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波動~自衛官の俺が異世界の華天国を護るために戦った理由(わけ)~  作者: 脇田朝洋


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第22話 志乃舞の好きな強い男って誰だ

 テントに戻ってから俺は小便がしたくなった。

 前もって聞いていたが戦場で便所の問題は大きい。


 小便するならまだしも大便するとなるとその痕跡を戦場で残すとそれだけで敵にこの場所に人がいるとバレることになるからだ。

 だから通常は地面に穴を掘りきちんと埋めて対応する。


 ちなみに自衛隊ではこのことを『地雷埋設』とも言う。


 今回は小便だしここは野営地だ。

 ある意味ここに華天国軍がいることはある程度敵軍も把握している状態なのでそこまで神経質になる必要はない。


 それに事前に小便や大便がしたくなったらある場所の森の中を使うように指定されていた。

 俺はテントから出てその場所に向かう。

 もちろん銃はスリングで下げておくし、弾も装填しておく。なにしろここは「戦場」なのだから。


 そして指定された人気の少ない森の中で俺は小便をした。


 はあ~スッキリした。


 俺はそのまままたテントに戻ろうとして森の近くに人影を見つけた。


 ん?もしかして敵か!?


 一瞬、そう思って俺は小銃を手にして木の影に隠れて様子を見る。

 そいつを確認しようとしてよく見ると一人ではなく二人いるようだ。


 慎重に様子を伺うとそこにいた一人は志乃舞だった。

 

 だが志乃舞の他にもう一人いる。どうやらもう一人は男性のようだ。

 男性も志乃舞と同じ銀髪に青い瞳だから水族の男だろう。


 しかし男性の顔に見覚えはないので月治の側近のような幹部ではなさそうだ。


 もしかしてこんな場所で逢引きとかしてるのか?

 志乃舞は美人だから彼氏がいてもおかしくはないが。


 二人の声が聞こえてくる。


「どうしても俺の想いに応えていただけないんですか?」


「申し訳ないけどあなたとは付き合えないわ。私には好きな人がいるの。私は『強い男』が好きなのよ」


 男性の問いに志乃舞は凛とした声で答える。


 これってもしかして男が志乃舞に告白したのか?

 それを志乃舞が断っているところか?


「その強い男というのは月治様のことですか?」


 男の言葉に俺もドキリとする。


 この第二部隊で一番強い男と言ったら月治のことだろう。

 俺はまだこの部隊に来たばかりだし、志乃舞の好きな「強い男」が月治の可能性は高い。


 志乃舞は月治の側近でもあるしな。

 それになんだかんだ言っても月治はそれなりにイケメンだし。


「違うわ。でもそのことはあなたには関係ないでしょ?」


 迷いなく志乃舞は答えた。


 月治じゃないなら志乃舞の言う「強い男」って誰なんだ?

 まさか甲夜とか?

 甲夜の実力はまだよく分からんがあの月治の弟だし可能性はあるよな。


「まさか最近月治様の側にいる『賢一』って男じゃないですよね?」


 え? 俺!?


 男の言葉に俺は驚く。

 まさかそこで俺の名前が出るとは思わなかった。


「あなたには関係ないことよ」


「そんなことはありません。志乃舞様が本気で誰かを好きなら俺も諦めます。だから相手を教えてください」


 男は真剣な表情だ。


 まあ、気持ちは分かるよなあ。志乃舞は美人だし好きになるのも仕方ないし、志乃舞を諦める為にも自分が納得できる理由が欲しいよな、男としては。

 だけど俺ってことはないだろう。まだ志乃舞と知り合ってそんなに経ってないし。


 志乃舞は溜息をついた。


「……仕方ないわね。そうよ、私が好きなのは『賢一』よ! 悪いけど賢一はあなたよりも何倍も強いわよ」


 嘘だろ!? まさかの志乃舞の好きな男って俺かよ!?


「分かりました。賢一って人物がかなりの実力者だということは噂で聞いています。でも俺も鍛錬していつの日かもう一度志乃舞様に振り向いてもらえるように頑張ります」


 男はそう言うと志乃舞に頭を下げて行ってしまう。

 俺は木の影で焦っていた。


 今の志乃舞の言葉は本当だろうか。

 それともただ告白を断るための嘘とか?


 動揺が俺を襲い俺は足元の小枝を踏んでしまった。

 パキッと音がして志乃舞が俺の方を振り向いた。


「誰!?」


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