第四十話 一番許せないもの
予約投稿の時間を間違えたの四年執筆してて初めてかもしれない。
毎晩チェックしてるのにこの体たらく……だから底辺なんやろなぁ。
なんかね、10月8日に第四十話と四十一話が投稿されるようになってまして、慌てて朝起きて投稿しました。
「なんのつもりだ」
「もう少しお話しませんか?」
「解いてからでもいいだろ。別に逃げたりしないって」
「ならこのままで。好感度によっては鷹山さんが私を捨ててゆっくり話す機会がなくなってしまうかもしれませんし」
「捨てるって言い方よ」
しかし……土屋を見下ろすのも絶景だったが見下ろされるのも悪くない。
嗜虐的な目はともかくとして、俺の腰辺りに加わる重力は間違いなく土屋のお尻であり脇腹を締め付けるのは太ももなわけだ。
さっきまで俺の顔の横には手があり、そうなると重力に負けた胸が中学時代のジャージを下へと押し下げる。
猛者でなくともご飯五杯はいけるほどの絶景だった。
「お話しましょう?」
「おい。待て。なぜジャージを脱ぐ」
「熱くなってしまって。お見苦しいものをお見せします」
そういってジャージのジッパーが下りていき苦しそうだった胸が完全に開放される。
赤色ジャージの下はこれまた中学時代の半袖ジャージだろう。
伸びる生地故に胸の形がこれでもかと強調される。
思わず唾を飲んでしまった。
「目が釘付けですね」
「そんなことないし」
「それでも目線を動かさないのはなぜですか?」
「男として逸らしたら失礼かなと」
変態と汚名を着せられてもこの光景を網膜に焼き付けなければと脳が命令してくるからね。仕方ないね。
「鷹山さんが一番許せないことってなんですか?」
「随分と急な質問だな。そうだな……友達を傷つけられることかな」
「例えば」
「巻き込み事故は勿論、言われない悪口を言われるのは普通に腹立つ」
「ご自身に対しての悪口などは許せるんですか?」
「基本な。死ねゴミクズまでなら許容できる」
そこまで行ったらあとは実力行使しかないと思っているけど。
お返しにと俺も聞いた。
「土屋は」
「私は……嘘をつかれることです」
「俺とは絶望的に相性が悪い気がします」
身動きがまともに取れない状態だからか敬語になってしまった。
暗に「お前、嫌い」と言われている。
「私が言う嘘は保身のため、人を陥れるための嘘です」
「なら平気だと思う。多分」
「鷹山さんは嘘つかれるのは嫌いですか?」
「別に」
「大きな嘘でも?」
「大きな嘘を経験したことがないが多分許せると思う。もっとも、俺以外に損害がないならだけど」
そこがまず大前提。
俺が傷つけられても対して痛みは感じないのに誰かが傷ついているとそれだけで気持ちが落ち込むというものだ。
嘘を使うなら使われても文句は言えない。
命に関わること以外なら土屋の嘘は許せてしまうと思う。
「優しいんですね。なら私がついた嘘も許してください」
「どんな嘘だ」
その時だ、廊下からドタバタという足音が聞こえ部屋のふすまが勢いよく開いた。
「恋愛警察だー!」
元気よく飛びこんで来たのは金髪の髪を持ち、好奇心のままに瞳を輝かせる我らが恋愛番長。
近藤玲奈だった。
その後から眉間にしわを寄せた鮫島も姿を現した。
「私の嘘。今日が体育祭の練習だということです」
「んじゃ本当は?」
「皆さんでどこか出かけませんか? 模試勉強に逃げられないように丁度いい口実が出来たので使わせていただきました」
「鮫島もか?」
「そうですけどなにか?」
「怒ってる?」
「怒ってませんよ?」
その笑顔は怒ってる時にする笑顔ですよ。
「どうですか? 許してくれますか?」
中学生ジャージ(半袖)のままおねだりしてくるのは反則だ。
犯罪臭が凄いと共に怒る気にもなれない。もとよりそんな気はないが。
「可愛い嘘じゃあないの。誰も不幸になってないなら許すもなにもないな」
俺の腰の上で土屋が嬉しそうに顔をほころばせて笑った。
「いい雰囲気をぶち壊すようですいませんが、夏帆の服装と体勢の説明、結束バンドの説明をしてもらってもいいですか?」
「うわぁ。二人とも進んでる~。もしかして事後? 事前なら一時間後……三時間後に出直す」
「余計な気遣いと誤解を広めるな」
後ろのがり勉少女はその辺純粋だから。
情報の取捨選択がこういう時に苦手になるんだから。
顔合わせの件を除いた全ての状況を説明してなんとか殺意だけは収めて貰った。
「なぜ彼を押し倒してるんですか? 夏帆」
名指しということは俺の説明とは別の説明を求めているな?
俺の説明はちょいちょい不都合そうなことは隠しているから大正解な行動だけども。
「友人と仲良くしようと親睦を深めていただけです」
「もっと健全な深め方をしてください」
「物理的な密着が不健全だと?」
始まってしまった。
「誤解を与えかねないということです」
「このメンバーしかいませんしいいじゃないですか」
動けない俺の胸に柔らかいメロンが潰れた。
なんと心地いい感触だろうか。
薄い生地の体育ジャージだからより肌の感触が近いように思える。
「なに鼻の下伸ばしてるんです?」
「やらし~」
「タコ殴りやめて。そういうなら足の拘束といてくれ。下手に動けないんだ」
近藤が拘束を解こうとしている間に煽り合いは続く。
「なぜ彼女でもない鮫島さんがそこまでムキになるんでしょうか」
「ムキになどなっていません、ただ他から見た時にいかがわしく見えるという客観の話をしているのです」
「私はそんな外でベタベタすることもありませんし、家の中でしかしませんよ」
「そういう問題ではありません。その中のことが外に少しでも出たらアウトなんですよ」
「私と鷹山さんの情事が外に漏れ出たところで鮫島さんに不利益はないのでは?」
「友人である私にも被害が及びかねません」
「それが本心ですか?」
「勿論です」
「本当ですか?」
鮫島の顔も見たいが危なげにハサミを握る近藤から目が離せない。
同じ百均で売っているハサミじゃ結束バンドって切りづらいよね。ニッパーが欲しくなるよね。分かる。
俺が近藤を見ている間に煽り合いの方が決着がついたようだ。
「鷹山さんと離れてしまうのは名残惜しいです。この男らしい筋肉質な肉体。私は好きですよ」
「食べてもおいしくないぞ」
「それはどうでしょう」
「いいから夏帆は早く着替えてください。そして貴方はさっさと出て行って」
どういう勝敗の付け方をしたのか知らないが俺を睨まないで欲しい。
土屋の柔らかさを堪能してしまった分罪悪感が凄いから。




