。

 俺も初めて人を撃ったし。これが戦争なんだ。


 俺は春香を安心させるように春香の頭を撫でながら自分自身も落ち着かせる。

 初めて人を撃った俺は自分が思う以上に緊張していたようだ。


 春香の頭を撫でる自分の手が僅かに震えていることに気付く。

 戦争で敵を倒すために敵を撃つのは当たり前のことだ。


 だが現実に人を撃つとその重みを感じる。

 しかし俺に後悔はなかった。


 なぜなら俺が敵を倒さなかったら自分に抱きついている春香の命がどうなっていたか分からない。

 春香を始め自分の大切な者たちを守る為なら俺はこれからも銃を取ることを選ぶ。


 戦で戦う者にはそれぞれ自分なりの想いがあって戦うのだろう。

 それなら俺は自分の大切な者たちの為にこれからも戦う。


 俺は自分に誓うように自分に抱きついている春香を抱き締めた。

 春香の温かい身体が彼女が生きていることを俺に伝えてくる。


 そうだ。彼女たちを失わない為にも俺は戦うんだ。


「賢一! 今の音はなんだ!?」


 銃声を聞いて華天国の兵士が集まって来た。

 その中には月治もいたので俺は月治に話す。


「今の音は俺が発砲した小銃の音だ。それより敵らしき者が春香を連れ去ろうとしてたんだ」


 月治は俺が小銃で撃って倒した男を確認している。


「こいつはローラン帝国軍の者だな。しかしこれが賢一の武器の「銃」の威力か。たいしたものだ」


 銃の威力を確認した月治は俺の方を見た。

 その表情には驚きが宿っている。


 そりゃ、初めて銃の威力を見たら驚くよな。

 でも月治もこれでローラン帝国軍との戦いで俺の武器が有効だということが実感できただろう。


「春香がケガしてないか朱里に診てもらおう。詳しい話をしたいから俺のテントへ行こう、賢一。ん?この者は?」


 中本先生に気付いた月治が不審そうな顔をしたので俺は慌てて説明する。


「この人が俺の師匠の中本先生だ。今から月治たちに紹介しようと月治のテントに向かうところだったんだ」


「そうか、この人が。それならあなたも私とテントに来てください」


「分かりました」


 中本先生が頷くと月治は見張りの強化を部下たちに告げて歩き出す。


 俺は春香と中本先生と一緒に月治のテントに向かった。

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