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第九十五話 腕に引っかかったヌルヌルの物体

「あの二人残して平気か?」

「なに心配してんのさ。平気でしょいつもの二人なら」


 いつもの二人だから心配なんだけど。

 なんの前触れもなく煽り合いになるからな。それも高度な。


「あの二人って結構な頻度で険悪になるだろ?」

「確かに? でも喧嘩中みたいな雰囲気出してた方が他の男から声はかけられないと思うけどね」

「そうか? 初対面の女子に声をかける奴なら喧嘩中でも声かけてくるだろ」


 むしろ喧嘩中ならこれ幸いと声をかけて来そう。

 声かけてベッドインするところまでが目的なわけだし、実質孤立している状態なら尚更声をかけやすい。


「じゃあ聞くけど、鮫ちゃんとつちやんが喧嘩してたら鷹山、間に入れる?」

「無理」


 俺は即答した。

 間に入れたとしても喧嘩が激化しそうな時くらい。


「ほら、下心があんまりない鷹山でそれなら、他の人は無理だよ。現に長谷川未来と鮫ちゃんが喧嘩してた時だって嘉川は入ってこれなかったし」

「なるほどな。喧嘩してるからこそってことか」

「それよりさ! 今はわたしと一緒なんだから他の女の話しないで?」

「俺そういう重い女嫌いなんだよ」

「スライダーの列に並んでる時にそういうこと言うとか鬼かよ。空気死ぬじゃん」


 実際にそこまで関係が進展したことないから分からないけども。


「でもでも、どうよ。悩殺水着の感想は!」

「可愛いんじゃないか?」


 胸のサイズに違和感はあるけど。

 少しでも可愛く見せるために半袖の裾を身体の横で結びそれによりへそがチラ見え。

 元のキュートさも相まって可愛らしいという言葉が適切か。


「そうやってすぐ褒めてズルいと思う」

「パッドを仕込んでいるのは意味わからんけど」

「そうやってすぐ貶してズルいと思う」

「事実だろうが」

「水着だよ? ボディラインが見えるってのに素の大きさで勝負なんて出来るか! 貧乳女子への精神的暴行以外の何物でもない!」

「分かったから叫ぶな」


 俺への視線が痛いから。


「それでスライダーとか自殺行為だろ」

「平気だよ。最近のは進化してて水用のパッドとかあるんだよ? シリコン製で肌にくっつくからずれにく……あれ、目から汗が……」

「悪かった。俺が悪かったから泣かないで」

「泣いてねぇじ」


 ボディラインに悩む恋活女子を介護しながらスライダーへ。


「脚に挟まれたい? それとも脚で挟みたい?」

「どっちでもいいからはよ乗れや」


 どちらかというと挟まれたいけども。

 近藤が前に座り係員の「いってらっしゃい」の声で二人乗りのボートが押された。


「めっちゃ早ーい! ね! 鷹山!」

「そうだな」

「えー?」


 どうせ聞こえないだろうが。

 暗かったスライダー内が明るくなったと思ったら変に重力がかかった。

 というのも、出口付近の不安定な水流によりボートがひっくり返ったのだ。


「ごほっ! げほっ! 近藤? 平気か?」

「うげぇ。水飲んだ」


 プールサイドでげーげー言う近藤の傍に行こうとすると腕に不気味な感触があった。

 思わず腕を上げて不快感から離れようとした。それが間違いだった。


「ん? なにこれ」


 腕に引っかかったのはヌルヌルとしたスライムを固めたようなナニカ。

 無色透明で蝶を肥大化させたかのような形。

 そしてなぜだか温かい。


「いやーすごいクラッシュで……」


 振り向いた近藤は自分の服の襟を広げてなにかを確認していた。

 そして若干涙目になりながらばしゃばしゃと俺の方へ。

 そして腕に引っかかったヌルヌルの物体を回収していった。


「返せ! わたしのおっぱい! わたしの温もりでナニする気だ!」

「なにもする気はないが!? 外れにくいんじゃなかったのかよ!」

「水圧で外れたんだい! 直して来るから先戻ってて!」


 半そでを着ていたはずなのにそれをすり抜けて外れるとかどんな体勢で水に飛び込んだんだよ。

 ……温かかったなぁ。


 腕に残る感触を感じながら、待っている鮫島と土屋の元へと向かった。


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