第25話 甲夜は複数の彼女持ちなのか
さすがに五人の少女に告白されたり、武器を召喚したり、甲夜たちに「波動」を教えて意識を失ったりした俺はその夜は爆睡だった。
朝、目覚めてから思わず自分自身に「ここは戦場なんだから油断するな」と喝を入れたぐらいだ。
そして朝食を食べた後に、第一部隊からの兵士がいつ来てもいいように兵士用の小銃を休み休み召喚していた。
「ふう……便利なチート能力だが、召喚に体力が必要なのは要注意だよな」
ようやく一個小隊くらいの小銃を揃えられた。
これから戦況がどうなるか分からないから、時間がある時には武器の準備は欠かせないな。
俺がそう思いながら一休みしていると月治と甲夜がやって来た。
いつもは望海や志乃舞も一緒のはずだが今日は別行動のようだ。
「賢一、何をやってるんだ?」
月治が俺に聞いてくる。
「ん?ああ、四暗隊長からの兵士が来たら装備させようと思って「銃」を準備してるんだ。一度に召喚できる数に限りがあってな」
俺のテントの周囲の箱に入れられた小銃を月治も甲夜も物珍しそうに見ている。
「そうか。武器の準備は大切だからな」
「月治たちはどうしてここに?」
「ああ、しばらくサザンドール軍にも動きがないようだからな。昼食を食べながら賢一の異世界の話でも聞こうかと思ってな」
月治の手にはパンや飲み物が入った袋がある。
そういえば月治に日本の話をしてやるって言ってたっけ。
葛城副隊長のことでスッカリ忘れてたが、俺がこの華天国のことを知りたいように月治や甲夜だって「異世界」の話は聞いてみたいだろう。
理解できるかどうかは別として。
それにお腹も空いてきたし三人で昼食を食べるか。
「じゃあ、俺のテントで食べようか」
「ああ、そうしよう。ちゃんと賢一の分も春香から貰って来た」
月治は俺の分まで昼食を持って来てくれたようだ。
俺は月治と甲夜を自分のテントの中に入れる。
小さいがテーブルがあるのでそこにパンや干し肉を焼いたモノや飲み物を用意した。
甲夜が飲み物を入れるカップを持参してくれていたので三つのカップに瓶から飲み物を注ぐ。
「これって酒か?月治」
見た目はワインのような飲み物だ。
俺はワインよりビールが好きなんだが、そんな贅沢は言えないよな。
「いや、これは酒ではない。酒の味に似ているがさすがに最前線で酒は飲めないからな」
へえ、月治は意外と真面目なんだな。
まあ、指揮官が酔っ払った時に敵襲なんてあったら大変か。
「兄上も俺もお酒には強いから多少飲んでも影響ないんだけど、兄上は部下が我慢してるのに自分たちだけが酒を飲むわけにはいかないっていつも言ってるんですよ」
甲夜は苦笑いして俺にカップを一つ渡す。
う~ん、この二人は兄弟だけど月治の方が真面目なタイプなのか?
俺は甲夜からカップを受け取った。
「では華天国の勝利を祈願して乾杯するか」
「ああ、そうだな」
俺たち三人はカップを手にする。
乾杯の習慣もこの世界にはあるんだな。一つ勉強になったぞ。
「華天国に勝利を!乾杯!」
『乾杯!』
月治の音頭で俺たちは乾杯をした。
飲んでみると確かにワインのようだがアルコールが入っている感じはしない。
でもただのブドウジュースでもない感じでちょっと不思議な味だ。
けれどうまい。
「賢一の国はどんな国なんだ?」
月治がカップの飲み物を飲みながら俺に聞いてくる。
「う~ん、領土的には島国かな。経済は発展していて俺の世界の国々の中でも金銭的な面では裕福な方だったよ」
俺はなるべく分かりやすいように説明する。
「へえ、経済が発展しているのはいいことだな。華天国もこの世界ではそれなりに経済は進んでる方だぞ」
「そうなのか?」
「ああ、華天国が建国されてから六部族の争いが無くなって他部族との商いが活発になったからな」
ふ~ん、この華天国もこの世界では裕福な方なのか。
そういえば四大国の一つって言ってたよな。
大国ってのは領土が広いだけじゃないだろうし。
「俺はもっと賢一の個人的なことが聞きたいな」
今度は甲夜が俺に話かけてくる。
「俺の個人的なこと?」
なんだろう? 自衛隊のことか?
「例えば付き合っている彼女は何人いるのかとか」
甲夜がニヤリと笑いながら質問する。
女の話かよ……。
そういえば月治には「彼女はいない」って話はしたけど甲夜にはしてなかったか。
ん?……でも甲夜の奴、彼女は「何人いるのか」って聞かなかったか?
そこで俺はこの華天国の各族長は複数の妻が持てるという話を思い出した。
甲夜は月治と同じ族長の息子だ。
もしかしたら将来甲夜が闇族の族長になる可能性もあるよな。
まさか甲夜はそれを見越して複数の彼女持ちなのか?
俺の中の疑念が膨らんだ。




