第九十八話 クソガキ少年団
遊具エリアへと来た俺と鮫島。
基本児童用なのか水深はとても浅い。
「んで、なんの遊具で遊びたかったんだ?」
「子供扱いは止めてください。ただ邪魔されたくなかっただけです」
「邪魔? どんな邪魔が入るってんだよ。土屋と近藤ならその心配はないだろうよ」
お互いの時に邪魔が入らなかったら邪魔しようなんて発想にはならないだろうよ。
「玲奈は貴方と夏帆が一緒にいるときに見に行こうとしましたからね」
「なんでだよ。俺が土屋に何かするとでも思ったのか?」
「物陰に連れ込んでエッチなことする気かもしれないと言ってましたね」
「人目がつかない物陰なんてないだろうが」
それこそ、バックヤードか立ち入り禁止区域に入らなければないだろう。
「そういう邪魔が入らないとも限らないので」
「さいで。邪魔を排除して何する気?」
「くねくねしないでください気持ち悪い」
鮫島は辺りを警戒するようにきょろきょろした。
いるのは夏休みで遊びに来た親子連ればかり。少し奥には地元の高校生らしき人たちもいるが遊びに夢中で気が付いていない。
「あ、暑いですね」
「ん? ああ、まあ。少しな」
暑いと言っても屋内で気温は一定、太陽光が少し暑いかな程度。
ただまあ、それは海パン一丁の男の感想であり、ラッシュガードに短パン姿の鮫島からすれば暑いだろう。
「なら水に入るか? 足だけでも浸かれば違うと思うが」
「い、いえ……脱いで解決します」
そういうと鮫島はラッシュガードのチャックを下した。
出てきたのは豊満な胸とそれを包む白いビキニ。太陽下では眩しいくらいの真っ白な水着。
「お、おお」
「あんまりジロジロ見ないで……ください」
「ならなぜ俺の前だけ脱いだ」
近藤は半袖を着ていたが土屋は下にスカートを身に着けているだけで上は着ていなかったはず。
女子が多くいる場で脱いで、男子がいる場では着るならまだ分かる。
だが、その逆の心理というのは全く理解できない。
「別に。暑かっただけですし」
「そうかよ」
珍しく真っ赤に頬を染める鮫島にどう反応したらいいのか分からなくなる。
「可愛いじゃん」
「変じゃないですか? ちゃんと似合っていますか?」
「似合ってると思うけど?」
俺がそう答えると顔を赤くしていた鮫島の表情はホッとしたような顔になった。
「そうですか。良かったです」
さっきまで「疑っている」だの「許していない」と言っていたのに、この変わりよう。
乙女心は秋の空なんてよく言うが、秋の空でももうちょい予兆はあるだろうに。
「きゃあ!」
俺が考えていると鮫島が小さな悲鳴をあげて俺の方へと倒れ込んできた。
水深が浅いこの場で倒れれば確実にケガをする。
倒れないように支えるとふよんとした感触が俺の胸に潰れた。
そして倒れた原因達が俺と鮫島に可愛らしい敵意を向ける。
「リア充だ! ころせ!」「生きて帰れると思うなよ!」「六大地獄を味合わせてやる!」
年齢に合わない言葉を言いながら水鉄砲を向けるのは小学校低学年くらいの少年集団。
リア充に親でも殺されたのかというくらいには敵意が強い。
「急に冷水をかけるなよ」
「リア充を見つけたら溶岩ぶっかけろって兄ちゃんが言ってた!」
「おれ姉貴!」「おれも!」
純粋な子どもたちにどんな教育してやがる。
「よく聞けお前ら、俺とこのお姉ちゃんは恋人同士じゃないんだ。ぶふっ!」
「嘘ついてんじゃねーよ!」「バレてんだよ!」「恋人にしか見えないんだよ!」
「鮫島からも言ってやってくれ」
「子供は苦手です」
「殴らなきゃいいから」
「言葉で鬱にすることも出来るんですよ? 耐性がない彼らを殴ったら病んでしまいます」
「手加減は」
「出来るなら貴方を盾にはしていません」
かたやリア充撲滅少年達、かたや少年達を再起不能にしか出来ない女子高校生。
両者ともに攻撃的すぎる。
まだ少年団の武器が水鉄砲なのが優しいところ。
「撃て!」
一人の号令により俺と鮫島はあっという間にずぶ濡れに。
お返しにと手のひら全体で水を弾けばリア充撲滅団もずぶ濡れに。
「おわっ!」「こいつ反撃した来たぞ!」「まず目だ! 目を潰せ!」
「敵が自身より強敵ならばまず五感を奪う。強敵と戦うときの鉄則だ。だが、こっちも相手が目を狙ってくると分かっているなら対策は出来る」
「三対一だぞ! 確実に仕留めてから女だ!」
「賊かお前ら」
異世界で主人公からヒロインを奪おうとする奴らと台詞がまんま。
そのあと異世界特典であるスキルや能力を持った主人公にボコボコにされてヒロインの好感度が上がるまでがセット。
小学生をボコボコにしたところで鮫島からの好感度は上がらないだろう。
バシャバシャと水をかき分けながら少年団の射線を切っていく。
普段運動してない故の体力の無さと水場という足場の悪さで俺はすぐにへばった。
「くらえー!」
三方向から水をかけられ俺は水に伏した。
「次は女だ!」
「ちょっ、やめなさい。やめてください!」
水鉄砲からの放水によりラッシュガードが肌に張り付く。
さらに水が滴りいい感じにエロい。
元が美形なだけありグラビア撮影ですか? と聞きたくなるような光景。
「「「「おお」」」」
これには俺も少年団も感嘆の声をこぼしてしまう。
「兄貴姉貴に言ってやれ、そんな野蛮な考えだから恋人が出来ないんだとな」
「言った!」「殴られた!」「痛かった!」
「冒険家だな。将来有望だ」
過激派少年団は俺が思うよりクソガキだったな。
兄貴姉貴の気持ちも分からなくはない。
妹の桃に「そんなんだから恋人出来ないんだよ~」と言われたら容赦なく拳が飛ぶ。
絶対腹立つもん。
「将来、兄貴姉貴と同じになりたくなかったら、無暗な攻撃はやめることだな。むしろ仲良くすればこうやって俺みたいになれるかもな?」
「他には!」「なにが必要?」「教えろ!」
そんなの決まっている。
「勉強」
俺がそう言うと過激派少年団は真顔で水鉄砲を構え引き金を引いた。
さてはまだ夏休みの宿題終わってないな?




