第27話 手を出して殺されるってことないよな
「コツは分かったが結局は結婚相手は族長でもない限り一人なんだろ?」
「まあ、そうだけどね」
甲夜は飲み物を一口飲みながら答える。
「月治はこないだ付き合っている彼女はいないって言ってたが、昔は複数の彼女と付き合ったことはあるのか?」
「え?ああ、そうだな。成人したての頃は何人かと付き合ったが」
クソ! 月治までハーレム経験者かよ!
しかもこの国の成人って15歳だったよな。
15歳でハーレムとかありかよ!
俺はなんとなくこの国の恋愛事情が分かったような気がした。
華天国の女王からして「逆ハーレム」のこの国は複数の異性と付き合うのにそんなに抵抗がないのかもしれない。
まあ、それでも「逆ハーレム」や「ハーレム」は一部の者の特権には変わりはないが。
月治は望海や志乃舞といつも一緒だが彼女たちのことが気になったりしないのだろうか。
俺が毎日のようにあんな少女たちに囲まれてたら絶対に口説くと思うんだが。
それとも気になってるから側近にしたとか?
そこで俺は他の風花や春香や朱里が幹部クラスの扱いになっていることにも疑問に思う。
もちろん彼女たちの知識や技術などが他の者に劣っているとは思わないが、何もまだ10代の少女たちを幹部クラスにすることはないんじゃないだろうか。
兵士たちは若い者が多いとはいえもっと経験を積んだ年上の者がリーダーになってもいいだろう。
月治や甲夜は族長の息子って立場だから幹部になるのは分かるけど。
「なあ、月治。質問していいか?」
「なんだ?」
「この第二部隊ではお前の側近は甲夜と望海と志乃舞だろ?」
「ああ、そうだが。それが何か問題でも?」
「いや、それに風花は武器調達部隊の隊長だし、春香は糧食部隊の隊長だし、朱里は救急部隊の隊長だよな?」
「そうだな」
月治は俺が何を言おうとしてるのか分からないという表情だ。
「なんで重要な幹部クラスが10代の女性たちなんだ?他にももっと年配の経験豊富な人材はいるだろ?」
「まあ、確かにそうだが。彼女たちの知識や技術力は優れているし彼女たちは各族長の身内だから霊力も高い。同じ一族出身者からも一目置かれる存在だから隊長に任命したんだ」
「え?各族長の身内?」
「あれ?賢一にはまだ話してなかったっけ?」
「聞いてないぞ! 望海が月治のいとこだとは聞いたが」
あの少女たちが各族長の身内だって!?
「そうか。望海は私のいとこだから当然闇族の現族長の姪になる。志乃舞は現水族の族長のいとこだし朱里は現火族の族長の末娘。春香は現土族の族長の妹で風花は現風族の族長の姪だ」
「え?風花って大商人の娘なんだろ?」
「そうだが、母親は現風族の族長の姉だから風花は族長の姪さ」
マジであの五人の少女はそれぞれの族長の身内なのか。
それってもし彼女たちと結婚したら俺はどこかの部族の族長の身内になるってことか?
これって「逆玉」っていうのか?
いやいやその前に彼女たちを怒らせたりしたら各族長が黙っていないんじゃないか?
俺は月治の父親の四暗のことを思い出した。
目が合っただけで背筋がゾクリとしたあの男のような奴が他の部族長であってもおかしくはない。
そんな族長の身内に下手に手を出したら……俺って殺されるかも?
「あ、あのさ、月治」
「ん?どうした?」
「他の族長って四暗隊長のように怖い人か?」
「う~ん、怖いかどうかは知らんが族長になるくらいだからな。霊力は高いし知識力や剣技などの能力はずば抜けているだろうな」
ハハ……そうだよな。それぐらいの男じゃなきゃ族長なんて務まらないよな。
四暗にだって絶対勝てるか分からないぐらいの力を感じるのに、もし彼女たちの一人を選んだら選ばれなかった少女たちの族長が俺を殺しに来るとかってないよな……。
いや、落ち着け。彼女たちはみんないい娘じゃないか。
俺にフラれたからって復讐なんてしないに違いない。
俺は必死に自分に言い聞かせる。
女たちの復讐ほど怖いものはない。
「それで彼女たちの霊力や身分を考慮して幹部にしたのか?」
「ああ、そうだ。この第二部隊は六部族の兵士が混ざっているからな。彼女たちがいるおかげでつまらない諍いが起こらないで済んでいるんだ」
月治は当たり前のように話す。
そうか。月治も兵士をまとめるのに苦労してるんだな。
しかし参ったな。この戦が終わったら俺を巡って新しい「戦の始まり」なんてことになったら冗談じゃないんだが。
「あれ?でも光族の幹部は?」
俺は光族出身の幹部をまだ見たことがない。
「え?賢一は会ったはずだが?」
月治がキョトンとした表情になる。
「俺が会ったことある人間で光族の幹部なんていたっけ?」
俺には記憶がない。
「まあ、表舞台に立つ幹部じゃないからな。女王陛下の乱波の一人から今回第二部隊に配属された「琴音」って人物だ」
「あ!」
その時に金髪に金の瞳の琴音のことを俺は思い出した。
そうだ、琴音には中本先生の捜索をお願いしていたんだ。
確かに琴音も可愛かった……いやいや外見で判断するなよ、俺。
「確かに琴音には会ったよ。じゃあ、琴音はこの第二部隊の幹部なのか?」
「まあな。彼女は諜報活動を中心に動いてもらっている」
昼食と話が一段落した時にテントの入り口が開いた。
「ちわー!賢一、いますかー!」
この声は確か……。




