第九十七話 どのみち警察呼ばれそう
俺と土屋が飲食スペースに行くとクリームたっぷりのカフェモカのような飲み物を手にした近藤がいた。
「よお! 鷹山も飲む?」
「見てるだけで吐きそう」
「彼は甘いものがそこまで好きではないですから」
「もったいな!」
クリームだけでもカロリーは計り知れないのにそのうえタピオカまで入ってやがる。
ダイエットとかボディラインが気になる年頃だろうになぜカロリーの暴力に抗わないのか不思議で仕方ない。
「近藤さん? 生クリームのカロリー知ってますか?」
「んー二〇〇くらいじゃない?」
「いえ、百グラム四〇〇以上はあったはずです。炭水化物から出来るタピオカも入っているのでこれ一つでラーメンくらいのカロリーはあるはずです」
「……つちやん飲む?」
カロリーを聞いた近藤は琥珀色のお目目をぱちぱち。
カロリーの配分を開始。
「身体があったまっているので今甘いものはちょっと……」
「冷えてるからゼロカロリーだもん。これから運動すればいいんだもん!」
「水泳三〇分でおよそ二〇〇キロカロリーです。二時間泳げば生クリーム分は消費されますので頑張ってください」
「泳ぐぞつちやん!」
半袖にパッド入りビキニという、どう考えても泳ぐ服装ではないが、夏休みで人も多いしライフセーバーも泳ぐようのプールだけでも三人はいる。
近藤が土屋の手首を掴んで流れるプールへと向かっていった。
ぶくぶくに太ってしまえ。少しでも瘦せようとする気概を見せろよ。
「なにする? ……鮫島さん? なにその変質者を見る目は。俺なにもしてないよ?」
「温水プールは原則泳ぐことを禁止しています。ナニしてたんですか?」
「鮫島が想像することはなにも。ただ話してただけだ」
「適切な距離で?」
「密着だったのは認める」
鮫島の眉間にしわが寄っていく。
「貴方は夏帆に対して甘すぎです。玲奈には辛辣なほど鋭いのに」
「過去に友達と遊べなかったと情に訴えられると弱くてな」
「それで? どんな話を?」
これは都合がいい。
相談させてもらおう。
「鮫島と過去に付き合っていたのは俺じゃないかと疑われた。なんとか誤魔化したけど」
「言ってしまってもいいと思いますよ?」
「それじゃ俺が悪になるだろうがまだ疑いを晴らせるだけの物がない」
「本当に疑いを晴らせる証拠があるんですか?」
「ああ。あるとも。鮫島が頑として聞かなかった証拠がな」
嫌味っぽく言えば眉間にしわに加え目まで細くなっていく。
「嘘が得意と自称し、現に嘘で問題を解決し、嘘による実績のある人間を信じろと言われても私はそこまで純粋ではありません」
「うわード正論。でもそんな詐欺師まがいの人間の言い訳を待ち望んでいるわけだろ?」
「私がいつそんなことを?」
「高校の三年間は勉強に注力するんだろ? つまり俺の言い訳を待ち望んでいるわけだ」
「論理性に欠けますね」
「でも俺の訳を聞く気はあるわけだろ?」
でなければ、わざわざ「高校の三年間は勉強に注力する」なんてこと、俺に言わないはずだ。
「まあ、そうですね」
「よし、がんばろ」
といっても従姉の居場所が分からない以上、どうすることも出来ないのだが。
「話が大分逸れたな。今から三十分間は鮫島の時間なわけだがなにかするか?」
「……あっちに行きましょう」
そういって鮫島は席から立ち上がり歩き出した。
行き先は遊具などが置いてある完全遊びのエリア。
なにかしら意図があるのか、わざわざ子どもが集まりやすい場所へ。
「そんなに童心に返りたいのかよ」
「もし仮にそうだと言ったらどうしますか?」
「全力であやす」
「気持ち悪い」
「おい」
人の行為を馬鹿にしてくれちゃって。
今度は俺が赤ちゃん言葉使ってやろうか。
同級生女子に赤ちゃん言葉使って赤ちゃんプレイとか高度すぎて、どのみち警察呼ばれそう。




