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透明色  作者: 神木駿
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青春の色

次の日、早速体育祭の種目決めをすることになった。体力測定の結果を見ながらクラスのみんなに意見を聞いていくがあまり乗り気ではない。


特に長距離走なんて誰も出たがらないし何なら目も合わせようとしない。長距離走は三百メートルグラウンドを五周する競技だ。距離的にはそこまで多くないが、わざわざ体育祭でやるのは憂鬱だと考えている人が半数以上いる。


どんよりと暗い色で教室が覆われているからこっちも気分が落ち込んでくる。


「誰か出てくれる人いない?これ決まらないと終わらないから」


「そんなに言うなら水篠が出ればいいんじゃね?」


誰かがそう言った。その言葉を皮切りに数人が


「そうだよ水篠がやればいいじゃん」


「水篠が出るっていえばこれで終わりになるし」


と僕が長距離走に出るように言ってきた。僕が運動苦手なのを分かっていっているのが視えた。さすがに僕も持久走だけは公開処刑になるのが目に見えていたから出たくなかった。


だが僕の不用意な発言がこうなった原因だし何よりみんなの色が濁っていた。多分早く帰りたいのだろう。


「分かった、出るよ」


この場は僕が我慢すれば丸く収まる。少し考えてからそう答えた。


「よっしゃー終わりー帰ってもいい?」


座っていたみんなが次々と立ち上がり教室からでていく。


僕と彼女は二人教室に取り残された。


「水篠君運動苦手って言ってた気がするけど大丈夫?」


彼女はそう聞いてきた。


「あー、うん大丈夫」


僕はそう答えるしかなかった。いまさら何を言ったところで僕が出るのは変わらない。


体育祭まであと二週間か。ここで漫画やアニメの主人公なら二週間猛特訓して体育祭で優勝だ、なんて考えるのだろう。


あいにく僕はそんなキャラじゃないし、何より現実的に考えて二週間で体力をどうにかするのは無理がある。大変なことを引き受けてしまったといまさらながら思った。


「じゃあ帰ろうか」


僕と彼女は教室をあとにした。


体育祭当日、順調に協議が進みいよいよ次が長距離走だ。他のクラスは勝ちに来てるから陸上部のエースやサッカー部、野球部とかの運動部ばかりだ。みんなが次々とスタートラインに立つ。僕もスタートラインに行こうとしたとき


「水篠君頑張れー」


彼女の声がどこからか聞こえてきた。僕は少しだけ力をもらえた気がした。


「バアン」


ピストルの音がグラウンドに響いた。僕は何とか最初の二周はくらいついていたがスタミナ不足でどんどんと差が開いていく。


僕の後ろにはもう誰もいない。せめて一周差はつけられないようにと頑張った。けどさすがは運動部ラストスパートで三人ぐらいに追い越された。それでも


「水篠君頑張れー」


「葵、あと少しだぞ」


と聞こえてきたので何とか最後まで走り切ることが出来た。


ゴールに着いたとき


「お疲れ。運動苦手な葵にしてはよく頑張ったじゃん」


「水篠君お疲れ様」


「おつかれー水篠も男出したね」


僕は疲れすぎていて言葉を返すことが出来なかった。まあ僕にしては頑張った方じゃないかと自分でも思った。その後も競技が進んでいき、無事何事もなく体育祭は終わった。


クラスのみんなは結果に興味はなくそのまま解散した。実行委員はこの後の片づけがあるので少し休憩してからまた集まることになった。


「水篠君今日はお疲れ様」


「星月さんこそ応援ありがと」


「私ができるの応援ぐらいだったから」


「力もらえたよ」


僕が笑顔でそう言うと彼女もうれしそうに笑った。


「実行委員はグラウンドに集合してください。片づけを開始します」


と放送が流れた。


「じゃあ行こうか」


僕と彼女はグラウンドに向かった。

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