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透明色  作者: 神木駿
12/18

秋の色

慌ただしかった夏休みも終わり今日から二学期が始まった。九月だと言うの夏の暑さが尾を引き学校でも長袖を着ているのは誰もいなかった。教室に入ると彼女が


「おはよ葵君。宿題は終わった?」


と声をかけてきた。僕は彼女の方を向いて


「おはよう。宿題はみんなと遊びに行くときにはもう終わらせてたよ」


と返した。


「えっ?!そんなに早く終わらせてたの?」


彼女は驚いた。


「うん、みんなで旅行とか楽しみで寝れない日があったからその時に」


「私は逆にみんなと遊ぶからって宿題後回しにしちゃって昨日慌てて桃と一緒におわらせたの」


彼女は笑いながらそう言った。


「へぇ、意外だな。桃さんはともかく渚さんはきっちり終わらせてるもんだと思ってた」


僕は彼女の意外な一面を見た気がしてなんだか妙にほっとした。色が視えてないというのが一番の原因だがなんとなく彼女は周りの子たちとは違う空気をまとっているような気がしてた。でもこういうことを聞くと人間らしいところもあるんだなと思ってしまった。


「おーしホームルーム始めるぞー。席付けー」


先生が扉を開けて入ってきた。彼女はまたねと言って自分の席に戻った。


「今日から新学期だけどそろそろ進路とか考えないといけない時期だからあんまり気抜くなよ」


先生が新学期早々憂鬱な話をした。教室内ではめんどくさそうにしている人が大半だった。僕もそのうちに一人だ。進路のことなんて考えたこともない。将来の夢や自分のやりたいこと、小さいころはやりたいこともあった気がするが今は何もなかった。


今はまだみんなと楽しく過ごしたいただそれだけだった。


 今日は始業式とホームルームだけで授業は無かったから早く帰れた。


「葵、昼飯どっかで食っていこうぜ」


秋人が廊下で待ち伏せしてた。


「いいけどどこで食べるの?」


僕は聞き返した。


「駅前に新しくできたファミレスでいいんじゃね」


「あぁ、あそこかいいよ」


僕はそう言った。


[なんか違和感があるな?特に変わったところは…]


と思ったがすぐに気づいた。


「そういえば桃さんはどうしたの?」


「え?なんで桃が出てくるんだ」


「だって秋人と桃さんって学校だとセットになってる気がしたから」


「セットって。さすがにずっと一緒にいるわけじゃないよ。今日はあいつは別の友達と飯行くんだって」


「そっか。それで寂しくて僕のところに来たのか」


「そんなわけないだろ。どっちかって言うと寂しいのはお前の方だろ」


僕たちはお互いをからかって遊んでいた。そのとき教室から出る彼女の姿が見えたので


「渚さん。今からお昼食べに行くんだけど一緒にどう?」


と彼女を誘ってみた。でも彼女は少しの間の後


「ごめんね。今日はどうしても外せない用があるの。また今度でもいいかな」


と申し訳なさそうに言った。それなら仕方ないと僕は


「うん。じゃあまたね」


と手を振り彼女を見送った。その後秋人が


「俺たちもいくか」


と言って僕たちはお店へと向かった。


お店に入ると開口一番秋人はこう言った。


「俺、桃のこと好きかもしれない」


「ぶはっ」


僕は突然の告白に驚いて飲んでいたジュースをこぼしてしまった。


「おいおい大丈夫かよ」


「あぁごめんごめん大丈夫」


僕はテーブルにあった布巾で零したジュースを拭いた。


「それで…えーっと桃さんのこと好きかもってマジ?」


「あぁたぶん」


「なんでそう思ったの?」


「前は友達みたいな感じだったけど一緒に海とか旅館とかいったらすげぇ楽しくてさ、なんて言うか誰にも渡したくないみたいな感じに思ったんだ。これって好きってことだよな」


秋人から恋の相談を受けるなんて思いもしなかった。確かに秋人から視えているのは恋の色で間違いなかった。まさかこんなにも早く自覚するとは


「それでこれからどうしようかなって告白して今の関係が崩れるのは嫌だからどうしようかなって」


「多分大丈夫だと思うけど…」


僕は秋人に聞こえないぐらいの声でそう言った。続けて


「じゃあさ今度は二人きりで遊びに誘ってみれば?遊園地とか」


と提案した。


「遊園地か。確かにそれは良さそうだな」


秋人の顔が一気に明るくなった。


「遊園地なら話す内容は尽きないと思うし何より二人の性格ならすごく楽しめそうだと思うよ」


「ありがとう葵。早速誘ってみる」


秋人が携帯を取り出し、メッセージを送ろうとしたので僕は


「待て待て焦るな」


と秋人を止めた。


「なんで止めるんだよ。こういうのは早い方がいいだろ」


「そもそも遊園地のチケットとか取ってないでしょ。それになんて言って誘う気だったの?」


と僕は聞いた。


「あぁ確かに、何にも考えてなかった」


秋人は少しだけ冷静になった。そこから本格的な作戦会議が始まった。これからの天気を見て晴れの日を選び、遊園地は小桜さんが好きそうなアトラクションがある所を選び、チケットは何かの懸賞で当たったことにして気を遣わせないようにした。


僕はこの二人が両想いになっていることを知っているが万が一が無いように綿密な計画を立てた。


「よしじゃあ送るぞ」


秋人が小桜さんにメッセージを送るとすぐに


「いく!」


と返事が来た。とりあえずここまでくればもう大丈夫だろう。安心していたら秋人が


「なあ葵、当日ついてきてくれないか?」


ととんでもない提案をしてきた。


「はぁ?二人っきりで遊びに誘ったんじゃないの?なんで僕も行くんだよ。二人で楽しんできなよ」


「いやぁやっぱちょっと不安だからさ。遠くから見てるだけでもいいから」


「やだよ。男一人で遊園地って、それに僕が人込み苦手なの知ってるだろ」


「そんなこと言わずに頼むよー」


手を合わせてお願いしてきた。


「この恩は絶対返すから頼む」


こんなに必死に頼まれたら仕方がない。


「分かったよ。貸しにしとくからね」


「ありがとう、葵」


秋人が見せる色がますます明るくなった。まあ二人が幸せならいいかと思い作戦会議を終わりにした。


家に帰って携帯を見てみると小桜さんからメッセージが来ていた。


[ねえねえ秋人から遊園地に誘われたんだけど!しかも二人でだって!どうしよ嬉しすぎる!]


僕が秋人と作戦会議をしたことは内緒にしておいた方がいいと思い、知らなかった体でメッセージを返した。


[良かったじゃん!二人でいっぱい楽しんできてね]


[うん!ありがとう。楽しんでくるね!]


これでやっと二人がくっつく。あの二人ならお似合いだ。秋人の女子恐怖症は治ってないかもだけど小桜さんなら心配はいらないだろう。これで肩の荷が少し下りたような気がした。

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