第28話 中本先生を見つけたぜ
俺がテントの入り口を見るとそこには予想していた通りの人物がいる。
金髪に金の瞳の美少女、琴音だ。
「琴音!」
「ちわーす! 賢一、お待たせしやしたー!」
琴音は三河屋のさぶちゃんのごとく挨拶する。
「琴音、姿が見えないと思っていたがどこに行ってたんだ?」
「月治様、すいません。賢一からもう一人の異世界人探しを頼まれていたんで調査してたんです」
「もう一人の異世界人?ああ、以前賢一が言ってた人物か」
そうだ! 琴音には中本先生の安否を確認してもらえるように頼んであったんだよな。
中本先生が見つかったのか!?
「琴音、中本先生は見つかったのか!?」
「はい、闇族の村で生活しています。そこの村人に助けられたようで」
「そうか! 良かったあ! 中本先生が無事で!」
俺はずっと心配していた中本先生が無事だったことにホッとした。
まあ、中本先生は殺しても死なないような人物ではあるが…。
だがここは異世界だし何が起こるか分からんしな。
めっちゃ強い中本先生でも敵わない相手がいる可能性もある。
「それで中本先生は?」
「はい、とりあえずその中本先生という人物に賢一が探していることを話したら「お世話になった村人にお礼を言ってからこちらに来たい」と言ったので先に賢一に無事を報告しに帰って来ました」
お世話になった村人にお礼を言いたいなんて中本先生らしいよな。
「そうなのか。中本先生は自力でここまで来るのか?」
ここは戦場だ。
今は戦況が落ち着いているとはいえ中本先生に一人でここまで来いというのは危険だろう。
いくら中本先生でも多人数の兵士に襲われたら大変だ。
「いえ、これから馬でまた中本先生を迎えに行きます」
「それなら俺も連れて行ってくれ!」
「え?賢一をですか?」
中本先生が無事だと分かったら一刻も早く会いたい。
「それは別にかまわないですけど……賢一って馬に乗れますか?」
「うっ!」
そうか。この華天国では移動は基本的に馬になるのか。
騎馬部隊がいるぐらいだしな。
俺は馬には乗ったことないけどでも中本先生にはすぐにでも会いたい。
やはり自分の目で中本先生の無事を確かめたい。
「馬には乗れないが、走って行くにはその村は遠いのか?」
「そうですね。人が走って行ったら何日もかかるかもです」
戦場を何日も離れるわけにはいかない。
ここはおとなしく中本先生が琴音と来るのを待たないといけないのか。
「その中本先生ってのは賢一の大事な人なんだろ?」
それまで黙っていた月治がそう言った。
「ああ、中本先生がいたから俺はここまで強くなれたんだ」
「そうか。なら琴音、お前の馬に賢一を乗せて連れて行ってやれ」
「え?」
俺が琴音の馬に乗る?
そうか、その手があったか。
「分かりました。じゃあ、馬を用意します」
琴音はそう言ってテントの外に出て行く。
「月治、すぐに戻るから」
「ああ、気を付けて行って来い」
俺は自分の小銃を持って琴音の後を追った。
どんな時でも戦場では銃は手放せない。
琴音は身体の大きな馬を連れて来た。
馬って意外と大きいな。それにこれから華天国で戦をするなら馬ぐらい乗れないとだよな。
帰ったら乗馬の練習をしなくちゃだな。
その時に俺の脳裏には馬で戦場を走る「特殊部隊」を描いた映画のシーンが浮かんでいた。
あれは確か実際にあったエピソードを映画化したやつだったな。グリーンベレーの一個小隊がアフガンで現地の民族とコンタクトを取り、一緒に戦ったというやつだ。
クライマックスの馬に乗って攻撃するシーンは興奮させられたな。
まさか自分がそんな存在になるなんて思わなかったが……。
「じゃあ、馬に乗ってください」
俺は琴音に馬の乗り方を教わりながら馬上に登る。
琴音はヒラリと身軽に俺の前の部分に乗る。
「賢一、しっかり私の身体に捕まってください」
「え?ああ」
小銃を背中に背負い、俺は琴音の身体に腕を回して捕まる。
琴音の身体の柔らかい感触が俺の手に伝わってきた。
いやいや、今はそんなことを考えてる場合じゃないって。しっかりしろ、俺。
今は馬から落ちないように集中しないと。
「行きますよ」
「ああ」
俺と琴音を乗せた馬は勢いよく走り出した。




