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第六話 嘘です。終始バッチリ聞いてました

グループディスカッションが終わって昼食。

 ディスカッションによって出来た仲間と食べるのが一般的だと思う。

 ただ俺は一人自分の席とは離れた場所で登校途中に買った菓子パンをもさもさと食べていた。

 理由は簡単、あの華やかな女子軍団に溶け込めなかったからである。


「鮫ちゃんのお弁当可愛い~。誰が作ったの?」

「両親は普段家にいないので自分で」

「料理も出来るなんて凄いですね。栄養バランスも素晴らしいですし流石です」

「わたしなんて毎日パンばっかだよ。しかも失敗作か昨日の残り物」

「誰かパンを作るということですか?」

「うん。わたしの実家、パン屋だし」


 それはそれで羨ましい限りだ。

 自分で用意しなくても昼食があるというのだから。

 ま、それが十年単位で続いたらうんざりするんだろうけど。


「あ、今度パンパーティーしようよ。家にある残り物を消費して欲しい」

「それが本音ですか。甘いパンはありますか?」


 あんな堅物そうな鮫島も中身はちゃんと女の子。

 甘い物には目がないようだ。


「いいですね。それなら勉強会も一緒にしませんか?」

「えー」


 発案者の近藤の声はすごく嫌そう。


「折角鮫島さんが参加してくださるんですから、いい勉強方法や苦手克服しましょう?」

「勉強は先月までみっちりだったしいいよー。折角高校入ったんだから遊ぼうよー」

「遊んでばかりじゃ成績が落ちます。それに、無理に勉強しても頭には入りません」


 鮫島のド正論に一気に空気が悪くなる。

 いい意味でも悪い意味でも自分に正直な鮫島彩音。中学でもろくに友達もおらず、気さくに話かけられるのは俺含め数人だけだった。


「で、でもさ? 男からしてみれば自分より頭のいい女とか願い下げじゃないの?」


 近藤よ。それを全国一位に言うのは煽りだ。

 暗に「お前はモテない」と言ってしまっている。


「馬鹿な女を演じるのと本当に馬鹿な女とでは大きな違いが出ます。本当に馬鹿な女を望む男なんてこっちから願い下げです」

「そうですね。私達は華のある女子高生ですから。安売りするには早すぎると思います」

「でも~……そうだ! 鷹山も呼ぼう! 全国二位の実力者だし頭が多いに越したことないでしょ」


 近藤の発言に全員がこちらを向いた。

 なぜそこで俺の名前が出てくるのか。勉強会なら勉強をするし、遊ぶなら俺は遊ぶぞ。

 つまり、勉強会色の強い今回は俺は勉強をする。


「今の話聞いてた?」

「ん? あんまり」


 嘘です。終始バッチリ聞いてました。


「勉強会来ない? てか来て?」

「なぜ彼を誘うのですか? 私では実力不足だと?」

「違うよ! 逆だよ逆! 全国一位の勉強方法についていける気がしないの! 鮫島高校だって本当にギリギリだったしあれこれ切り捨てて入ったんだから!」


 近藤の言わんとすることは分かる。

 そしてその考えは大正解。

 後々分かることだが、鮫島の勉強法はまるで当てにならない。


「だから生ぬるそうな鷹山を連れて行くの!」


 おもっくそしばいたろか?


「……そうですか。彼は二年の模試から急に上がって来たので、そこそこ勉強が出来ない人の気持ちが分かるとおもいます。玲奈がそういうのであれば連れていく価値はあるんじゃないですか? わたしからすれば存在する価値すらないと思いますけど」


 鮫島から刺さる視線の痛さ。

 サボテンを抱きしめているかのようなチクチクとした痛みが全身を襲う。


「まあまあ、わたし的に鷹山は必要だと思うから連れていく! 会場はわたしの家ね!」


 この時期から勉強のことを考えるとかなんて模範的な生徒でしょうか。

 勉強しかしない鮫島と、恋に一直線の近藤はまだいい。

 一番目的が知れない土屋が俺的には一番怖い。


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