第30話 忍者の先生には最強チート能力だ
俺たちは第二部隊の野営地に戻って来た。
「悪い、琴音。中本先生と少し二人だけで話したいからしばらく俺のテントで中本先生と二人きりにしてくれないか?」
「分かりやした! 月治様には中本先生を無事に野営地に連れ帰って賢一のテントにいること報告しておきます」
「頼むな。中本先生と話が終わったら月治たちにも中本先生のこと紹介するから」
「はい」
琴音が俺たちから離れたので俺は中本先生を自分のテントに案内する。
「先生。こちらへどうぞ」
「ふむ。お邪魔するよ」
テントに入った中本先生に椅子を勧めて俺は今までのことを中本先生に話した。
月治たちに助けられたこと。そして華天国がローラン帝国に攻められているのでそれを助けたいと思っていること。
でも一番重要なことは元の世界に帰れる可能性があることだ。
中本先生は黙って俺の言うことを聞いていた。
「なるほど。賢一くんの話でいくと我々が元の世界に戻るにはその華天国の女王陛下の力が必要だということだね?」
「はい。俺が聞いた限りではそれしか方法はないかと。ただそれも絶対に帰れるという保証はありませんが…」
四暗も「可能性はある」という言い方しかしなかった。
しかしそれでもその言葉は俺には希望を持たせるに十分な言葉だ。
戦場では希望を最後まで捨てるなと俺は習った。
どんな絶望的な状況でも希望を捨てたら終わりだと。
「だが可能性があるなら賢一くんの言うとおりに女王陛下に頼んでみることはいいことだよ。私も家族がいるからできれば日本に帰りたいしね」
そこで俺はハッとした。
そうだ!中本先生には奥さんとお子さんがいる。
このまま日本に帰れなかったら中本先生は家族に会えないことになる。そんなの辛すぎる。
俺にも家族はいるが自分自身の妻子はいない。
もし俺が中本先生なら妻子の為に何がなんでも日本に帰りたいだろう。
「先生。帰れる可能性に賭けてみましょう!」
力強く俺が言うと中本先生は頷いた。
「そうだね。自分たちの力を最大限に利用して日本に帰るように努力しよう。そのために華天国が戦で勝利しなければならないなら私も微力ながら手伝わせていただくよ」
中本先生が味方についてくれたら百人力だぜ!
あ、そうだ。先生には俺が陸上自衛隊の武器等を召喚できる能力が身に着いたことも話さないとな。
「先生が味方してくれるのはとっても嬉しいです。それと実は俺はこの世界に来てから妙な力がついたみたいで…」
「妙な力?」
「はい。陸上自衛隊に関係する物を召喚できる力です。例えば、89式小銃出ろ!」
俺が言葉を発するとポポポンッという音と共に89式小銃が出てくる。
「おお、これはすごいね」
「はい。なのでこの力を使って華天国に助太刀しようかと。華天国と争っているローラン帝国は兵士の数は華天国より多いそうですが自衛隊の武器を駆使すればその戦力差を埋めれると思うんです」
「うん。それはいい考えじゃないかな。それに実は私にも妙な力がついてしまったようでね」
「え?先生も?」
まさか、中本先生にも何かチート能力が身に着いたのか?
俺に能力があるんだから同じ異世界転移した先生にだってチート能力がついても不思議ではない。
「私のはこれだよ。棒手裏剣出ろ」
ポポポン!
目の前の小さなテーブルに棒手裏剣が出てきた。
すげえ!中本先生も召喚能力があるのか!?
「私の場合は忍者に関する物を召喚できるようだ。最初に自分の身を守るためにこれがあったらと口に出したらこれが現れてね。他にも何か出るかと思って試してみたのだがどうやら私は忍者に関する物しか出せないようなのだ」
「いえ、それだけで凄いですよ!先生。先生に忍者の武器があったら鬼に金棒じゃないですか!」
「いやいや、それほどでもないよ。だが戦には使える能力だよね。最初はこの能力に驚いたがよく賢一くんが漫画や小説で異世界転移すると「チート能力」が身に着く話をしていたのを思い出してこのことかと妙に納得したよ」
そういえば中本先生には酒を一緒に飲みながら自分の好きなファンタジー小説の話をよくしていたっけ。
そのおかげで中本先生が現実を受け入れられたのなら俺のオタク趣味が役に立って良かったな。
だが本物の忍者の先生に忍者の武器が召喚できるならこれは最強のチート能力だ。
これなら俺のチート能力と中本先生のチート能力で十分戦える気がする。
四暗からの応援の兵士が来たら中本先生の戦の技術もその兵士たちに教えてみよう。
優秀な兵士は一人でも多く欲しいもんな。
よし!この戦、必ず勝ってみせるぜ!




