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透明色  作者: 神木駿
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放課後の色

その日から数日後、体育祭の委員を決めることになった。だが僕はそういうのに興味が無かったので誰かがやるだろうと思ってぼーっとしてた。


そうしたら誰もいなかったので部活に入っていない人の中から選ぶことになってしまい、男子の中で部活に入っていないのは僕を含めて三人しかいなかったのでじゃんけんで決めることになった。


僕はじゃんけんのような運勝負はものすごく弱い。何かを決めるじゃんけんで勝てたためしがないのだ。


「じゃんけん、ポン」


案の定僕が一人負けした。


「よし、じゃあ男子は水篠な」


先生が淡々と話を進めていく。女子の方はやりたい人が何人かいるみたいだった。女子も話し合いでは決まらずじゃんけんで決めることになった。こっちのじゃんけんは負け抜けの方式で男子とは逆だった。


「じゃんけん、ポン」


「あーあ負けちゃった」


「やったあ、勝った」


勝ったのは彼女だった。


「おお、女子は星月か。確か去年もやってたな今年も頼むぞ」


「はい。頑張ります!」


「水篠はわかんないことあったら星月に教えてもらえよ」


「はーい」


僕は気だるそうに返事をしたが彼女のことが少しわかるかもしれないとポジティブに考えることにした。


放課後


「水篠君体育館まで一緒に行こうよ」

と誘われたので僕と彼女は一緒に体育館へ向かった。


「渚~」

後ろから元気な声が飛んできた。


「渚も実行委員会になれたんだね。よかった」


「桃もなれたんだね。こっちはやりたい子が多くてじゃんけんになっちゃってできないかと思ったよ」


「えっ、そうだったんだ、こっちは私一人しかいなかったよ」


僕が二人の会話に入れずにいたら


「あっ水篠君ごめんねはしゃいじゃって。この子は小桜桃、私の小学校からの友達なの」


「どーも初めまして桃だよ。よろしく」


この前廊下であったはっきり視える子だった。僕は覚えていたが向こうは覚えてなかったようだ。


「水篠葵です。よろしく」


「かたいなーもっとラフにいこうよー」


僕は愛想笑いを返した。まさかこの子が彼女と友達だったなんて思ってもいなかった。しかも小学校からの。


「あ、桃、早く行かないと時間遅れちゃうよ」


「ほんとだ。行こう!」


彼女たちが走って行ったので僕も体育館へと急いで行った。


体育館に着くとほとんどのクラスが集まっていた。時間はギリギリだったがまだ過ぎていないのでセーフだった。


「じゃあまたね」


と言い小桜さんは自分の場所に行った。小桜さんは何組なのか目で追っていたらそこに見覚えのある顔があった。秋人だ。今年も実行委員になったみたいだ。秋人と小桜さんは同じクラスだったのにも驚いた。そこだけ面白いぐらいはっきりと視えていて少し笑ってしまった。


実行委員の役割はそこまで多くないみたいだった。出る種目の割り振りや体育祭前日の準備などの簡単なものばかりだった。これぐらいなら僕でもできる。


集まりが終わり秋人が僕に気付いた。


「葵がこんなのやるなんて珍しいじゃん。どうしたん?」


「部活入ってない人がやることになってじゃんけんで負けた」


「あはは、葵じゃんけん弱いもんな」


「やること少なくて良かったよ」


「ん?ああやること自体は少ないけど結構大変だよ。クラスの種目決めとか全然決まんなくて何回もやることになったりして結局全部丸投げにされて放課後つぶれるとか」


「それに前日の設営は力仕事で普段運動してないお前にはきついかもな」


「えっ」


僕は思わず声を出してしまった。さっき話していた内容を聞く限り大変そうではなかったが経験者からそう聞かされると憂鬱な気分になった。


「大丈夫大丈夫、俺もいるから頑張ろうぜ」


嫌な顔をしたのがばれたようだ。実際そんなめんどくさいことはしたくなかった。その時小桜さんが来た。


「渚、委員会も終わったことだしちょっと寄り道して帰ろうよ」


「うんいいよ。あ、水篠君たちも一緒にどう?」


「僕は別にいいけど」


「お、俺も葵が行くなら」


「よし、じゃあ決まり早速行こう」


小桜さんが前を歩き、僕たちはその後ろをついて行った。


僕たちは駅の中にあるカフェに来た。僕はカフェに来るのが初めてだったので少しドキドキしていた。コーヒーや紅茶は飲めなくはないが苦手だったので僕はオレンジジュースにした。


「あれ?水篠君コーヒーじゃないの?」


僕と同じオレンジジュースを手に持った彼女が聞いてきた。


「うん、コーヒーとかはちょっと苦手で。そういう星月さんもオレンジジュースなんだね」


「あはは、実は私もコーヒーとか飲めなくて」


彼女は僕の中で上品なイメージがあったから意外だった。案外子供っぽいところもあるのだなと少し微笑んだ。


「お待たせ~」


コーヒーの上に甘そうなホイップクリームを乗せた二人が戻ってきた。


「二人で何の話してたの?」


「私も水篠君もコーヒー苦くて飲めないよねーって話してたの」


「うっそマジで?水篠もコーヒー飲めないの?こんなにおいしいのにもったいないねー秋人」


「ああそうだな。このコーヒーの苦さと甘―いホイップクリームの組み合わせが楽しめないなんてかわいそうに」


僕と彼女は愛想笑いを返した。そういえば秋人は女子が苦手なはずなのに小桜さんとは普通に話せている。色も男子と話すときと変わらない。


そんなことを思っていたら


「そういえば今更だけど秋人と水篠君は知り合いだったんだね」


「おう、葵とは家が近所で小学校からの友達なんだ。そっちこそ星月さんと仲良さげだな」


「うん、だって私と渚は親友だもん」


「そうなの、中学校で席が隣になったのがきっかけで仲良くなったんだ」


「へえーこんな偶然あるんだな、親友同士が同じクラスでしかも実行委員なんて」


「そうだね偶然が重なりすぎてちょっと怖いよ」


小一時間話して店の外に出た時小桜さんが


「そうだ。今更だけど水篠君連絡先交換しようよ」


と言ってきた。僕は彼女に連絡先を聞いてなかったことを思い出し


「ああそうだね。そういえば星月さんのもまだ聞いてなかった、連絡先教えてもらっていい?」


と聞くと彼女は


「うん、いいよ」


と首を縦に振った。


「え?二人はまだ交換してなかったの」


「学校でしゃべってるからすっかり忘れてたの」


「僕も今気づいた」


「マジか」


みんなで笑った。ちょうど電車が来たのでそれに乗った。


「じゃあまた明日学校で」


そういって僕たちは一足先に降りた。


少し歩いてから僕は


「なあ秋人、なんで小桜さんとは普通に話せるんだ?」


「ん?ああなんか桃だけはなんか大丈夫なんだよな、なんでか分からないけど」


「へー、そうなんだ。よかったじゃん、普通に話せる女子友達ができて」


この仮説は僕じゃなくても思いつくだろうが、こいつは小桜さんのことを異性として認識してない可能性があると思った。でもそう言ったら意識して普通に話せなくなりそうだから言わなかった。せっかくできた異性の友達をなくしちゃかわいそうだ。


「じゃまたな」


「おう」


いつもの分かれ道で僕たちは分かれた。


僕は友達はいるが、どこかに遊びに行ったりするほど仲の良い友達は秋人以外にいなかったから新鮮でとても楽しかった。


『今度は僕から誘ってみようかな』


そんなことを考えながら玄関のドアを開けた。

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