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波動~自衛官の俺が異世界の華天国を護るために戦った理由(わけ)~  作者: 脇田朝洋


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第15話 葛城副隊長の死は無駄にしない

 テントの中に入った時にあることに気がついた。

 装具もつけずに迷彩服のポケットに銃剣入れてるだけだということに。戦場でこんな半端な姿でいたのが恥ずかしい。


「完全武装しといた方がいいよな。それに召喚したら眠気がきたんだから眠れるよな」


 俺は試してみることにする。


「二個用弾嚢四つ出ろ!」


 するとポポポンと弾倉が入った弾嚢が四つ出てきた。

 俺はさらに続ける。


「弾帯、サスペンダー出ろ!」


 同じようにポポポンと弾帯とサスペンダーが出てくる。


 俺は早速弾帯にサスペンダーを付けて長さを調節し、弾嚢と銃剣を付ける。


 基本は二個用弾嚢二つに一個用弾嚢を二個付け、弾は合計180発だ。

 だが、一発でも多い方がいいし240発分にしておく。


 あとは水筒と携帯エンピ(シャベル)がつく。ここまでが通常の装備だ。


 できるならPX(売店)に売っていた拳銃用の弾嚢も欲しいが、出るかも分からないし眠気が襲ってきたのでここまでにしておく。


 オンライン小説によくあるようにレベルがこの世界にあるか分からないが、レベル上がれば召喚できるモノも増えるかな?


「ふう……立て続けに召喚すると疲れるな……」


 俺は枕元に装具一式を置いて横になる。小銃は同じように俺の左脇に置いておく。

 するとさっきまで目が冴えていたのが嘘のように眠りに落ちた。






 次の日の朝。

 俺が目を覚ますと朝食を食べようと志乃舞が誘いに来た。

 相変わらず見事な銀髪は俺の目を引く。


 銀髪って綺麗だよなあ。

 こういうのを見ると異世界に来たって実感するかも。


 装具を装着し、銃をスリングで下げると配食している場所へと向かった。


 兵士の中にも志乃舞と同じ水族出身者と思われる銀髪の人間はいる。だが他の種族と比べると人数は少なく見えた。

 朝食会場では春香が朝早いというのに元気よくパンを配っていた。


「おはよう!しっかり食べてね」


 春香の笑顔はなぜか癒される。


 何だろうな、この感じ。


 俺はそう思いながら春香からパンを受け取る。


「おはよう、賢一。朝は一日の基本だからね。しっかり食べて」


 春香は満面の笑みを浮かべる。

 その笑顔を見てるだけで心の何かが満たされる。


 そうか、ここは戦場だから暗くなりがちな兵士たちを元気づけるためにも笑顔なんだな。


 俺は春香のその健気な努力に脱帽する。


「賢一、朝食が終わったら葛城副隊長の葬儀をする」


 志乃舞は朝食のおかずを口にしながら俺に言葉をかけてきた。


「ああ、わかった」


 昨日月治が言っていたことを思い出す。

 そして朝食が終わると兵士たちに集合がかかる。


 見張り役を除いてはいるが勢揃いした兵士たちを見るのは初めてだ。

 見たところ4、5百人ぐらいはいそうだ。全員が整列している。


 この世界でこの人数で戦争をするのに多いのか少ないのか分からない。

 まあ、この部隊は華天国軍の本隊ではないそうだが。


 俺にはまだこの世界の知識が足りない。

 もっと情報を集めないといけないだろう。


「賢一はこちら側に並んでくれ」


 志乃舞に連れられ、兵士たちの列の右翼側に並ぶ。先頭が志乃舞たち指揮官クラスで俺はその後ろに並んだ。

 待機していると月治が姿を現した。


「賢一、ついて来てくれ」


 志乃舞に言われるままついて行くと、俺と望海や志乃舞は月治の横に立つ。スリングを外して『立て銃』して銃剣を着剣。「休め」の状態になる。葬儀だから最高礼で対応すべきだ。


 月治の前には葛城副隊長の遺体を入れた棺があった。


 棺もきちんと作った物というより木箱に近いものがある。

 ここは戦場だから本来なら人が死んだくらいではこんな葬儀はしないのだろう。


 だが葛城副隊長は軍の幹部だ。

 兵士の低くなった士気を高めるためにもきちんとした葬儀を行うようだ。


「これより葛城副隊長の葬儀をする!葛城副隊長は華天国のためにその命を捧げた!よって我々はその意志を継ぎ必ずこの戦に勝利をすることをここに誓う!!」


 すると兵士が剣を抜き自分の胸の前に縦に持つ。

 月治も剣を抜きその剣を高々と天に向かって突き出す。


「華天国に栄光を!」


『栄光を!』


 月治の後に兵士たちが声を上げ一斉に剣を天に突き上げる。

 志乃舞達も同じようにしているので、俺も89式小銃を突き上げた。


「栄光を!」


 俺も叫んだ。

 そして兵士たちは剣をまた胸の前で縦に持つ。これがこの国の敬礼なのだろう。

 俺は銃を降ろして『立て銃』をした後に『捧げ銃』をした。


 敬礼が終わると兵士たちが両側に分かれ、その間を葛城副隊長の棺を担いだ兵士たちと月治と俺と望海と志乃舞と甲夜が続く。


 そして予め掘ってあった穴に棺を入れて埋める。

 その作業を俺はずっと見ていた。


 葛城さん、あなたの死は無駄にしない。

 あなたの無念は俺が晴らす。


 俺はそう葛城副隊長に心の中で誓った。


 埋め終わると月治は植物の接ぎ木を一本そこに植えた。

 昨日月治が言っていたように葛城副隊長の魂はこの植物に宿ることになるのだろう。


 そして望海が花束を添える。

 それで葛城副隊長の葬儀は終わった。

 兵士たちは解散して持ち場に戻って行く。


 俺は月治達と月治のテントに戻った。

 そこへ兵士の一人がやって来る。


「月治隊長。四暗しあん族長様がお着きになりました」


「ここに通せ」


「は!」


 兵士が出ていくのを見て俺は月治に声をかける。


「俺も席を外そう」


「いや、父上は賢一に会いに来るんだ。ここに居てくれ」


「俺に?」


「異世界人を保護したことは父上に話してある。父上はお前に会いたいと言ってな」


 それなら俺はここにいるべきだろう。

 だが月治の父親ってどんな人間なんだろう?


「月治の父親ってどんな人間なんだ?」


 俺が月治に聞くと月治は意味深な顔をする。


「普段は穏やかな人間だが戦になると戦場の鬼になる。みんなには陰で『ほとけ鬼神おにがみ』って呼ばれているな」


 なんだ、その異名は。仏で鬼?

 あ、でもうちの中隊にもいたな。レンジャー助教もやっている先輩で、俺がレンジャー訓練に参加した時には散々しごかれた。


 普段は大人しいが、レンジャー助教になったときには人が変わったようにその先輩は鬼になった。


 きっとあんな感じなんだろうけど。なんか怖いな……。


 俺は月治の父親が来るのをおっかなびっくり待っていた。

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