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波動~自衛官の俺が異世界の華天国を護るために戦った理由(わけ)~  作者: 脇田朝洋


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第29話 先生は異世界でも先生だった

 俺と琴音を乗せた馬はある集落に着いた。


 森に囲まれた集落で森の中に偽装するように建物があり、かなり近づくまで集落があるとは気付かなかった。

 闇族は戦闘に優れた種族らしいから、村も敵に見つからないように工夫しているのかもしれない。


「なあ、琴音。闇族の村ってみんなこんな感じなのか?」


「そうですね。闇族の都はそれなりに大きくて民を多いですけど、小さな村々はだいたいこんな感じですよ」


「建物が森に偽装するように建ってるがそれってやっぱり敵の襲撃とかに備えてなのか?」


「ええ。闇族は基本的に戦闘を生業にした者が多いですからね。お互いの身内同士で敵同士になることも珍しくありません」


 俺はその言葉に思わずギョッとした。


 身内同士でも敵同士になるだって?

 それじゃあ、家族でいても安心できないのか?

 それって悲しくないだろうか。


 俺は独身だが、自分が結婚して家族ができたら少なくとも家族のいる自宅ではくつろぎたい。

 自衛隊の他の家族持ちの隊員だってそう思うだろう。


 キツイ訓練の後でも待っていてくれる家族がいるから頑張れる。そんな話を先輩たちに聞いたことがある。


「自分の家族も信用できないなんて悲しくないかな」


 俺は思わずそう声に出していた。


「それが戦で戦う者の常識ですよ。どんな相手でも完全には信用しない。それができなければ「一流」にはなれません」


 当たり前のように琴音は答える。


 そう言えば俺の友人の米軍の特殊部隊の奴も同じことを言っていたな。

 どんなに信用しても95%までしか信用するなって。残り5%は疑えと。

 それが本当の戦の常識なのかもしれない。悲しいことだが…。


「さあ、賢一。降りてください」


「あ、ああ」


 俺はなんとか馬から降りる。

 琴音はふわりと身軽に馬を降りた。


 本当に琴音って「忍者」みたいに身軽だよな。

 琴音は華天国の女王直属の「乱波」って組織の人間だったらしいしやっぱり本物の「忍者」なのかもしれないな。

 正直、忍術習っている俺よりも本物の忍者だな。


 俺がそう思っていたところに声が聞こえた。


「藤枝くん!」


 俺は振り返る。


「中本先生!」


 そこにはこの世界の黒い服を着た中本先生が立っていた。

 中本先生と離れてそんなに日にちは経っていなかったが、俺は数年ぶりに再会した気分になった。


 良かった! 本当に無事だったんだ!


「中本先生!」


 俺は中本先生に抱きついた。


「先生! 無事で良かったです!」


「ああ、なんだか変な場所に来てしまったが藤枝くんも無事で良かったよ」


「はい! 俺もこの華天国の人たちに助けられていました!」


「そうかい。私も村の人からある程度この世界のことは聞いたよ。今はこの国が「戦争」をしていることもね」


 中本先生は真面目な顔になる。

 俺も中本先生から身体を離して先生の顔を見る。


「そうでしたか。実は俺が助けられたのはその戦争をしている前線部隊の部隊の人間だったんです。先生とは今後のことも含めてお話したいので俺を信じて俺について来てくれませんか?」


 俺は真剣な声で中本先生に話す。


 同じ日本から華天国に異世界転移してしまった先生とはこれから自分たちがどうするべきなのかをじっくり話し合いたい。

 日本に帰れる可能性も話したいしこの華天国が今ある現状も話したい。


「そうだね。藤枝くんとはいろいろ話さないとだね」


「はい。あ、あと俺はこの世界では「賢一」って呼ばれてるんで先生も「賢一」って呼んでください」


「分かったよ。では賢一くんと呼ぼう。ちなみに私はこの村では「先生」って呼ばれているよ」


 ん?なんでこの世界でも中本先生は「先生」って呼ばれてるんだ?


「なんでこの世界でも「先生」って呼ばれてるんですか?」


「ハハ、ちょっと村人に戦いや罠の技術を教えてあげたらみんなに「先生」って言われてしまってね」


 さすが中本先生だ。異世界でも戦いの技術を教えて「先生」と呼ばれるとは。

 俺は妙に納得してしまった。


「琴音さんが迎えに来るのが分かっていたから自分の荷物はまとめて置いた。だからすぐに出発はできるよ」


 荷物? 中本先生ってそんなに荷物なんか持ってたっけ?


 俺は異世界転移する前の飲み屋での中本先生の荷物を思い出してみたが、そんなに荷物は持っていなかったはずだ。


「先生。荷物ってなんですか?」


「ああ、着替えと他のはあとで見せるよ」


 中本先生はそう言って袋を持つ。


「えっと……先生って馬に乗れませんよね?」


 俺は琴音に乗せてもらって来たから帰りも琴音に乗せてもらえば済むが、さすがに一頭の馬に大人三人は乗れない。

 どうやって先生を連れて帰ろうかと思ったら、先生は一頭の馬を連れて来た。


「実は若い頃に乗馬クラブに通ってた時があってね。馬には乗れるんだよ」


「え? そうなんですか!?」


「ああ。この馬は村人が持って行っていいと言ってくれた馬でね。私が彼らに教えた戦闘技術のお礼だそうだ」


 さすが先生だな。乗馬もできるなんてすごい。


「じゃあ、とりあえず俺が生活している部隊に戻りますね」


「うん。あれ、今気付いたが賢一くんが着ているのは自衛隊の迷彩服だよね?」


「ええ、まあ。俺もこの世界に来ていろいろあったんですよ。先生」


「そうか……それも含めてあとで語ろう」


「はい!」


 俺と琴音と中本先生は第二部隊の野営地を目指して出発した。

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