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第五十二話 仲直りの仲裁

「桃。女子が仲直りする瞬間っていつ?」


 深夜アニメを見ながらスマホをいじる桃に俺は聞いた。


「え、誰かと喧嘩したの?」

「俺は……蚊帳の外というか部外者だけど中心人物的な立ち位置」

「なにそれ」

「俺と誰かじゃなくて、女子同士」


 鮫島は俺に対してはそこまで怒ってはいなかった。

 おそらくそれは、俺は利用されただけと解釈したから。元凶を土屋と考え土屋とは普通には喋らないだろう。


「共通の敵を作るくらいじゃない? それ以外での仲直りなんてないね。男は時間がどうにかしてくれるけど女は無理」

「素直に胸の内晒すんじゃダメなのか?」

「はぁ? 喧嘩してる相手と話すわけないじゃん。これだからお兄は。話せば分かり合えると思ってる」

「話し合わないから相手のことが不明なままなんだ」

「女子はお兄ほど単細胞じゃないの」


 中二病細胞に浸食されつくした桃にだけは言われたくない。

 




 次の日、教室に行くといつもの教室があった。談笑する声が所々から聞こえてだけどうるさくはないという心地のよい空間。

 だがその空間にも歪はある。

 普段なら楽しそうに談笑する女子三人が気まずそうに自席に座り各々やりたいことをやっていた。

 鮫島は相変わらず参考書に目を落とし土屋は俯きがちに本を読み、近藤はほっぺを机にくっつけてスマホをいじいじ。


 その間に行くってかなり勇気のいる行動。

 しかも絶賛喧嘩真っ最中の二人に挟まれるほど居心地が悪いことはない。

 

「あの……」「鷹山さん」


 俺が席につくと美少女二人から声をかけられるという朝から嬉しいことが。

 しかしかたや泣きそうな顔をして、かたや不機嫌そうに眉間にしわが寄っている。

 嬉しさ激減。


「二人に聞く、それは俺に用があるのか? それともお互いに用があるのか?」


 俺がそういうと二人は少し躊躇い鮫島からは睨まれ、土屋からは懇願するような目を向けられた。

 鮫島が即答しないということは少なくとも鮫島は土屋に用があるようだ。

 それなら俺を仲介せずに二人で話し合った方が早い。

 バックを置いて視線を開けると二人は見つめ合ったまま声を出さない。


「近藤」

「んえ?」

「融けてやがる」

「だって暇なんだもん! タイムライン警備じゃ飽きるしさ!」


 とけた近藤は怒りのパワーで固形へと取り戻した。

 そのまま手招きすれば嬉々としてこちらにやってきた。


「なになに!?」

「二人を仲直りさせてくれ」


 俺がそう言うと近藤の瞳から光が消えた。


「それが出来たら苦労しないんだよ」

「土屋、鮫島は俺との戦いを邪魔されたから怒ったそうだ」

「なっ!? ちょっと!」


 平等性を取るなら鮫島がなぜ怒ったのか全て吐き出した方が早い。

 そもそも土屋はもう考えから行動の結果まで全て話している。これ以上土屋になにを語れというのだ。


「ギスギスしてる二人に挟まれる俺の身にもなれ」

「模試ってこの前の一回しかないの?」

「いんや、一年生でも五回くらいはあったはずだ」

「ふ、ふーん」


 近藤め、聞くだけ聞いて声には出さないでやがる。

 きっと「え、ならそんな怒らなくてもよくね?」って思っただろう。だが相手が鮫島だから言葉を飲んだと。


「友達だろ。はっきり言った方がいいぞ」

「その言葉で全て思い通りにいくなら人生ヌルゲーすぎんだよ!」


 あ、怒った。


「模試を受けられなかった立場から言わせてもらうと、気にしていないってのが一番だ」


 あくまで普段の勉強が順調かどうかの確認だし。


「鮫島さん」


 それまでだんまりだった土屋が震えた声で口に出した。

 喧嘩しなれていないのが丸わかり。そもそもの問題、喧嘩する相手がいなかったと言うべきか。

 喧嘩しなれていない相手に鮫島との喧嘩はちょっとばかし荷が重すぎるだろうが、これを超えられれば口論や無言の圧には強くなれる。確実に。


「この度は鷹山さんとの勝負を邪魔してしまい申し訳ありません。まさか鮫島さんが危険視している相手との勝負を楽しみにしているとは思いませんでした」

「危険視? 俺を?」

「それ以上その話を広げたら許しません」


 超気になる。

 が、爪という物理的な痛みを伴う武器をチラつかせられたら黙るしかない。


「楽しみにしているから邪魔するなと言ってくだされば時間なりをずらしましたのに」

「だから、別に楽しみにしていたわけではありません。か、彼以外にもライバルとなる人物はいますし別に彼がいなくても私の勉強には全く一切影響ありませんので」

「これを聞いて本心だと思う?」

「鮫ちゃん嘘下手すぎじゃない? 鷹山を見習った方がいいよ」


 俺に隠れながら言うなや。

 ま、鮫島の睨みは物体を貫通するからな。見てないはずなのに見られている気がして落ち着かないのはあるあるだ。


「これで仲直りということで、いがみ合うのは止めてくれ。やるなら俺のいないところかネット上でやってくれ。それと鮫島、いつまでも意地になってると八月の模試で俺に負けるぞ?」

「は? 私が? 負ける? 貴方に? 笑わせないでください。夏期講習後で情報散らかしたままの貴方に負けるわけがないでしょう?」

「そいつはどうかな。情報の出し入れのどちらかしか出来ないシングルタスクさんよ」


 鮫島のヘイトを向けることの簡単さと言ったらない。

 土屋と鮫島共通の敵にはなれそうにないが、鮫島のライバルとして主張することなら出来る。


「じゃあまた今日から一緒にお昼食べようねー!」


 更に近藤が二人の間に入ればそこはもう平和の一言。

 百合百合したものが見れて俺も幸せです。 


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