第九十四話 美少女ズの水着
八月初旬。
空は晴天で屋内レジャー施設なのに水着でいると肌が焼かれる感覚がある。
「やあやあ! お待たせ! 美少女ズの水着だよ!」
近藤の声がして視線をあげると水着姿の三人が。
近藤は黄色と水色ハーフのビキニタイプの水着。
近藤の胸なんて生で見たことないが明らかにサイズがおかしい。
そのサイズ感を隠すためにオフショルダーの半袖を着ている。
「なに鷹山ったら、わたしのおっぱい凝視して……」
「パッd……」
「んー? なに? 女子の胸にパッドが入ってるわけじゃん。もーえっちなんだからー」
「ソウデスネ」
殺意から逃れるべく隣の土屋へと視線を移した。
フリルがついたトップに下はロングスカートのような水着。
泳ぐつもりがないのかとても泳ぎずらそう。
そしてなにより上辺清楚の土屋にとても似合っている。
「なんか清楚って感じ。偽らなくていいのに」
「あら? それじゃまるで私が清楚じゃないみたいじゃないですか」
「清楚悪魔」
「はい?」
「ナンデモナイヨ」
特別間違ったことは言ってないが。
最後に鮫島彩音。
おそらくビキニだろうが、色や形は分からない。
なぜなら普通に服を着ているからである。
白いラッシュガードで上を完全防備。その裾からはジーパン生地の短パンも見える。
「ジロジロ見てなんですか?」
「水着は?」
「鮫ちゃんたら恥ずかしいからって折角買った水着見せないんだよ?」
「泳ぐ用の服ではないですし、溺れる原因になりますよ?」
「それでも! 下着同然の水着をどうしてそこまで大胆に晒せるのか常々疑問に思うんです!」
「硬いニャー。おっぱいは柔らかいのに」
この状況で胸を揉める近藤が凄い。
あ、拳が頭に。
ま、理屈的には分からなくもないけど。
「いったい!」
「流石に語彙力危なかったからいいよ。別に」
「貴方に見せるために着たんじゃないですから」
「ちなみにマイクロビキニだぜ?」
「なんだって?」
それは聞き捨てならない。
堅物鉄面皮の鮫島がマイクロビキニを着れば二度見必至。
童貞達は前屈みになり、カップルは破局の原因になるだろう。
「本当にそうだと思いますか?」
「「いいえ。思いません」」
頭に物理的痛みを負った俺達は首を横に振った。
「泳げる人手上げて!」
上がったのは二つだけ。
俺と鮫島。
「天才二人かー」
「鮫島さんは水泳の授業で断トツでしたからね」
「小学校の時にやっていただけです」
「俺も」
四泳法出来たらかっこよくね? という浅はかな理由でやり始めた水泳。
当時は純粋だった。
今じゃ絶対集中出来ないけど。
「でもあの超長いスライダーには乗りたい!」
「乗ってくれば?」
「一人じゃつまんない! それに係員から「こんな美少女を放っておくなんて!」って思われちゃう」
「「この子一人で遊びに来て可哀そう」の間違いだろ」
「なら鷹山さんが私達一人ずつ乗るというのはどうでしょう。それなら問題ないと思いますよ?」
「女子同士で乗るのそんなに嫌なの?」
百合百合してていいと思うのはあくまで男視点の話か。
「いやーつちやんの胸が触れたら切り裂き衝動がさ」
「聞かなかったことにする。俺的に損はないしいいぞ」
「切り裂き衝動」
「聞かなかったことにするって言ってんだろうが」
近藤はパッドで盛ってそのサイズだもんね? 土屋は天然物だろうし劣等感感じるのは理解出来るよ。
それでなんで切り裂こうっていうのかは分からないけど。
係員さん達からは堂々と浮気するという最低な印象になりそうだけど。
女子三人と乗れるなら他人の印象なんて気にして居られない。
「それなら玲奈が最初に滑ってくればいいんじゃないですか? 彼と一緒に」
「棘が痛い」
「それじゃ行こうか鷹山!」
「二人で平気か?」
「平気ですよ。いざとなれば更衣室に逃げますから」
それでも心配である。
親子連れも見えるが大学生らしき集団もちらほら。
テレビで度々紹介されるほどの規模を誇るサニーランドだ。
ナンパ目当ての人がいてもおかしくはないだろう。
「貴方に心配されるほど弱くはありませんよ」
「そっか。念のため気を付けてくれ」
俺がナンパする側だったらこの二人には一度だけでも声をかける。
ただ俺が心配しているのはナンパだけではない。
「……」
「……」
この二人は傍からみたら喧嘩中の如く仲が悪いのだ。




