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第八十一話 とりあえずの休息

「そうですか。無事解決できましたか」

「はい」


 藤堂の件が一応片付いたことを雨宮先生へと報告しに職員室へ。

 勿論、藤堂の名前は伏せたまま、起こったことが解決したと先生へと伝えた。


「楽勝でしたわ!」

「では近藤さんには他にもいくつか人絡みの問題を……」

「やってやろうぜ鷹山!」

「丸投げする気満々だな。一人でやってどうぞ」


 解決出来てやっと心置きなく勉強が出来るんだ。

 これ以上問題解決している時間はない。


「無事解決できたならいいです。流石です」

「やったな鷹山」

「今回のは近藤の一言が刺さったんだと思いますよ。俺はあの時動けなかったので」


「二人の功績だと先生は思います。どちらが凄いとかありません」


 俺の性格を知ってか知らずかやっぱり先生には勝てないと悟った瞬間である。


「ですが、今度から先生に内緒はなしでお願いしますね! もし不慮の事故などがあった場合、事情が分からないと庇いきれないので!」

「分かってます」


 今回は偶々運が良かっただけ。運よく近藤の言葉が刺さったから解決できたというだけの話。

 毎回同じような行くなんてことは、人を相手にしている限りない。


「失礼しました」と職員室を後にして教室に戻れば鮫島の様子がおかしい。

 ソワソワとして俺の顔をなんでもチラチラ。

 まるでトイレを我慢しているかのよう。

 なんか卑猥。


「鮫島、怒るなよ」

「私が怒るような内容ということですか?」


 放課後で周りに他生徒がいないことを確認して俺は言葉に出した。


「約一週間前――」


 そこから俺達の動きをその時の状況も踏まえながら鮫島に伝えた。


「そうですか。無事解決出来たなら私から言うことは特にないです」

「鮫ちゃん。顔膨れてるよ」

「別に! 内緒にされたことを怒っているとか、勝手な行動に対して怒っているとかではないですよ」

「怒るなよって始めに言っただろうが。藤堂の件が片付く前に長谷川と鮫島の喧嘩を仲裁できる気がしなかったからだ」


 だから行動しても遅い、事後報告にしたのだ。

 絶対に色んな方面に怒るって分かってたから。


「それでも! 頼られたいって思うのは自然じゃないですか! 貴方の方が人絡みなら円満解決でいいかもしれませんが、見落としが多いのが貴方です。だから私にも情報が欲しかったんです!」

「鮫島さんって時々幼児になりますよね」

「可愛いー」


 そんな和んでないでこの幼児を治めて欲しい。


「悪かったって。次こそは相談するから」

「嘘ですね」

「嘘じゃないってこれホント」

「貴方がそういう時は大抵嘘なんですよ」


 見破られてるー。鮫島は効率を考えるのは上手いが人の意思を尊重するのは下手だ。

 俺は逆に効率を考えるのが苦手だし、適材適所ってことでどうか。


「まああまあ。円満解決したし、わたし達が争っても仕方ないじゃん?」

「私の時も貴方に情報は渡しませんから」

「お好きに」


 鮫島のやり方で解決というのも見てみたいしな。

 ま、大団円とはならなさそうだけど。


 長谷川をチラッと横目で見ると楽しくなさそうに爪をいじいじ。

 大人しくしているなら結構、ただ一度でも藤堂への接触があった場合は気持ちを尊重していられないかもしれない。

 問題が起きなきゃ動けないってとても不便。

 ま、先生へのチクりは未だこちらにあるし、それがある限り長谷川は下手に動けないだろう。

 動けないであれ。


「それよりも! 夏休みの予定決めようよ!」


 近藤はなにも考えてなさそう。

 ま、夏休みに予定がなかったら家業の手伝いするんだろうな。

 だからこんなにも必死なわけだ。


「夏期講習あるのでパスですね」

「俺も」

「え、それって夏休み中ずっと? 空いてる時間ない?」

「基本的にはずっとじゃないですか?」

「なにかしら予定立てないと家の手伝いで夏休みが潰れる! 女子高生の夏は三回しかないのに!」


 必死過ぎて絶望の谷に蹴落としたくなる。

 夏期講習は基本的に夏休みが始まった七月中旬から八月下旬にかけて行われる。

 つまり、夏期講習に参加するなら夏休みに遊ぶのは諦めた方がいい。


「そんな! 友達より勉強を取るっていうのか!」

「もう申し込みは始まってるし俺はもう申し込んだぞ」


 といっても短期の方だけど。


「私は短期の方を申し込みました。貴方は?」

「俺も短期」

「真似しました?」

「馬鹿言え、情報交換する暇もなかっただろうが」

「まさかっ! 私の部屋に盗聴器を!」

「発想が豊かなのはいいことだと思うよ」


 未だ疑いが晴れない俺と疑ってかかる鮫島の間には火花が散っていた。

 これ以上謂れのない疑いをかけられるのはごめんだ。


「その短期ってどのくらい?」

「一週間だ。そこで詰め込むつもり」

「なら八月からは暇ということになりますね」

「じゃあパジャマパーティーしよ!」


 仲良し三人でパジャマパーティー。いいんじゃないでしょうか。

 俺は想像するだけでお腹いっぱいです。


「鷹山も来なよ。ネグリジェとかジェラピケ着てやるよ」

「ネグリジェなんてものは私持っていません」

「楽しそうですね。鷹山さんが望むならもっと露出が激しいものでもいいんですよ?」

「腹冷やすからちゃんと着ろ」


 来いと言うなら行ってやろうじゃないの。

 後悔するのはお前らだぞ。薄着になるということはそれだけボディラインがハッキリするということだ。

 俺が得するだけで近藤達に得はないぞ。


「でしたら、民泊に泊まってみませんか?」

「民泊? なにそれ」

「人様の家に泊まるのと同じだ。多少の仕事はあるが、店番だとか小麦粉運びより断然楽なはずだ」

「その案貰った!」

「言い出すということは充てがあるんですね?」

「はい。昔から懇意にさせて貰っている民泊があります。ただ夏休みという繁忙期なので取れるかどうか……今日問い合わせてみますね?」


 夏休みの予定が決まりつつある。

 近藤が絶対なにか言い出すと思って短期の方にしておいて良かった。

 美少女たちと遊べると思って短期にした俺ってば超単純。その単純さのおかげで夏休みに予定が出来るかもしれないのだが。


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