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第四十一話 「俺、この場にいていいの?」

女子三人に引っ張られ町へと繰り出したわけだが、俺はこの場にいていいのだろうか。


「俺、この場にいていいの?」


 出かけるといっても男子がいない方が動きやすいだろう。

 というよりは男子一人でハーレム状態の俺に視線が刺さるから今すぐ帰りたい。


「帰りたいならどうぞ。それとも土にかえりたいですか?」

「ダメですよ。四人で動くことに意味があるんですから」

「その意味とは」

「おうおう。女子に囲まれて満足だろうがよ! それともわたしらじゃ足りないってか?」


 前を歩いていた近藤が後ろに歩きながら俺にジト目を向ける。

 こけるぞ。


「そうは言ってないけど」


 贅沢なのは承知しているが、それでも居心地が悪いのは確か。

 俺だって女子と普通に話せる、というか頑張って普通に話せるように繕っている状況なわけで、緊張はする。


「ならいいじゃん。鷹山も女子に囲まれて心の中で鼻の下伸ばして「えへへーおんにゃのこいっぱいだぁ」とか考えてるくせに」

「変態……」

「ひでぇ誤解だ。これでも緊張してんだよ」


 陰キャがバレないように頑張ってんのに変態と罵られるのは納得がいかない。

 鼻の下伸ばしているというのは半分うきうきしてる部分もあるから否定しない。


「俺達はどこに向かっているんでしょうか」

「親睦の意味も含めて服を見てみませんか?」

「疑問文ではあるが、俺に拒否権はあるんですか」

「あるわけないだろうが! そもそもこーんな可愛い女の子の私服を見た挙句生着替えが見れるっていうのに拒否するとか、さてはおめぇ男じゃねぇな?」

「試着室のカーテンはしっかりとお閉めください」


 急にストリップ始める女とか普通に嫌だ。


「俺、別に服とか詳しくないんだけど」

「そうですか? カッコイイと思いますよ?」

「中二病の妹としっかり者の母親のチョイス」


 実際自分で選んだのは靴くらいだ。しかも値段と履き心地を両立した結果こうなっただけだし。

 服装に関してもこだわりはなく洗濯した服から引っ張りだしているだけ。

 今回に限っては土屋両親との顔合わせが予定としてあったからカッコつけただけ。


「折角なら三人でお揃いにしたいよね」


 近藤が似合うのは可愛い系だろう。そして土屋に似合うのは大人っぽいものだろう。

 鮫島に至っては可愛い系が逆に似合わない部類だろう。

 まあ、カッコイイ服を着こなすという意味では全員似合うんじゃないか?


 近藤の背伸び感は否めないけど。


「それなら私はこういう方がいいです」

「えーカッコよすぎでしょ。もっと可愛いのがいい」


 前で近藤と鮫島が自分のスマホで服を見ているその後ろを俺と土屋は文字通り一歩下がって見ていた。


「なんであの二人を招集した」

「深い意味はありませんよ」

「信用できねぇ」


 さっきまで自分と相手の足を結束バンドで拘束していた女である。

 

「ただ鷹山さんからの信頼が勝ち取れなかった場合、学校生活を大して楽しめないと思うので今のうちに楽しんでおこうという簡単な理由です」

「簡単だが闇が深い……あの二人にはなんて?」


 模試が近いというのに鮫島が休日を返上して来たんだ、それなりの理由を言ったはずだ。


「いえ、ただお出かけしませんかとだけ」

「本当にそれだけか? 鮫島が大人しく来るとは思わないけどな」

「さぁ。鮫島さんがなにか察したのかもしれませんね。けど私からはなにもお話していません」


 鮫島の場合普通にあり得そうだ。

 もしかしたら俺達がなにをしようとしているのかも感づいている可能性すらある。


「私がなにか?」

「模試勉強はいいのか?」

「はい。午前中みっちりやりましたし、明日もやりますので。貴方こそ、夏帆と随分と仲がいいようですが」

「これでも勉強時間を削るまでには至ってない」

「あら、もっと頑張った方がいいですか?」

「時間を削らない方向で頑張ってくれ」


 実際高校に入ったばかりで部活動もアルバイトもしていない男の時間なんて有り余ってるわけだし。

 その時間を俺は非行や社会貢献に使うのではなく勉強に使っているだけだし。


 鮫島は俺と土屋のやりとりをした後、睨むでもなく真顔で視線を戻した。


 そんなこんなで到着した柳駅前。

 俺の家から電車で二〇分ほど揺られる必要があるからなかなかこれない場所。

 その雑居ビルに服屋はある。


「鷹山さん」

「ん?」

「今から私たちが三人同じ服を着るので似合うかどうか感想を貰えますか?」

「外で待つのは」

「許されません」


 全国模試二位の実力ではあるが、女子の容姿を褒めるための語彙は勉強不足なんだ。

 だからそんな楽しそうに服を選びにいかないでほしい。


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